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第三十一章
1037 戦え
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( ニコラ )
結局その後、カールは無罪になった。
────と言っても、そもそも如何に親殺しとはいえ神の使いとされている年齢の少年を裁くことは誰にもできないのだが……。
更にカールはそうして無罪になっただけではなく ” 自身の母親に手を掛けてまで父と兄を守った英雄 ” としてその地位を確かなモノにしてしまう。
私はそんなカールを尻目に、あの時顔を引きつらせていた侍女たちと内密にコンタクトをとった。
” 君たちは何を見た? ”
そう問いかけたが、結果的に誰一人口を割らない。
それもそのはず、彼女たちの実家は貴族とはいえ貧しく、スザリーヌの実家から多額の支度金が支払われていたからだ。
家族のために死んでも口を割ることはしないだろう。
結局その後、スザリーヌの実家は王妃殺害の容疑を掛けられ、あっという間に関係者全員が処刑される事になったが、まだそれに協力し隠れてしまった他の貴族たちがいるはず。
彼女達が何かを喋れば、その貴族達の手によって家族全員が口封じとして殺される可能性もあった。
それに仮にカールが私の想像通りの人物であったなら、他でもないカールの手で彼女たちも……。
その可能性に辿り着いた私は、病気の幼い子供や年老いた両親がいる侍女たちに、それ以上踏み込んで真実を暴く事はできなかった。
それからというものの、予定通り王都に残る事になったカールは、その美しい外見と悪魔の様な知恵、人の心理を突く巧みな話術で徐々に自身の周りを固めていく。
カールは手始めに、平和で利益の少ないこの国政に目をつけ、野心に溢れ、国のやり方に不満を持った貴族達に目をつけた。
そんな貴族達の行動は大胆で、自分たちに都合のいい ” 身分を尊重すべき ” という価値観は凄まじい速さで広がっていく。
” カール様こそ真の王に相応しいのではないか? ”
そんな意見も出てくるくらい味方が増えると、カールはそれに乗りかかる────と思いきや、それには決して頷かない。
「 僕には上に立つ才能はありません。
兄のニコラこそ、王としてこの国を治めるべきだと考えております。
将来は微力ながら兄を支える存在になりたいです。 」
そんないじらしい主張も周りからすれば非常に好感で、アルバード王国の歴史上、私とカール程上手くいっている兄弟はいないだろうとまで言われていたが……私にはその魂胆が分かっていた。
< 博愛者の資質 > ( 先天スキル )
< 心 ” 音 ” >
人の持つ心の ” 音 ” が聞こえる特殊先天スキル
その ” 声 ” は人の隠している本音を語る
その精度は人の心と接した経験値によってUPしていく
王とはいわば盾の様な存在だ。
不祥事や人々の不満や怒りを全て受けなければならず、周りの目が多すぎて好きに動く事ができない。
その点二番手になれば、自分はそんな盾に守ってもらいながら安全な場所で最大限に利益を手にする事ができる。
そう理解していたカールは早々に王位継承権を破棄し ” 公爵 ” という貴族の中で頂点となる地位を手にいれてしまったのだ。
鮮やかな手腕で周りを上手く動かし、自分の要塞とも言える城を築き上げてしまったカール。
その恐ろしさをじわじわと感じていたが、表舞台に自らが出てこないカールを排除する事は非常に難しく、今はまだ機を見て黙るしか選択肢がない。
そんな中、過労が祟ったのか、父が倒れ病に伏せる様になった。
そして────
” ニコラを呼べ ”
父の代理として忙しく動き回っていた私は、父のその言葉で ” 最後 ” を悟る。
そのため急いで父の元へ向かうと、もう幾ばくも時間は残されていないという中、父は母レベッカと私との思い出を語った。
心を熱くしながらそれを聞き、最後は「 国は任されましたのでゆっくりお休み下さい。 」と父が安心していける様に言葉を贈る。
すると父はニコッと笑い「 任せた。 」と言い、心から愛していた母の元にやっと行けると喜んだ────が……
最後は私に真剣な眼差しを向けてこう言った。
・・
「 アレには気をつけろ。決して心を許すな。
────戦え。 」
────と。
その直後、父はゆっくりと目を閉じ、静かに亡くなった。
そうして父が亡き後、私は王座に座る事になり、同時に以前より婚約していた侯爵家の娘< リンディア >と正式に婚姻を結ぶ。
彼女は私同様平和を愛する中立派であり、政略結婚ではあったが私達は同志としても夫婦としてもお互い必要とする存在へとなっていった。
” このまま平和な国を一緒に作っていこう ”
そう決めて、二人で手を取り合う。
カールを崇拝する様に固まる貴族達は非常に厄介ではあるが、この頃はまだ過激な行動に出る者達は少なく平和を望む者達が多かったため、特に問題は起きていなかった。
しかし────……
第一子であるエドワードが生まれてからどんどんと雲行きが怪しくなっていく。
エドワードは生まれてから直ぐに気性が荒く、周りが手を焼く様な子供であった。
子供は生まれ落ちた瞬間より ” 個性 ” といえる気質を持ち、その後は周りの環境によってそれを変化させていくもの。
そう考えていた私はエドワードに対し最大限の愛情を持って接してきたつもりだ。
エドワードには他者を思いやる事のできる心を持ってほしかった。
それは時に残酷な選択を選ばなければならない王には必要な事だと思っていたから。
しかしそれも中々上手くはいかずに、人に対し傲慢な態度を取り続けるエドワードに試行錯誤の毎日を送っている中、生まれたのが第二子アーサーであった。
結局その後、カールは無罪になった。
────と言っても、そもそも如何に親殺しとはいえ神の使いとされている年齢の少年を裁くことは誰にもできないのだが……。
更にカールはそうして無罪になっただけではなく ” 自身の母親に手を掛けてまで父と兄を守った英雄 ” としてその地位を確かなモノにしてしまう。
私はそんなカールを尻目に、あの時顔を引きつらせていた侍女たちと内密にコンタクトをとった。
” 君たちは何を見た? ”
そう問いかけたが、結果的に誰一人口を割らない。
それもそのはず、彼女たちの実家は貴族とはいえ貧しく、スザリーヌの実家から多額の支度金が支払われていたからだ。
家族のために死んでも口を割ることはしないだろう。
結局その後、スザリーヌの実家は王妃殺害の容疑を掛けられ、あっという間に関係者全員が処刑される事になったが、まだそれに協力し隠れてしまった他の貴族たちがいるはず。
彼女達が何かを喋れば、その貴族達の手によって家族全員が口封じとして殺される可能性もあった。
それに仮にカールが私の想像通りの人物であったなら、他でもないカールの手で彼女たちも……。
その可能性に辿り着いた私は、病気の幼い子供や年老いた両親がいる侍女たちに、それ以上踏み込んで真実を暴く事はできなかった。
それからというものの、予定通り王都に残る事になったカールは、その美しい外見と悪魔の様な知恵、人の心理を突く巧みな話術で徐々に自身の周りを固めていく。
カールは手始めに、平和で利益の少ないこの国政に目をつけ、野心に溢れ、国のやり方に不満を持った貴族達に目をつけた。
そんな貴族達の行動は大胆で、自分たちに都合のいい ” 身分を尊重すべき ” という価値観は凄まじい速さで広がっていく。
” カール様こそ真の王に相応しいのではないか? ”
そんな意見も出てくるくらい味方が増えると、カールはそれに乗りかかる────と思いきや、それには決して頷かない。
「 僕には上に立つ才能はありません。
兄のニコラこそ、王としてこの国を治めるべきだと考えております。
将来は微力ながら兄を支える存在になりたいです。 」
そんないじらしい主張も周りからすれば非常に好感で、アルバード王国の歴史上、私とカール程上手くいっている兄弟はいないだろうとまで言われていたが……私にはその魂胆が分かっていた。
< 博愛者の資質 > ( 先天スキル )
< 心 ” 音 ” >
人の持つ心の ” 音 ” が聞こえる特殊先天スキル
その ” 声 ” は人の隠している本音を語る
その精度は人の心と接した経験値によってUPしていく
王とはいわば盾の様な存在だ。
不祥事や人々の不満や怒りを全て受けなければならず、周りの目が多すぎて好きに動く事ができない。
その点二番手になれば、自分はそんな盾に守ってもらいながら安全な場所で最大限に利益を手にする事ができる。
そう理解していたカールは早々に王位継承権を破棄し ” 公爵 ” という貴族の中で頂点となる地位を手にいれてしまったのだ。
鮮やかな手腕で周りを上手く動かし、自分の要塞とも言える城を築き上げてしまったカール。
その恐ろしさをじわじわと感じていたが、表舞台に自らが出てこないカールを排除する事は非常に難しく、今はまだ機を見て黙るしか選択肢がない。
そんな中、過労が祟ったのか、父が倒れ病に伏せる様になった。
そして────
” ニコラを呼べ ”
父の代理として忙しく動き回っていた私は、父のその言葉で ” 最後 ” を悟る。
そのため急いで父の元へ向かうと、もう幾ばくも時間は残されていないという中、父は母レベッカと私との思い出を語った。
心を熱くしながらそれを聞き、最後は「 国は任されましたのでゆっくりお休み下さい。 」と父が安心していける様に言葉を贈る。
すると父はニコッと笑い「 任せた。 」と言い、心から愛していた母の元にやっと行けると喜んだ────が……
最後は私に真剣な眼差しを向けてこう言った。
・・
「 アレには気をつけろ。決して心を許すな。
────戦え。 」
────と。
その直後、父はゆっくりと目を閉じ、静かに亡くなった。
そうして父が亡き後、私は王座に座る事になり、同時に以前より婚約していた侯爵家の娘< リンディア >と正式に婚姻を結ぶ。
彼女は私同様平和を愛する中立派であり、政略結婚ではあったが私達は同志としても夫婦としてもお互い必要とする存在へとなっていった。
” このまま平和な国を一緒に作っていこう ”
そう決めて、二人で手を取り合う。
カールを崇拝する様に固まる貴族達は非常に厄介ではあるが、この頃はまだ過激な行動に出る者達は少なく平和を望む者達が多かったため、特に問題は起きていなかった。
しかし────……
第一子であるエドワードが生まれてからどんどんと雲行きが怪しくなっていく。
エドワードは生まれてから直ぐに気性が荒く、周りが手を焼く様な子供であった。
子供は生まれ落ちた瞬間より ” 個性 ” といえる気質を持ち、その後は周りの環境によってそれを変化させていくもの。
そう考えていた私はエドワードに対し最大限の愛情を持って接してきたつもりだ。
エドワードには他者を思いやる事のできる心を持ってほしかった。
それは時に残酷な選択を選ばなければならない王には必要な事だと思っていたから。
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