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第二十二章
748 分かっているんだ
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(クラーク)
個人情報の扱いに非常に慎重な教会は、それぞれトップの【大司教】と【聖女】。
そして【司教】達全員の許可が取れなければ、その情報を開示してはならない。
つまり今現在派閥が別れている状態であれば、その許可をお互いに取るのは難しいという状況になっているのだ。
ソフィア様が如何に見せろと言っても、大司教の派閥の者達があれやこれやと理由をつけて先延ばしにしようとしてくるはず。
そんな事を言っている場合ではないだろうに……。
どんな緊急時であろうとも、自分の信念を譲らないであろう老害達を思い浮かべ、思わずため息が漏れてしまった。
それを誰よりも分かっているソフィア様もこれは諦めるであろうと思ったが────なんとソフィア様はジェニファー様に『どうか手伝ってはくれないか?』と頼んできたのだ!
これには俺もギョッとして、慌ててジェニファー様に視線を向けたが、ジェニファー様も俺同様驚いている様子であった。
ソフィア様は変わった。
少し前から感じていた違和感の正体が、はっきりと分かった瞬間、フッと気づけばそこは薄暗い道で……。
隣にはジェニファー様、そして前にはソフィア様がいて、ゆっくりとその遠ざかっていく背中を、俺とジェニファー様はぼんやりと見ていた。
また一人、そっちに行ってしまうのか?
嫉妬、焦り、諦め……。
様々な感情を持ってその背を見つめていると、不意に後ろから特級組の生徒達が、そして次々と貴族組、平民組の者達まで、俺たちを後ろに置いてゆっくり同じ方向へと歩いていった。
楽しそうに笑いながら。
まるで踊るように────……。
「────おいっ!!!」
突然、怒りが顕著に現れている怒鳴り声が聞こえ、ハッ!として意識は現実に。
声のした方へ視線を向けると、そこには怒りと憎しみに染まった顔のマービン様と、あまり質の良くない戦闘職の者達が20人程、その後ろにズラリと並んでいた。
何をしに来たのかなど、聞くまでもなく分かる。
『復讐』
自分の世界を完膚なきまでに蹂躙したリーフ様を、叩き潰すために来たのだ。
『壊されてしまった自分の世界は、それを壊したモノを消し去れば元の正しいものに戻る。』
そんな酷く単純な理由から、それを可能にしてくれる『力』を持ってやってきたというわけだ。
「全く……どうかしている。」
呆れてしまうのは、当然の事。
プライドばかりが高い貴族にとって、確かにこれはよく見られる行動だが、こんな事を学院内で堂々としてしまえば、相手に正当性を与えてしまう。
ましてや相手は、不義の子といえど<公爵家>だぞ?
利益よりプライドをとる感情的な行動に呆れて、大きなため息が漏れてしまった。
それはジェニファー様も、そして他の特級組の者達も全員同じ気持ちだ。
とりあえず穏便に事を済ませるには……と、余裕を持って見ていられたのはここまで。
リーフ様は、一切の迷いも手加減もなしに、戦闘職の者達全員を殴る!蹴る!!
側近候補であろうマービン様の控えの二人も殴る!殴る!
そして元凶であるマービン様も殴る!!
改めて目にするリーフ様の強さに圧倒され、俺達はその動きを見逃すまいと必死に目で追いかけた。
リーフ様はとにかく強い。
上級資質であるという点を除いても、別次元の強さだ。
ただ────……。
「「「「…………。」」」」
その場の全員の目が、ぼんやりと立っている黒い化け物に集まった。
相変わらずの無表情を確認した後、直ぐに全員が再びリーフ様の方へと視線を戻すと、なんと終わったと思った反撃はまだ続く。
腹を殴られ膝をつくマービン様の首根っこを乱暴に捕まえると、流れるような動きで正座しその上に掴んでいたその体をうつ伏せに乗せた。
そして、晒される臀部部分を睨みつけながら、リーフ様はズボンの腰部分へと手を伸ばす。
ビリビリビリ────!!!!
容赦なく破られたズボンから、マービン様の肌色の臀部がご開帳されてしまった。
……プリンッ!♬
堂々と晒された臀部に、固まるマービン様。
そしてそれに負けずに固まる俺と特級組の者達で空気が凍ったが、リーフ様は一切気にせず、その晒されている臀部を叩いた!
「わ────っ!!!」
マービン様の悲鳴が上がり、同時に俺の心の中にも悲鳴が上がる。
「まったくっ!!君はなんて悪い子なんだろうねっ!!!
こんな悪い奴らまで連れてきて!!
男だったら自分の力で掛かってこないか、情けない!!最高にカッコ悪い子だ!君はっ!!
この大馬鹿野郎────っ!!!!」
初めて見る大激怒したリーフ様の怒鳴り声に体は震え、誰一人身動きがとれない。
固まっている俺たちを置いて、リーフ様の説教は続く。
その全てはマービン様の心を深く抉り同時に────俺の心も深く深く抉っていく。
「ヒッ、ヒィっ!!────こ、このっ!!なんだよっ!!お、お前なんて、メルンブルク家の不義の子のくせにっ!!
捨てられたいらない子のくせに────!!!! 」
『レイモンド家の不義の子のくせに。』
『捨てられたいらない子のくせに。』
「生意気なんだよっ!!!
親にすら捨てられる様なゴミクズが、大事にされている跡取りの俺に逆らうなっ!!」
『何だよ、その目は?生意気だ。
親に捨てられた様なゴミクズが大事にされている跡取りのクラークに逆らうな。』
いつの間にかマービン様の顔は、俺の顔になっていて、『俺』は必死に自分の信じていた世界を守ろうとリーフ様に反撃したが……。
無理やり目を大きく開けられて、目の前に広がっている『本当』を見せられてしまった。
名門レイモンド家の跡取りに生まれた自分。
それを無敵の剣の様に振りかざし驕り高ぶっていた自分。
不義の子は冷遇されて当然であると、考える事を放棄した自分。
────本当に大馬鹿野郎だ、俺は。
「…………っ。」
周りにバレない様に、ジクジク痛む心臓を押さえた。
すると、突然妄信的に守ってきた『愛』の正体がハッキリと見えてくる。
両親に悲しい思いをさせないため。
不義の子であるアゼリアさえいなければ、家族が不幸になることはなかった。
────違うじゃないか。
母以外の女性に手を出し子供を作って知らんぷり。
更にその自分のしでかした責任から逃れたい、母や俺からの怒りを受けたくないからアゼリアを責めて被害者面していた父。
そしてそれに薄々気づきながらも、父に向けるべき怒りを何の罪もないアゼリアにぶつけてプライドを守っていた母。
自分の幸せのためにそれに便乗して『正しき』に変えてしまった自分。
最初から不幸しかなかったのだ。
それをアゼリアを使うことで『幸せ』に変えていただけだった。
俺の守り続けていた場所は……。
今、俺が必死に守っている場所は────……。
「フッ……ククッ…………。」
口から僅かに漏れる笑い声は小さくか細かったため、隣にいるジェニファー様だけが気づき僅かに肩を揺らした。
なんて滑稽!!
まるで道化師だな、俺は!
トントンと叩かれていた音は、視界が開けた時点で消えてなくなり、俺の現在唯一持っている『愛』の正体が目の前に広がっていた。
ソフィア様にアゼリアが選ばれた途端、俺に全ての責任を押し付けた父と母。
俺が両親を守ろうとしていた間中、ずっと逸らされていた目!
分かっている。
分かっているんだ。
全部全部────。
漏れた笑いを必死に飲み込み、俺は気絶した戦闘職の者達を引きずっていくリーフ様の背中を縋るように見て────……ソッと目を瞑った。
だって、それを認めてしまえば────俺はどうなってしまうんだ?
薄暗い道に立ったまま楽しそうに別の道を進んでいくリーフ様や他の皆の背中をぼんやりと見つめた後、俺はゆっくりと目を閉じる。
そして────そのまままた……ゆっくりゆっくりと流されていった。
個人情報の扱いに非常に慎重な教会は、それぞれトップの【大司教】と【聖女】。
そして【司教】達全員の許可が取れなければ、その情報を開示してはならない。
つまり今現在派閥が別れている状態であれば、その許可をお互いに取るのは難しいという状況になっているのだ。
ソフィア様が如何に見せろと言っても、大司教の派閥の者達があれやこれやと理由をつけて先延ばしにしようとしてくるはず。
そんな事を言っている場合ではないだろうに……。
どんな緊急時であろうとも、自分の信念を譲らないであろう老害達を思い浮かべ、思わずため息が漏れてしまった。
それを誰よりも分かっているソフィア様もこれは諦めるであろうと思ったが────なんとソフィア様はジェニファー様に『どうか手伝ってはくれないか?』と頼んできたのだ!
これには俺もギョッとして、慌ててジェニファー様に視線を向けたが、ジェニファー様も俺同様驚いている様子であった。
ソフィア様は変わった。
少し前から感じていた違和感の正体が、はっきりと分かった瞬間、フッと気づけばそこは薄暗い道で……。
隣にはジェニファー様、そして前にはソフィア様がいて、ゆっくりとその遠ざかっていく背中を、俺とジェニファー様はぼんやりと見ていた。
また一人、そっちに行ってしまうのか?
嫉妬、焦り、諦め……。
様々な感情を持ってその背を見つめていると、不意に後ろから特級組の生徒達が、そして次々と貴族組、平民組の者達まで、俺たちを後ろに置いてゆっくり同じ方向へと歩いていった。
楽しそうに笑いながら。
まるで踊るように────……。
「────おいっ!!!」
突然、怒りが顕著に現れている怒鳴り声が聞こえ、ハッ!として意識は現実に。
声のした方へ視線を向けると、そこには怒りと憎しみに染まった顔のマービン様と、あまり質の良くない戦闘職の者達が20人程、その後ろにズラリと並んでいた。
何をしに来たのかなど、聞くまでもなく分かる。
『復讐』
自分の世界を完膚なきまでに蹂躙したリーフ様を、叩き潰すために来たのだ。
『壊されてしまった自分の世界は、それを壊したモノを消し去れば元の正しいものに戻る。』
そんな酷く単純な理由から、それを可能にしてくれる『力』を持ってやってきたというわけだ。
「全く……どうかしている。」
呆れてしまうのは、当然の事。
プライドばかりが高い貴族にとって、確かにこれはよく見られる行動だが、こんな事を学院内で堂々としてしまえば、相手に正当性を与えてしまう。
ましてや相手は、不義の子といえど<公爵家>だぞ?
利益よりプライドをとる感情的な行動に呆れて、大きなため息が漏れてしまった。
それはジェニファー様も、そして他の特級組の者達も全員同じ気持ちだ。
とりあえず穏便に事を済ませるには……と、余裕を持って見ていられたのはここまで。
リーフ様は、一切の迷いも手加減もなしに、戦闘職の者達全員を殴る!蹴る!!
側近候補であろうマービン様の控えの二人も殴る!殴る!
そして元凶であるマービン様も殴る!!
改めて目にするリーフ様の強さに圧倒され、俺達はその動きを見逃すまいと必死に目で追いかけた。
リーフ様はとにかく強い。
上級資質であるという点を除いても、別次元の強さだ。
ただ────……。
「「「「…………。」」」」
その場の全員の目が、ぼんやりと立っている黒い化け物に集まった。
相変わらずの無表情を確認した後、直ぐに全員が再びリーフ様の方へと視線を戻すと、なんと終わったと思った反撃はまだ続く。
腹を殴られ膝をつくマービン様の首根っこを乱暴に捕まえると、流れるような動きで正座しその上に掴んでいたその体をうつ伏せに乗せた。
そして、晒される臀部部分を睨みつけながら、リーフ様はズボンの腰部分へと手を伸ばす。
ビリビリビリ────!!!!
容赦なく破られたズボンから、マービン様の肌色の臀部がご開帳されてしまった。
……プリンッ!♬
堂々と晒された臀部に、固まるマービン様。
そしてそれに負けずに固まる俺と特級組の者達で空気が凍ったが、リーフ様は一切気にせず、その晒されている臀部を叩いた!
「わ────っ!!!」
マービン様の悲鳴が上がり、同時に俺の心の中にも悲鳴が上がる。
「まったくっ!!君はなんて悪い子なんだろうねっ!!!
こんな悪い奴らまで連れてきて!!
男だったら自分の力で掛かってこないか、情けない!!最高にカッコ悪い子だ!君はっ!!
この大馬鹿野郎────っ!!!!」
初めて見る大激怒したリーフ様の怒鳴り声に体は震え、誰一人身動きがとれない。
固まっている俺たちを置いて、リーフ様の説教は続く。
その全てはマービン様の心を深く抉り同時に────俺の心も深く深く抉っていく。
「ヒッ、ヒィっ!!────こ、このっ!!なんだよっ!!お、お前なんて、メルンブルク家の不義の子のくせにっ!!
捨てられたいらない子のくせに────!!!! 」
『レイモンド家の不義の子のくせに。』
『捨てられたいらない子のくせに。』
「生意気なんだよっ!!!
親にすら捨てられる様なゴミクズが、大事にされている跡取りの俺に逆らうなっ!!」
『何だよ、その目は?生意気だ。
親に捨てられた様なゴミクズが大事にされている跡取りのクラークに逆らうな。』
いつの間にかマービン様の顔は、俺の顔になっていて、『俺』は必死に自分の信じていた世界を守ろうとリーフ様に反撃したが……。
無理やり目を大きく開けられて、目の前に広がっている『本当』を見せられてしまった。
名門レイモンド家の跡取りに生まれた自分。
それを無敵の剣の様に振りかざし驕り高ぶっていた自分。
不義の子は冷遇されて当然であると、考える事を放棄した自分。
────本当に大馬鹿野郎だ、俺は。
「…………っ。」
周りにバレない様に、ジクジク痛む心臓を押さえた。
すると、突然妄信的に守ってきた『愛』の正体がハッキリと見えてくる。
両親に悲しい思いをさせないため。
不義の子であるアゼリアさえいなければ、家族が不幸になることはなかった。
────違うじゃないか。
母以外の女性に手を出し子供を作って知らんぷり。
更にその自分のしでかした責任から逃れたい、母や俺からの怒りを受けたくないからアゼリアを責めて被害者面していた父。
そしてそれに薄々気づきながらも、父に向けるべき怒りを何の罪もないアゼリアにぶつけてプライドを守っていた母。
自分の幸せのためにそれに便乗して『正しき』に変えてしまった自分。
最初から不幸しかなかったのだ。
それをアゼリアを使うことで『幸せ』に変えていただけだった。
俺の守り続けていた場所は……。
今、俺が必死に守っている場所は────……。
「フッ……ククッ…………。」
口から僅かに漏れる笑い声は小さくか細かったため、隣にいるジェニファー様だけが気づき僅かに肩を揺らした。
なんて滑稽!!
まるで道化師だな、俺は!
トントンと叩かれていた音は、視界が開けた時点で消えてなくなり、俺の現在唯一持っている『愛』の正体が目の前に広がっていた。
ソフィア様にアゼリアが選ばれた途端、俺に全ての責任を押し付けた父と母。
俺が両親を守ろうとしていた間中、ずっと逸らされていた目!
分かっている。
分かっているんだ。
全部全部────。
漏れた笑いを必死に飲み込み、俺は気絶した戦闘職の者達を引きずっていくリーフ様の背中を縋るように見て────……ソッと目を瞑った。
だって、それを認めてしまえば────俺はどうなってしまうんだ?
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