1,042 / 1,649
第三十一章
1026 不思議な存在
しおりを挟む
( カルパス )
我が最愛の娘の叫びに少々頭が痛くなり、私は思わずこめかみを揉み込んだ。
娘のイザベルは未だにレオン君から専属護衛の座を奪われた事に怒りを感じていて、修行の際はこれが最大のモチベーションとなっている様だ。
ちなみに屋敷でも、レオン君に何度もちょっかいを出しては相手にもされずに完敗している。
「 ………。 」
とりあえずはその逞しさを喜ぼう。
そう考えていると、レイナはワナワナと震えだし、ビシッ!!と宙に浮かぶスクリーン達を指した。
「 な、な、なぁぁぁぁ────っ!!!??
なんなのよっ!!あいつらはっ!!!?? 」
続くレイナの絶叫に片耳を塞ぎながら、私は、はぁ……と大きなため息をつく。
「 だから言っただろう?
そう上手くはいかないぞ────と。 」
「 なっ……は……はぁぁぁぁぁぁ????
だ、だってっ!!あの強さは……??
アンタの娘だけなはずでしょ!!?まともに戦えるのはっ!!
それだって守るだけの守衛師のはずなのに……そもそも他は非戦闘員なはずじゃない!!
なんでたかが一般の従業員達があんな強力なスキルを使えるの……?! 」
目を見開いて信じられない様子のレイナに、肩を竦めてみせた。
「 あぁ、アントンは元Sランク傭兵だぞ。
大方現職についている者達しかマークしてなかった様だな。
全く……表面でしか人の価値を理解できぬカール様らしい。
それと侍女のジェーンと庭師のクランは……まぁ、いつの間にか強くなっていた。
恐らく自身の持つ資質と現在の環境がマッチした結果だろうな。 」
「 そ、そんな……馬鹿なっ……!!
あり得ない……そんな事っ……! 」
愕然とするレイナだったが、実は驚いたのは私も同じ。
私は現在味方である四人の従業員達を思い浮かべ、ふ~むと考え込んだ。
元傭兵のアントン。
彼に至っては類まれなる戦いの才能はあったとしても、同じ資質を持っている者達の中でも歴代一位と言わざるを得ない実力を持っている。
それから考えるに、その資質と相性が良かったのは ” 穏やかな感情 ” と ” 優しい環境 ” であったのでは?と思われる。
大抵の者達は、周りを蹂躙できる ” 力 ” を手にすれば、どんどんと傲慢で、かつ人に対して冷酷な感情が芽生えてくるものだ。
それに負けずに持って生まれた優しさを失わない事が ” 力 ” の条件だったのかもしれない。
そしてカール様のお屋敷に務めていた侍女のジェーンは、元々大した能力は持っておらず、せいぜいマリナ様のバラ庭園を少しだけ広くする程度であったのに、今では自らの世界まで作り上げてしまう程の能力を手にしてしまった。
のびのびした環境でマイペースに物事を決断していく事。
それがあの独創性と自由な発想を生み出し、あの様な特殊な能力を開花させた様に思える。
そんなジェーン同様……いや、それ以上に驚かされたのは、庭師として雇ったクランだ。
クランは元は平民の一切戦闘経験など皆無の普通の青年であったが、ここに来てからまるで花が一斉に咲くかの様に能力を開花させた。
何故この様な能力を持つ青年が他の戦闘機関に目をつけられなかったのか、不思議な程に……。
そこまで考えて、クランを雇った時に妙な事を言っていた事を思い出した。
” リーフ様にそっくりなお祖父様か、親戚の方はいますか? ”
その質問を不思議に思いながら、私がキッパリとその存在を否定すると、クランは納得しきれない様な表情をする。
そのためその理由を聞いてみると、クランは一瞬話すのを迷いながら答えてくれた。
” 実は僕はこの直前に世界に絶望し、自ら命を絶とうとしました。
でもとても不思議なおじいさんに会ってその絶望は綺麗に消えてしまったんです。
そのおじいさんが凄くリーフ様に似ていて……こんな事ってあるんですね。 ”
最初それを聞いた時は不思議な事だが、リーフ様と同じ様な特徴を持ったご老人はそれなりにいたので、そこまで不思議に思わなかった。
しかし────……
私は顎に手を触れ、眉間に僅かに力を入れる。
クランだけではなかった。
その変わった存在を見たという者達は……。
少々気になった私はレガ―ノの街に限局してだが、その存在について調べてみた。
その結果、全く一貫性がない姿形に行動ではあるが、全員の前に何とも不思議な存在が現れたというのだ。
現実から夢の中まで。
年齢も赤子から御老体の姿まで、しかも人間ですらない時もあるという。
しかし、全員最後はこう言う。
” そういえばリーフ様にとても似ていた ” ────と。
クランはそのリーフ様に似ているご老人に出会い、絶望の中に希望を見た。
そしてその希望がクランの能力を凄まじい勢いで進化させ、周りに抑圧される事で歪んでしまった心に自由を与えたのだ。
だからあのクランや、同じく希望を与えられたジェーンやアントンも、あの姿が周りに影響されない素の性格なのだと思われる。
そこで私はフッと嫌な予感がして、視線を下に下げた。
もしも……
もしもこの三人やレガ―ノの人々がその ” 希望 ” に出会えなかったら────?
そうしたら一体どんな成長を遂げたのだろうと。
自分を受け入れてくれなかった世界に対してどんな存在になっていたのだろうか?
我が最愛の娘の叫びに少々頭が痛くなり、私は思わずこめかみを揉み込んだ。
娘のイザベルは未だにレオン君から専属護衛の座を奪われた事に怒りを感じていて、修行の際はこれが最大のモチベーションとなっている様だ。
ちなみに屋敷でも、レオン君に何度もちょっかいを出しては相手にもされずに完敗している。
「 ………。 」
とりあえずはその逞しさを喜ぼう。
そう考えていると、レイナはワナワナと震えだし、ビシッ!!と宙に浮かぶスクリーン達を指した。
「 な、な、なぁぁぁぁ────っ!!!??
なんなのよっ!!あいつらはっ!!!?? 」
続くレイナの絶叫に片耳を塞ぎながら、私は、はぁ……と大きなため息をつく。
「 だから言っただろう?
そう上手くはいかないぞ────と。 」
「 なっ……は……はぁぁぁぁぁぁ????
だ、だってっ!!あの強さは……??
アンタの娘だけなはずでしょ!!?まともに戦えるのはっ!!
それだって守るだけの守衛師のはずなのに……そもそも他は非戦闘員なはずじゃない!!
なんでたかが一般の従業員達があんな強力なスキルを使えるの……?! 」
目を見開いて信じられない様子のレイナに、肩を竦めてみせた。
「 あぁ、アントンは元Sランク傭兵だぞ。
大方現職についている者達しかマークしてなかった様だな。
全く……表面でしか人の価値を理解できぬカール様らしい。
それと侍女のジェーンと庭師のクランは……まぁ、いつの間にか強くなっていた。
恐らく自身の持つ資質と現在の環境がマッチした結果だろうな。 」
「 そ、そんな……馬鹿なっ……!!
あり得ない……そんな事っ……! 」
愕然とするレイナだったが、実は驚いたのは私も同じ。
私は現在味方である四人の従業員達を思い浮かべ、ふ~むと考え込んだ。
元傭兵のアントン。
彼に至っては類まれなる戦いの才能はあったとしても、同じ資質を持っている者達の中でも歴代一位と言わざるを得ない実力を持っている。
それから考えるに、その資質と相性が良かったのは ” 穏やかな感情 ” と ” 優しい環境 ” であったのでは?と思われる。
大抵の者達は、周りを蹂躙できる ” 力 ” を手にすれば、どんどんと傲慢で、かつ人に対して冷酷な感情が芽生えてくるものだ。
それに負けずに持って生まれた優しさを失わない事が ” 力 ” の条件だったのかもしれない。
そしてカール様のお屋敷に務めていた侍女のジェーンは、元々大した能力は持っておらず、せいぜいマリナ様のバラ庭園を少しだけ広くする程度であったのに、今では自らの世界まで作り上げてしまう程の能力を手にしてしまった。
のびのびした環境でマイペースに物事を決断していく事。
それがあの独創性と自由な発想を生み出し、あの様な特殊な能力を開花させた様に思える。
そんなジェーン同様……いや、それ以上に驚かされたのは、庭師として雇ったクランだ。
クランは元は平民の一切戦闘経験など皆無の普通の青年であったが、ここに来てからまるで花が一斉に咲くかの様に能力を開花させた。
何故この様な能力を持つ青年が他の戦闘機関に目をつけられなかったのか、不思議な程に……。
そこまで考えて、クランを雇った時に妙な事を言っていた事を思い出した。
” リーフ様にそっくりなお祖父様か、親戚の方はいますか? ”
その質問を不思議に思いながら、私がキッパリとその存在を否定すると、クランは納得しきれない様な表情をする。
そのためその理由を聞いてみると、クランは一瞬話すのを迷いながら答えてくれた。
” 実は僕はこの直前に世界に絶望し、自ら命を絶とうとしました。
でもとても不思議なおじいさんに会ってその絶望は綺麗に消えてしまったんです。
そのおじいさんが凄くリーフ様に似ていて……こんな事ってあるんですね。 ”
最初それを聞いた時は不思議な事だが、リーフ様と同じ様な特徴を持ったご老人はそれなりにいたので、そこまで不思議に思わなかった。
しかし────……
私は顎に手を触れ、眉間に僅かに力を入れる。
クランだけではなかった。
その変わった存在を見たという者達は……。
少々気になった私はレガ―ノの街に限局してだが、その存在について調べてみた。
その結果、全く一貫性がない姿形に行動ではあるが、全員の前に何とも不思議な存在が現れたというのだ。
現実から夢の中まで。
年齢も赤子から御老体の姿まで、しかも人間ですらない時もあるという。
しかし、全員最後はこう言う。
” そういえばリーフ様にとても似ていた ” ────と。
クランはそのリーフ様に似ているご老人に出会い、絶望の中に希望を見た。
そしてその希望がクランの能力を凄まじい勢いで進化させ、周りに抑圧される事で歪んでしまった心に自由を与えたのだ。
だからあのクランや、同じく希望を与えられたジェーンやアントンも、あの姿が周りに影響されない素の性格なのだと思われる。
そこで私はフッと嫌な予感がして、視線を下に下げた。
もしも……
もしもこの三人やレガ―ノの人々がその ” 希望 ” に出会えなかったら────?
そうしたら一体どんな成長を遂げたのだろうと。
自分を受け入れてくれなかった世界に対してどんな存在になっていたのだろうか?
269
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる
路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか?
いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ?
2025年10月に全面改稿を行ないました。
2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。
2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。
2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。
2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます
日色
BL
「ぼく、あくやくれいそくだ」弟の誕生と同時に前世を思い出した七海は、悪役令息キルナ=フェルライトに転生していた。闇と水という典型的な悪役属性な上、肝心の魔力はほぼゼロに近い。雑魚キャラで死亡フラグ立ちまくりの中、なぜか第一王子に溺愛され!?
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる