【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第二十八章

945 暗転

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(ジュワン)

まずは指を一本一本切り落とし、全身の肉を少しずつ剥いでいこう。

そうすればきっとその激痛に身体を踊らせ悲鳴をあげるはずだから、もっと恐怖を与えるため目を潰す。
そして逃げようとする足の腱を切ってやって……じっくりじっくり楽しもうか。

その時の絶望に塗れた姿を想像するとゾクゾクと背筋が震え、同時に腰がズンッと重くなった。

定期的にいなくなってもバレぬ様な娼婦や下民の女達を使って欲望を満たしているが、やはりまだ汚れを知らぬ美しいモノは良い。
今直ぐ達してしまいそうだ。

「やれやれ……これだから平民の三流剣士共は嫌なんですよ。」

興奮を隠して、私はグズグズしている教員達へ向けて言葉を放つ。
そして『真実』というモノを嫌というほど突きつけてやれば、私を睨みつけ逆恨みしてくるフランと他の教員達。
それだけでも呆れてしまうというのに、更にフランは化け物に剣体術の試験のかわりに追加の筆記テストを提案する。
それにため息をつきながら私は続けていった。

「奴隷、しかもそんな化け物にいつまで試験を受けさせるつもりなんですか?」

揃いも揃ってそんな怯えた状態で、その化け物を指導?
お遊びでもするつもりか?

それを遠回しに伝えてやれば、フランも他の教員達も青ざめて黙ってしまう。
ため息しか出ない無能のゴミ共を見回した後、私は呪いの化け物を指差した。

「貴様の剣体術の試験は私自ら担当してやろう。
ただし、特別ルールだ。
どちらかが死ぬまで勝負はつかない。更に私が勝ったらその時点で試験は不合格~。
はい、さ~よ~う~な~ら~。」

すると今度は邪神の子が何やらごちゃごちゃと言ってきたが、これから呪いの化け物に大事な大事な役割を与えてやるのだから、私の慈悲深さに感謝してほしいくらいだ。
呆れ果てながら、『もう少し普通の奴隷を買うべきだ』と忠告してやった。

……まぁ、新しい奴隷を勝ってもどうせ直ぐに消されるが。
主人である貴様と一緒にな?

最後のその言葉を、やさし~い私は一応飲み込んで伝えないでやった。
そしてその後は生意気にも挑発してくる化け物に腹が立ったが、まぁこれから始まる楽しい楽しいショーの前座と思えば悪くない。

そのままリングに上がらせ対峙したのだが……やはりイイ!

息を飲むほどの圧倒的な美しさ。
まるでこの世のものとは思えない程。
興奮を必死に抑えながら合図を待ち、そして────……。

「それでは────始めっ!!!」

開始の合図と共に私は足を踏み出した────が????

カクンっ…………!!

何故か全身の力が抜けるような妙な感覚を感じ、何だ??と思った瞬間に、踏み出した最初の一歩が地面につく。
すると勿論その足にも力が入らず、そのままフラフラと勝手に足は前に進んでいき、そのままバタンッ!とうつ伏せに倒れてしまった。

「???」

良く分からない感覚に疑問を感じると、次に襲ってきたのは生まれて初めて感じる耐え難い激痛と、急降下する体温だ。

「いた……い…………?さ……む……い??」

何が起きたか理解できぬまま、痛みに意識が飛びそうになっていると、視界に写ったのは『赤』。
倒れている地面に『赤』がジワジワと広がっていくと、やっと私は……。

自身の腹がなくなっていることに気づいた。

「……俺……の…………??」

────腹がない??

そう呟いた瞬間、私の意識はシャットアウト。
そしてその直後、パリンッ!という音が遠くの方で聞こえたと思った瞬間、意識は物凄い早さで戻ってきた。

まるで一瞬夢でも見ていたような……??

ゆっくりと起き上がり、フッと周りを見ると、恐怖に青ざめたまま固まっている教員達と生徒たちの姿が。

それが今起きた事が夢ではないと雄弁に語っていた。

「う……ああああぁぁぁ────────っ!!!!!」

私はパニックを起こし、先程なくなっていた腹を擦りながら、手当たりしだい剣を振り回し周りを攻撃する。

初めて体験する死の感覚!
この私が奴隷に負けたという現実!!

全てが信じられなくて、まるでその現実ごと葬り去ろうと暴れたが、気がつけば隔離された独房の様な部屋の床に転がされていた。

冷静さを取り戻した頭で周りを見回せば、そこが学院内にある幻影魔法などによって錯乱してしまった者達を一時的に隔離する【隔離室】である事に気づき、ワナワナと身体を震わせていると……ガチャンッ!!という大きな音を立てて、正面にある鉄製の頑丈な扉が開き、フランとセリナが中へと入ってくる。

「やっと目が覚めたか、ジュワン。
おはよう────……っと言っても、もう夕方だがな?」

挑発する様な笑みを浮かべたフランをギロリと睨みつけてやったが、そんな俺に一切臆することなく、フランは一枚の紙を俺の前に差し出した。

「元王宮騎士様は痛みに耐性がないとは知らず、申し訳なかったな?
試験官などという大役を任せてしまって。
貴下には荷が重すぎた様だ。当分はゆっくり身体を休めると良いぞ。
なぁに、我が学院の教員達は優秀である故、貴下がいなくとも仕事には何一つ支障はない。
何日といわず何年でも何十年でも休んで良いからな。
しかし、休みの間、何か不自由があってはならん。この書類にサインしてから休むのはどうか?」

ご機嫌で盛大な嫌味を言うフランに、ピクピクと口を引きつらせて目の前に差し出された書類に目を向けると、私のこめかみはブチブチ────ッ!!と音を立てて切れる。
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