【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第二十九章

(リーン)959 希望が見えた日

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(リーン)

────えっ!!!!

驚く私達を他所に、気がつけばスキンヘッドの人はあのお兄さんの前にいて、拳を後ろに大きく引いている状態であった。

「クソガキに現実見せてやんよっ!!」

嬉しそうに大きく歪む顔、手加減など一切なしのその様子にお兄さんの死を想像し一瞬で血の気が引く。

────駄目っ!!!

そう叫ぶ間もなく、拳はお兄さんへ振り下ろされた────が……?
何とお兄さんはそれをヒョイッと軽く避け、更にスキンヘッドの人をぶっ飛ばしてしまったのだ!

ポカ────ン……。
驚く私達の前で、お兄さんは一言……。

「あ~スッキリした!」

その瞬間、私も街の人達もワッ!!と歓声をあげた。
気がつけば、私の中にあった怒りも憎しみも、そして絶望も全てがパッ!!と消え去り、新たに入ってきたのは大きな希望の光だ。
心の中はその太陽の様な光によって照らされ、まるで新たな世界に作り変えられてしまった様だと思った。

『何だかお誕生日みたいだね。ハッピーバースディ!新たな世界!』

先程の白昼夢での出来事がフッと頭を過ったが……偶然だろうと頭を振ってそれを忘れて、私は再度リーフさんに御礼を告げる。
するとリーフさんは頭を撫でてくれて、それが擽ったくてムズムズしていると、ケンさんが今のグリモアの現状について語りだした。

『モンスターの増加』

『それに伴いやってきた冒険者たち』

『しかしそのせいで事態は更に悪化してしまった事……。』

気分が沈む様な事ばかりで、それを再確認した皆はどんどんと暗い雰囲気になっていく。
私も同様にどうしようもない状況を理解し、ズ──ン……と気分が沈んでしまったが、リーフさんは皆と全く違う反応を見せた。
なんとメラメラと燃え始め、やる気に満ち溢れている目を輝かせたのだ!

「……おい?いきなりどうした??」

「リーフさん?どうしたの??」

ケンさんと私が声を掛けても聞こえないくらいやる気に満ちているリーフさんを見て、私達は理解した。

リーフさんは私達のために頑張ろうとしてくれてるんだ……って。

チリチリと自分の中の『負けるもんか!』という想いは大きくなっていき、感動に震える気持ちを必死に抑えていると、リーフさんは突然天を指し、高らかに宣言した。

「わっはっはっはっ────!!皆聞いてくれ!俺はこれから冒険者になるんだ!
だからこれから沢山モンスターを倒してこの街をお助けしよう!
俺はとっても強い最強のリーーフ!
これからはドンと俺に任せて安心して過ごしてくれて大丈夫だよ!」

これには私もケンさんも街の人達もゴッ!と燃え上がる。

街の人ではないこんな男の子が頑張ろうとしてくれているのだ。
街に住む私達が負けるわけにはいかない!
そう思い、わぁぁぁぁ────!!と、皆は叫んで飛び上がっての大騒ぎに。

リーフさんは何故か不思議そうな顔をしていたが、直ぐに街の人達がお供えモノの様に色んなモノを渡して拝むと、最後はニコニコと笑いながら、帰っていった。

まるで嵐の様なリーフさんが去った後、前まで当然合った暗く沈む空気は消えていて、皆の前にはただ明るく照らされる世界が広がった様だった。
そのまま久しく見てなかった皆の笑顔を見た後、ボンヤリとリーフさんの去っていった方向へ視線を向ける。
するとケンさんがポンッと私の頭に手を乗せた。

「リーン、本当に大丈夫か?あの野郎共、ナッツだけじゃなくてお前まで……。
子供に手を出すなんざ正真正銘のクズ野郎だな、クソっ!」

「ううん!私は全然平気だよ!────でも、ナッツちゃん大丈夫かな……。
私、全然気づかないでこのリボン貰っちゃったから……。」

ナッツちゃんが心配で、私は頭についているリボンをチョイチョイ弄る。
するとケンさんは、ニカッ!と笑った。

「あぁ、あいつは全然平気平気。
なんたって俺とニーナの子だからよ、辛い事を乗り越えていく強さをあいつは持ってっからさ。
次の日には短い髪の楽さを覚えてご機嫌だったし。
だからそのリボン大事にしてくれるとすげぇ喜ぶと思うぜ。」

「う……うん!」

大事な友達のナッツちゃんが大丈夫と聞き、私はホッと胸を撫で下ろす。
そしてケンさんは今日は念のため家に泊まれと言ってくれたため、そのままケンさんの家へ一緒に帰る事になった。

その道中、ケンさんはこれからどうにかして街に一人守備隊員を配置する事、先程リーフさんに倒されたスキンヘッドの人は良いとして、まだもう一人面倒なヤツがいるため油断できない事を説明してくれた。
更に────……。

「…………ああいう輩はしつこいのが定番だからな。
何してくるか分からないから、人気のない場所には絶対に行かない様にな。」

真剣な顔でそう教えてくれたケンさんだったが、私はそれで真っ先にリーフさんを思い浮かべて心配になった。
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