【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第二十七章

912 下等種

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(メル)

~カルパスとの会話~

「────以上が現在判明している敵陣営の情報です。他にも少々気になる動きをしている輩がいるようですが…
敵陣営の小うるさいが多くて中々自由には動けずこれ以上は分かりかねます。
……うっとうしい事だ。」

フゥ……と心底忌々しそうにため息をつくリーフの専属執事のカルパスさん。
メルは難しい事は良く分からないが、とにかく〈聖浄結石〉なるものが、自分の大事なモノを一瞬で奪うモノである事は理解した。

「そうと分かれば、相性の良い相手を選んで直ぐに向かっちゃおうかぁ。
う~ん……そうすると僕はこのナックルってやつかな?トリッキーな攻撃をしてきても、僕なら対応できるしね。
でも……うげぇげぇ~!!大嫌いなタイプ~!下品なキモ男~!」

顔を歪めて腕を擦るサイモンを見て、カルパスさんはニコリと笑う。

「あぁ、そうそう。その方はどうやら逃げるのがとてもお上手な様ですので注意して下さいね。
残念でした。
でも今回は逃げられませんねぇ?見つかってしまったから。」

まるで『内緒だよ』と言う様に、人差し指を口元に付けるカルパスさんに、メルも他の皆も首を傾げたが、リリアだけはクスッと楽しそうに笑っていた。

「?とりあえずサイモンが、そのナックルってヤツを相手にするって事だな!俺は誰でも大丈夫だぜ!」

「……私は兄さんと行くわ。兄さんは前衛、私は後衛でバランスがいいでしょう?」

特に苦手な属性を持たないレイドがそう言うと、リリアが冷静に希望を口にする。

そんな中でメルは考えた。
自分がどこで戦えば一番皆の役に立つのかという事を。

あまり良くない頭を擦りながら必死に考えていると、メルの頭の中でスキルが発動する。


<重弓戦士の資質>(先天スキル)

< 空探知 >

空からの敵に対してのみ発動する先天探知スキル。
かなりの広範囲、飛行型の敵の居場所を特定可能。
集中力のステータスが大きい程探知距離は広がり、その精密度は体力値と動体視力の合計値で決定する


「飛行型モンスターが……いっぱい来る……。」

頭の中で自動マッピングされた沢山の飛行型モンスター達が、正門の方にある森の方から不規則な動きをしながらこちらへ向かって来るのを察知、その情報を口に出すと、カルパスさんは正門の方へ視線を向けた。

「飛行型モンスターはずる賢い子が多いですから、恐らくはこちらへ回り込んで来ようとするはずだと思っていましたが……いい目をお持ちの様だ。」

「だろだろ~?メルはすげぇんだぜ!昔から空の敵に対しては負け知らずなんだ!」

「なんでレイドが自慢げなのぉ~?そんなのいつも平民組で一緒の僕とリリアの方が知ってるしぃ~。」

えっへん!と胸を張るレイドに、ふふ~ん!と同じく胸を張るサイモンに挟まれながらメルは皆を見渡す。

「メルは南門に向かいたい……。空の敵はメルが有利だから……全員ぶっ倒してくる……。」

「「「「「任せた!!」」」」」

フンッ!と鼻息荒く吹き出しそう伝えると、全員がメルなら当然できると自信を持ってそう言って送り出してくれる。

それはメルに大きな喜びを与えてくれて、これこそがメルを幸せにしてくれる『欲しかったモノ』だったのだと、改めて思った。


◇◇
メルの生まれは獣人国<ジェンス王国>の平和な田舎町で、母は【ペンギン】父は【ヒグマ】の元に生まれた。

獣人は、他種族に比べれば全体的に身体が強く力も強いが、元々の祖先とする動物の形によって特化する能力が異なるため、特に小さい時は能力の偏りが顕著に現れる。

ジェンス王国は、純粋な力に重きを置いた超実力主義の国。
そのためその祖が何であるかは非常に重要なわけだが、その価値観の中で言うなら【ペンギン】はいわゆる『下等種』と呼ばれる種族であった。
筋力はそれなりに高いが、体格は小さくバイソンや象、サイの獣人には劣り、泳ぎは得意だとしても、魚系の獣人には劣るため立ち位置が非常に中途半端。
そもそも『体格に恵まれない』事は、事実上、獣人の戦闘職を目指す者としては大変不名誉である事で、魔法や魔力操作を苦手とする獣人にとっては、死刑宣告にも等しい事だった。

そんな中、同じ【ペンギン】を祖に持つ母は、獣人とは思えないくらい大人しく穏やか、争い事自体が大嫌いな性格で、大きい虫が家の中に出るだけでも大騒ぎ。
そんな怖がりな母を父は溺愛し、家庭内不和は何一つ見当たらない幸せな家庭であったと言えると思う。

母にとって結婚し、夫を支えながら住み心地の良い家を保つ事は性に合っていた様で、毎日隅々まで綺麗な家の中、お店で食べるような美味しいご飯に洋服だって売っているモノと大差ない母の手作りを着させてもらい、メルにとって母は最も尊敬している人だと胸を張って言える人だった。
メルは、そんな凄くて溢れる程の愛情を与えてくれる母が大好き。

しかし────……メルにはその生き方は出来そうになかった。

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