【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第二十六章

896 ヒーロではない

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(リリア)

汗を掻き視線を逸らすナックルを見て、私は笑みを深める。

「うちにも沢山来たわよ。貴方のお仲間さん。あっさり母に処分されていたけど。」

「────っ!!!」

そこでやっとナックルは、私の事を思い出した様だ。
ダダンが最後のターゲットにした私の事を。

「お……お前あの時の……あのクソ強い野郎の娘……。
……し……仕方なかったんだ!俺も脅されていたんだよ……!言う事聞かないと殺すぞっていわれて……っ!」

ツラツラと続くナックルの言い訳を聞きながら、私は彼に良いことを教えてあげる事にした。

「あと5分くらいで終わりね。貴方の人生。」

「ヒッ……っ!!!」

青ざめて震えだしたナックルに、私は安心させるようなとびきりの笑顔を見せる。

「勘違いしないで?私がいまからトドメを刺すわけじゃないの。」

私の言葉を聞いたナックルは、あからさまにホッとしたようだったが……続く私の話に凍りついた様に固まった。

「簡単に言うと、貴方がさっき飲んだ<強善薬>、あれに改造された食肉レッド蜂の卵が大量に練り込まれていたのよ。
それがあと5分くらいで孵化するみたい。
これ以上は言わなくても……分かるわよね?」

自分の状態をよく理解したらしいナックルは、ガタガタと寒くもないのに歯を震わせ、顔色は血の気が無くなった様に白くなってしまう。
しかし、私の能力を思い出したのか、ハッ!とした様子で懇願する様に私に手を差し出してきた。

「頼むっ!!お前の能力があれば作れるよな?!〈虫直し薬〉!
今飲めば俺は助かる!!なぁ、頼むよぉぉ~。
正義の見方が人を見殺しになんてしねぇよな?!
今度こそ絶対に足を洗う!約束するから!」

必死に懇願するナックルを見て私は笑う。
ずっと欲しかったおもちゃが手に入った子供の様に。

「ふふっ。ごめんなさい。私、正義のヒーローじゃないの。
さしずめ正義のヒーローに憧れる残忍な魔女ってとこかしら。
だから貴方の絶望する姿も、これから迎える結末も楽しくて楽しくて仕方がない。」

私の言葉を聞いたナックルの顔はまた絶望へと染まり、私を見上げて絶句していた。
それを見届けた後、私はナックルから視線を外しクルッと背を向ける。

「本当はもっとゆっくり見ていたいけど……残念。あまり時間がないからこれでさようなら。
あっちでダダンによろしくね。」

そのまま歩き出すと、後ろではナックルの声にならない叫び声が聞こえたが、私が振り返る事はなかった。


Cランク冒険者ナックル VS サイモン、リリア
サイモン、リリア勝利。


ゴソゴソと沢山のアクセサリー達を調べていた兄の元へ行くと、兄は泣き叫ぶナックルへと嫌そうな目を向ける。

「うるさい人~。リリア何を話していたの?」

「ふふっ。秘密。」

たわいない会話を終えて、私はポイッと大ぶりの宝石を投げ捨てた兄さんに「兄さん。」と真剣な表情で呼びかけた。

「どうしたの?そんな神妙な顔して……。」

「実はさっきナックルが飲んだ<強善薬>なのだけど……もう一つ何かのスイッチの様な魔法が掛けられているのを感じたの。
でも魔法陣の専門ではない私には、それ以上の事が解析できなかった。
教会の神官達の中になら、もしかしてその専門の人がいるかも……。」

「へぇ~。何だか嫌な予感がするね。
じゃあ、ナックルのお仲間さんを始末するついでにその人を見つけるしかないかぁ~。
一体何のスイッチなのか────。」

兄の言葉を遮る様に、街の中でドカンッ!!!という大きな爆発音が持続的に発生し始めた。
そして同時に聞こえるのは、沢山のモンスター達の鳴き声で────そこで私は敵側の思惑を一瞬で理解した。

「────そうか……モンスターボックス!街の中から物理的に防壁を壊すつもりだわ。
四方八方にモンスター達は散らばっていくはずだから……不味いわね。」

「はぁぁぁぁ────!!!??なにそれ、めちゃくちゃ反則じゃん!!」

兄が叫びその場で地団駄を踏むと、その直後、遠くの方で沢山の人の悲鳴や戦闘音が耳に入る。

「……あれはナックルの仲間だと思うわ。街で火事場ドロボーをしていた奴らの。」

「はは~ん。それは手間が省けてラッキー♡
でも、そいつらが全滅したらモンスター達が街中に────。」

「そう。このままでは一気に防壁が中から崩されて街はおしまい。
防壁の耐久性を信じて、とにかくできる限り数を減らしましょう。やれる事をとにかくするしかないわ。」

ナックル達の仲間達の悲鳴が徐々に聞こえなくなってくると、今度は足音が散り散りバラバラに動き出した。
そしてその内のいくつかの集団は、こっちへまっすぐ向かってくる様だ。
兄は真っ先に飛んできた鳥型モンスター達を切り落とし、私はツルを伸ばして襲ってくる植物系モンスター達に向かい、魔導書を向ける。


<錬合師の資質>(シークレット固有スキル)

< 魔法陣の錬合術 >

自身の使える単体の魔法陣の構造を書き直し、そこから新たな魔法陣へと錬合する知力系創作系スキル。
複合魔法陣は適応されず単体のみ可能。
また細部に渡る魔法陣の原理を全て理解していなければ使えない上に失敗すれば自爆するおそれもあるため注意が必要なスキル。

(発現条件) 
スキル<錬合魔力感知>を持つこと
一定以上の知力、魔力、魔力操作、魔法陣の知識を持つ事
一定回数以上スキル<錬合魔力感知>を使い、戦闘経験値をもつこと
単体魔法陣の原理を全て理解している事


初級火属性魔法を2つ描き、それを混ぜ合わせると、モンスターの頭上からまるで豪雨の様な火の玉が降り注ぎ植物系モンスター達を全滅させた。
そのまま兄さんと二人で襲い来るモンスター集団相手に必死に応戦するも多数に無勢……防壁の方からはド──ン!!ド──ン!!というモンスターの体当たりする音が聞こえ、とうとう穴が開いてしまった様だ。

ここまでか……!

絶望が顔を覗かせた、その時────……後ろから何かのスキル発動の光りが見え、防壁が光る巨大な盾で覆われていくのが目に入る。


(合体スキル)

< 守護の巨大壁 >

武器指定【盾】
更に守護に関するスキルを持つ者達十人以上が揃うことで発動できる合体スキル。
光でできた巨大盾を召喚し、モンスターや敵の進行を阻む。
その強度は術者達の総合防御力の合計値で決まる。


そのスキルにより穴は塞がれ、更に防壁に攻撃をしていたモンスター達が大きくふっ飛ばされた。
驚いてその様子を茫然と眺めていると、後方の東門の方角から走ってきたのは盾を持ったライトノア学院の生徒たちだ。

「防壁に開いた穴、クリアー。盾班、この場を維持します。」

私達を越えて走っていった沢山の盾を持った生徒たちに更に驚いていると、沢山の伝言シャボンが飛び交い様々な情報を伝えてくる。

「攻撃班A、三時の方向に向かいます!」

「狙撃犯、配置につきました!」

「サポート班もOKです!」

そしてその情報達はある一人の人物へと収束され、更にその人物は的確な指示を即座に各班へと送る。
その人物を見て兄と私はギョッとしたのだが、向こうは私達に気づくと口端を大きく上げて余裕そうに笑った。


「ふんっ、リーフ様の取り巻きの平民女共か。
今からこの場はこの辺境伯<マービン・ゲーズ・ライロンド>と、崇高なる貴族の同志達が引き受ける。
頭が高いぞ、平民風情が。」


冒険者ギルド前

モンスター多数 VS マービン、他貴族のライトノア学院生

開戦
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