【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第三十一章

1026 不思議な存在

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( カルパス )

我が最愛の娘の叫びに少々頭が痛くなり、私は思わずこめかみを揉み込んだ。

娘のイザベルは未だにレオン君から専属護衛の座を奪われた事に怒りを感じていて、修行の際はこれが最大のモチベーションとなっている様だ。

ちなみに屋敷でも、レオン君に何度もちょっかいを出しては相手にもされずに完敗している。


「 ………。 」


とりあえずはその逞しさを喜ぼう。

そう考えていると、レイナはワナワナと震えだし、ビシッ!!と宙に浮かぶスクリーン達を指した。


「 な、な、なぁぁぁぁ────っ!!!??

なんなのよっ!!あいつらはっ!!!?? 」


続くレイナの絶叫に片耳を塞ぎながら、私は、はぁ……と大きなため息をつく。


「 だから言っただろう?

そう上手くはいかないぞ────と。 」


「 なっ……は……はぁぁぁぁぁぁ????

だ、だってっ!!あの強さは……??

アンタの娘だけなはずでしょ!!?まともに戦えるのはっ!!

それだって守るだけの守衛師のはずなのに……そもそも他は非戦闘員なはずじゃない!!

なんでたかが一般の従業員達があんな強力なスキルを使えるの……?! 」


目を見開いて信じられない様子のレイナに、肩を竦めてみせた。


「 あぁ、アントンは元Sランク傭兵だぞ。

大方現職についている者達しかマークしてなかった様だな。

全く……表面でしか人の価値を理解できぬカール様らしい。


それと侍女のジェーンと庭師のクランは……まぁ、いつの間にか強くなっていた。

恐らく自身の持つ資質と現在の環境がマッチした結果だろうな。 」


「 そ、そんな……馬鹿なっ……!!

あり得ない……そんな事っ……! 」


愕然とするレイナだったが、実は驚いたのは私も同じ。

私は現在味方である四人の従業員達を思い浮かべ、ふ~むと考え込んだ。


元傭兵のアントン。


彼に至っては類まれなる戦いの才能はあったとしても、同じ資質を持っている者達の中でも歴代一位と言わざるを得ない実力を持っている。

それから考えるに、その資質と相性が良かったのは ” 穏やかな感情 ” と ” 優しい環境 ” であったのでは?と思われる。

大抵の者達は、周りを蹂躙できる ” 力 ” を手にすれば、どんどんと傲慢で、かつ人に対して冷酷な感情が芽生えてくるものだ。

それに負けずに持って生まれた優しさを失わない事が ” 力 ” の条件だったのかもしれない。


そしてカール様のお屋敷に務めていた侍女のジェーンは、元々大した能力は持っておらず、せいぜいマリナ様のバラ庭園を少しだけ広くする程度であったのに、今では自らの世界まで作り上げてしまう程の能力を手にしてしまった。

のびのびした環境でマイペースに物事を決断していく事。

それがあの独創性と自由な発想を生み出し、あの様な特殊な能力を開花させた様に思える。


そんなジェーン同様……いや、それ以上に驚かされたのは、庭師として雇ったクランだ。


クランは元は平民の一切戦闘経験など皆無の普通の青年であったが、ここに来てからまるで花が一斉に咲くかの様に能力を開花させた。

何故この様な能力を持つ青年が他の戦闘機関に目をつけられなかったのか、不思議な程に……。


そこまで考えて、クランを雇った時に妙な事を言っていた事を思い出した。


” リーフ様にそっくりなお祖父様か、親戚の方はいますか? ”


その質問を不思議に思いながら、私がキッパリとその存在を否定すると、クランは納得しきれない様な表情をする。

そのためその理由を聞いてみると、クランは一瞬話すのを迷いながら答えてくれた。


” 実は僕はこの直前に世界に絶望し、自ら命を絶とうとしました。

でもとても不思議なおじいさんに会ってその絶望は綺麗に消えてしまったんです。

そのおじいさんが凄くリーフ様に似ていて……こんな事ってあるんですね。 ”


最初それを聞いた時は不思議な事だが、リーフ様と同じ様な特徴を持ったご老人はそれなりにいたので、そこまで不思議に思わなかった。


しかし────……


私は顎に手を触れ、眉間に僅かに力を入れる。


クランだけではなかった。

その変わった存在を見たという者達は……。


少々気になった私はレガ―ノの街に限局してだが、その存在について調べてみた。

その結果、全く一貫性がない姿形に行動ではあるが、全員の前に何とも不思議な存在が現れたというのだ。

現実から夢の中まで。

年齢も赤子から御老体の姿まで、しかも人間ですらない時もあるという。


しかし、全員最後はこう言う。


” そういえばリーフ様にとても似ていた ” ────と。


クランはそのリーフ様に似ているご老人に出会い、絶望の中に希望を見た。

そしてその希望がクランの能力を凄まじい勢いで進化させ、周りに抑圧される事で歪んでしまった心に自由を与えたのだ。

だからあのクランや、同じく希望を与えられたジェーンやアントンも、あの姿が周りに影響されない素の性格なのだと思われる。


そこで私はフッと嫌な予感がして、視線を下に下げた。


もしも……

もしもこの三人やレガ―ノの人々がその ” 希望 ” に出会えなかったら────?

そうしたら一体どんな成長を遂げたのだろうと。


自分を受け入れてくれなかった世界に対してどんな存在になっていたのだろうか?

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