【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
762 / 1,649
第二十二章

746 届かない

しおりを挟む
(クラーク)

罵り仲間割れをしている彼らの顔全員の顔が自分の顔に変わった、その時────突然その頭上に黒い穴が多数出現する。
そして、ポイポイと球状の何かが落ちてきたと思えば、辺りは一瞬で黄色い煙に包まれ、その場は阿鼻叫喚の悲鳴に包まれた。

「……マリオンか。」

見覚えのあるスキルに視線を前から後ろへ移すと、そこには胸を張って仁王立ちしているマリオンの姿があった。


魔導具の名門中の名門【スタンティン家】。

その子息であるマリオンとは、昔から何かと馬が合わないというか……喰えないやつという苦手意識があった。

同じ伯爵家を名乗っている手前、それなりに顔を合わせる機会があったのだが……弁が立つタイプの人間であったため、突くような話題を出せば、きっちり100倍になって帰ってくる上に、貴族としてのマナーや礼儀も欠かさないため隙がない。
それは、マリオンの親であるスタンティン家の当主や奥様も同じタイプだった。
身分を尊重しているにも関わらず、上手いことエドワード派閥に加入せずにのらりくらりと躱していると、両親が悔しそうに愚痴をこぼしているのも聞いたことがあるので間違いない。

そんな彼らの唯一弱点となりうるのは、スタンティン家の長男……つまりマリオンの実の兄である<レイブン>が廃爵され平民落ちにされたという事実だ。
その当時、周りには様々な噂が広がりマリオンに対する中傷的な噂も数多くあったが────その全てに、マリオンは負けなかった。

アゼリアと同じく。

その事実は俺に、複雑な気持ちを抱かせた。


ペラペラと話し終わったマリオンは、チラッとリーフ様の方へ一瞬視線を向け、『どうだ!見たか!自分が一番すごいのだ!』 と言わんばかりの、偉そうな顔を見せる。

────ムカッ!!

何だか面白くない気持ちが湧き、イライラした気持ちに支配されると……全く同じイライラした雰囲気を漂わせたアゼリアが大きく飛んで後方に戻ってきた。

「マリオンの作る魔導具は性格の悪さが滲み出ている。」

そう言ってチラッとリーフ様の方へ視線を向ける。

────ムカムカッ!!

「陰険さなら貴様が一番だ、マリオン。」

苛ついた気持ちのままそう言うと、笑顔のままピクリと片眉を上げたマリオンは、ハハハッと心がこもってない様な笑い声を上げた。

「力押しの怪力女と、後方でチクチク攻撃するハチ男に言われたくないなぁ~?」


その一言でピンッ……と空気が変わる。


不穏な空気が流れだし、お互いピリピリと緊張が走ったのと同時に、三年生達と大して変わらぬ罵り合いに突入。
しかしその直後に後方の方から打たれた弓の攻撃によりそれは中断されてしまいお互い、プイッ!!と顔を背けた後は戦いに集中しだした。


頭にくる!
あの二人はやっぱり気に入らん!!


ふつふつ沸く怒りの感情に翻弄されながらも、不思議な事に何故か心は晴れやかで……。


「…………?」


あれ?と、その不思議さに首を傾げた。

そもそも俺たちはこんなに軽口をたたけるような関係ではないし、アゼリアに対しては更に複雑な想いがあって近づく事さえ身構えていたのに……??


気がつけば見たこともない場所に一瞬流れ着いてしまう自分が心底不思議に思い、俺は何となくリーフ様の方に視線を向ける。
そしてフッと思った。


もしも俺とアゼリアとマリオンの全員が平民で、確執もなにもない状態だったら……毎日こんな感じで過ごしていたのだろうか?


そんなありもしない妄想が頭を過ぎり、直ぐに俺は頭を振ってその考えを消し去った。


その後も言い争いにいがみ合いを続けながら『協力』の『き』の字もなく戦っていた三年生達。
元々学院の授業のほとんどを気分が乗らねばボイコット、もしくは他の爵位が低い者達にやらせていたツケが回ってきたのか、あっさりと俺たちに倒されてしまった。

その結果、目の前で男子生徒達は闘技場に裸で磔、女子生徒達は口に出すのも憚れる絵を顔中に描かれて座り込んでいるという────夢でももっとマシだという程の、恐ろしい光景を晒している。

三年生達は、マービン様のせいで本来特級組になるはずだった平民や低位貴族達は全員辞退してしまい、その全員がマービン様を支える派閥の者達であった。
その結束は非常に強く、教員たちは手を焼いていたそうだが……それも接着するための『犠牲』なしでは、あっという間に崩れ去るものであった様だ。

「……フッ。」

三年生全員の顔がまた自分の顔に変わっていったので、思わず笑ってしまったその時、マービン様がやっと目を覚ました。
当然、マービン様は、烈火の如く怒り出した。


「お、俺は間違った事など言っていないだろう!!
別に、たかが平民の女如きに注意したくらいで、何でここまでの事をされないといけないんだっ!! 」


怒りと憎しみに満ちた目でリーフ様を睨みつけ、この国にとっては完全な『正論』を述べて反撃をし始める。
それに対する反論をしたら返り討ちになるだろうが、もしするとしたら────……。


『その身分に重きを置いた考え方は、間違っている!』

『人は生まれながらに平等で────。』


────と言った所だろうか?
しかし、そんな言葉は恐らくマービン様には届くまい。


多くが認める『正しき思想』とは、例えるなら無敵の要塞で、外からそれを崩すのはほとんど無理に等しい。
それを否定するという事は、相手の生きてきた人生全てを否定するという事だから。


つまり『正しい』『正しくない』以前の問題で、それを受け入れる事は、とても難しいと言う事だ。

こんなにガチガチで、更に結束しているマービン様の要塞を打ち砕く事は不可能。
一人で何を言おうとも、多数の認める世界を『正しくない』モノには絶対に出来やしない。


「そうだ……できやしない。」


騒ぎ続けるマービン様を見つめボソッと呟くと、かつての自分がマービン様と完全に重なった。


『俺の言っている事に誤りはなかった。』

『俺を選ばなかった世界の方が悪い。』


未だにその『俺』は、往生際悪く叫んでいる。

そんな『俺』にリーフ様は言う。


「では何が問題か……?それはずばり────……君自身に魅力がない事が問題だ!」

「??????」
しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

処理中です...