【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第十八章

648 今が一番幸せ

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( レオン )

「 全く~! 」


そのまま何故かプンプンと怒りだしたリーフ様は、その謎の布を本の間に挟み込む。

そしてそのままソファー周りを中心に、なんとか座れる程に片付けた。


「 ??? 」


とりあえず怒っている時は、そっとしておくべき。

それはレガーノにいた時、ピンクの髪の煩いやつがよく絡みにくる際、リーフ様に教えてもらった事だ。


"   マリオンはちょっと色々考え過ぎて、パニックになりやすいみたいなんだ。

だから怒っている時は、話を聞いてあげてそっとしておこうね。 "


だから俺は黙ってその場で立って待ち、リーフ様が座ろうとする気配があったら動く。

そうしていつも通り、リーフ様が座る前に自分が座ってその上に乗ってもらうと、リーフ様はすっかり慣れた様子で、収まりが良いところを探して大人しくなった。

そんなリーフ様に胸がキュッと掴まれる様な気分になって、先程の嫌な気分は、全て吹き飛ぶ。


焦ることはない。

確実なチャンスを待つべきだ。

” 相手の望むものを用意する事 ” 

それが大事。

リーフ様の望む場所、タイミング、それをもう見誤らない!


────キリッ!

表情を引き締めリーフ様の様子を伺っていると、なんと下着の女の話は冒険者としての依頼だったらしく、これからその依頼を受けることになった様だ。


『 依頼、お金 』イコール『 沢山触れる、結婚資金 』


「 …………。 」

カシャカシャ!

一瞬でそれが頭の中に浮かび、小さくて可愛いリーフ様の手をスリスリと撫でる。


またお金を沢山稼げば、沢山触れる!


俄然やる気になった俺は、リーフ様と共にその依頼された場所である森の入り口まで飛んでいった。


◇◇◇◇

街の入り口に着くと、下着の女が既にいて、どうやら行動を共にするらしい事に気づきムッとしたが、これは仕事だから仕方がないと気持ちを収める。


” 仕事は責任感と我慢が必須!

楽しいのはプライベートで! ”


冒険者になった時、リーフ様に教えて貰った言葉を思い出しグッと我慢した……。


我慢。

我慢…………。


無表情のまま面白くない気持ちを抱え、何かを探している様子の女を睨んだ。

しかし、女は相当鈍いのか何も気づかない様なので視線を外し、常時発動している探知魔法の範囲を王都まで広げてみる事にする。

すると、一度に沢山の情報が頭の中に入ってきて、その中で目の前に広がっている森の奥深くに変わった ” モノ ” がある事に気づいた。


「 …………? 」

────おかしいな……。


その "   モノ "  がこんな場所に存在している事に、首を傾げる。


本来こんな場所には無いはずの ” モノ ”


生きているものでもなく、また死んでいるものでもない。

物質……に定義して良いものかどうか迷う様なそんな ” モノ ”


「 …………。 」


少々それが引っかかったが……どうも今回の仕事のターゲットはそれではなく ” スライム ” らしいので、その存在の事は、直ぐに頭の中から消し去る。


今回の依頼は ” かくれんぼ ” と ” 追いかけっこ ” が主な内容の様で、その後もリーフ様はその変わった気配を持つスライムを追いかけ続けた。


リーフ様が遊んでいる時は、邪魔しない。

そのルールに従い後ろからボンヤリ見守っていると、とうとうそのスライムを追い詰めた様だ。


泉の直ぐ側に立つ大きな巨木、そこに一匹のスライムが隠れている。


探知魔法を使った後 直ぐに ” 目 ” をそのスライムに貼り付けておいたため知っていたが、そいつは随分と ” 他 ” とは違うモノだった。


全身真っ黒で、更に ” 人 ” に近い知能まで持っている。


” ご愁傷様 ”


黒スライムに向けて、今、最もふさわしいと思われる言葉を心の中で呟いた。


” 知能 ” を持つ事は残酷な事で、本来は喜ばしい事ではない。

他のほとんどのモンスターと同じ様に、知能なんて持たなければ、何も感じる事なく淡々と死を迎えるだけで良かったのに……。


俺はもう間もなく、リーフ様がその黒いスライムを見つけるだろう距離まで迫ったのを確認し、” 目 ” をソッと外した。


つまり、この黒いスライムは、他のスライムと比べて運が悪かった。


周りにいたスライム達の反応や、持っているらしいスキルを総合して考えると ” 孤独 ” という感情に、ずっと苛まれ生きてきた様だ。


” 残念 ”

” 面倒 ”

” 憐れ ”

” 可哀想な個体 ”


────と、それに対しての冷静な分析が一瞬で頭の中を過ぎったが……。


その瞬間、パッ!!と眼の前が白く光り、そのまま眼の前に生まれたての赤子を抱いている男の姿と、そしてそれに対峙する沢山の武装した人々が見えた。



” い────だ。────はこ────を……────て────ん────ない。 ”



男が武装している人々に言い放った言葉を鮮明に思い出し「 あぁ、そうだった……。 」と呟くと、一瞬でその映像達はキラキラと光を放ち消えてしまった。


” 知らずの幸せ ” より ” 知る苦しみを抱えながらも知性ある幸せ ” の方が、俺は好き。


だって俺は今が一番 "   幸せ     "   だから。


「 ……フッ。 」

また一つ答えが出た事を喜び、思わず笑いが漏れた。

そうして答えを出せば出す程、俺という ” 個 ” は、どんどんと確かなモノになっていく。

知能を持って、沢山の正の感情も負の感情もその全てを抱えて生きていく日々は────少なくとも現在の俺にとってはとても幸せなモノだと思った。


良いものを作ってくれたものだ。


────…………は。


リーフ様にバレないように、俺はこっそりと笑った。


そして事の成り行きを見守る事にした俺の予想通り、その黒スライムを放っておけなかったらしいリーフ様は それを持って帰っていいか?と尋ねてくる。


本当は嫌だ。


そんな想いがヒョコッと顔を覗かせるが、ここでえNOといえば俺は ” 心の狭い男 ” になってしまうため、仕方ないのでOKだと頷いた。


なんといっても、俺は体を許された唯一の男。

あんな黒いスライムより俺の方が見えないほど遥か上にいる存在なのだから気にする事はない。


────フッ……。


そのまま絶対的勝利を確信した笑みを浮かべていると、いつの間にかあの下着の女は消え、依頼が終了した事に気づいた。


お金は……?


「 ??? 」


チラッ!とリーフ様の手元を見たが、持っていない様だ。


もしや今からギルドへ取りに……?と考えていると、リーフ様がブツブツ何かを呟き出したと思ったら、突然泣き出した!


お、お金が貰えなかったから??


ギョッ!と驚く俺を他所に、リーフ様は黒スライムをポーチから取り出し豪快に撫でだしてしまったので、俺はどうすればいいか分からずとりあえず周りをウロウロ……。


今からお金を貰いに……!


直ぐにさっきのパンツの女の元に飛ぼうとしたが、突然ワシっ!!と体を掴まれる。


「 よ~しよし。レオンも凄くいい子! 」

「 ???? 」


そのまま抱き込まれてしまい、ギュギュッ!と体を抱きしめられてしまった。


嬉しい……。

暖かい……。

幸せ……。

だから、お金はもういらない。


ぬくぬくとした暖かいリーフ様に包まれ、体から力がすっかり抜ける。

油断していた所に大好きな匂いと暖かいぬくもり、そして大好きを訴えてくる想い……その全て揃って貰ってしまって思考はデロデロに溶けてしまった。


俺も。

俺も。


俺も大好き、嬉しい、暖かいのも想いも全部あげる。


俺のぬくぬくも伝わります様にと願いながら、その小さくて大好きな体を抱きしめ、これでもかとくっついた。
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