【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
1,117 / 1,649
第三十四章

1101 どこへだって……

しおりを挟む
( ルル )

私はまだ恩返ししてない。

母にもリーフさん達にも、優しくしてくれた街の人たちにも……誰にも。


拳をつけたまま下に下に顔を下げると、三つ編みが前に垂れてきてその髪を結んでいる星型のゴムが目に入った。


リーフさんから貰ったヘアゴム……。


それが目に入った私は、手から力を抜いてその星型のゴムを手に取り、今この真っ暗な空の中で戦っているリーフさんを思い浮かべる。


ねぇ、なんでリーフさんはこんな絶望的な状況でも迷いなく戦えるの……?


星型のヘアゴムに向かって問いかけた。


リーフさんはまさに私が憧れる小説の主人公みたいな存在だ。

どんな困難にも負けずにただまっすぐ、前へ前へと進み続ける……直ぐに怖くて止まっちゃう私とは真逆の存在。


暗い気持ちが湧き上がり、思わず顔を引きつらせていると、突然母が「 ルル。ちょっとレモン茶を入れておくれ。 」と言ってきた。


「 ────えっ?……う、うん……。 」


ハッ!と我に帰った私が直ぐにレモン茶を入れて母に差し出すと、母はそれを一気に飲み干す。


「 スタミナ回復……精神鎮静効果……うん、我ながらいい出来だ。

今回の事で良い宣伝もできたから今後、お店はもっともっと大繁盛するね。 」


「 うん……。 」


なんで急にそんな話を……?

不思議に思いながら、母が渡してくれた空のコップを受け取ると、母はニヤッと笑った。


「 お店が忙しくなったら、益々ルルには働いてもらわないとね。

あんたがいないとお店が回らないんだからこれからもよろしく頼むよ。


────だからどんなに飛び出した先に絶望があろうが失敗しようが、誰もがあんたを責めようが、ここはいつまでもルルの居場所だ。

どんな選択肢を選ぼうが、私は親として全てを受け入れる。

だから心の声のまま、好きに動きな。 」


「 ────! 」


声もでない私を見てもう一度笑った母は、そのまま頭の後ろで腕を組みながら「 さ~て!また新しいお茶を作ろうかね~♬ 」などとご機嫌で水のタンクを覗き込む。


きっと母は、私が全て見捨てて一人だけ逃げちゃってもそれを認めて受け入れてくれるだろう。

そんな母の愛の深さに改めて自分という存在の重さに気付いた。


しっかりと大地に足をつけた自分という人間がこの世界に存在している。

それを嫌という程自覚させてくれる母の愛。


そんな確固たる居場所の中にいたからこそ、私は存分に迷う事ができたのだ。

沢山悩み、答えを探し続けるための大事な場所。

大事な母が作ってくれた世界でたった一つのこの場所で、私は安心してどこへだって進んでもいいんだ。


失敗したって誰も彼も存在を否定されて拒絶されたって……いつでもここはあるから。


大丈夫。



────ドンッ!!!!


私がそれを理解した、その瞬間。

突然大きな爆発音がやや離れた場所から聞こえ、沢山の悲鳴が上がった。


一体何が……!?

あの爆発は……また街の方から……??


街の外ではなくまた中である事に不安と恐怖を感じていると、突然一人の女性が大声で叫ぶ。


「 !!見たことがない変なモンスター達が街中に急に出現したわ!!

しかも……そのウチの2体はこの教会の近くよ!! 」


恐らく遠視系のスキルを持っているらしいその女性は、ガタガタと震える身体を抱きしめながらギュッと目を瞑った。

見たことのないモンスター??

一体どんなモンスターなのかと、恐怖がどんどんと広がっていく中、更に一人の準成人になりたてくらいの少女がピッ!と教会の正門の方へ指を差す。


「 あっちで魔力が大きい人がずっと一人で守ってくれてる。

さっきもう一人魔力が低い人が合流して戦っているみたいだけど……その先に現れたモンスターみたいな奴、凄く強いみたい。

気持ち悪い魔力が街中に漂っていて気持ち悪い。

ここを守ってくれている二人、多分死んじゃうよ……。

他にも沢山モンスターいるもん……。 」


その少女はどうやら魔力感知に優れたスキルを持っている様で、それによりモンスター達の強さや位置を正確に把握しているらしかった。

その少女いわくその突如現れたモンスター達は今まで感知したことがない程、ドロドロして強い反応を示しているという。

現在出現しているモンスター達の中にはAランクモンスター達も多くいる事から、恐らくは────


Sランクモンスターだ……。

人の手に余る程強大な力をもった未知のモンスター達!


それに気付いた街の人たちは全員が押し黙り、その場は恐ろしい程静まり帰った。


Aランク一匹だって本来は何個も街が全滅させられる程の強さを持っているのに、それより上の強さを持つSランクが数体……絶望的だと誰もが思った瞬間────


「 もうかんべんなら────ん!!! 」


────ダンッ!!という大きな足を踏み鳴らす音と共に上がった怒号に、私達はその声がした方へ視線を向ける。

しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

無能と呼ばれた婚約者は王を完成させる〜替え玉婚約者のはずが、強すぎる王太子に手放してもらえません〜

統子
BL
兄の身代わりとして王太子の婚約者になった伯爵家次男リュシー。 嘘の名を名乗ったはずが、冷静で誠実な王太子リオンは彼を「力の装置」としてではなく、対等な伴侶として扱おうとする。 本物になりたいと願う替え玉と、完成された王太子の静謐な王宮ロマンス。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

処理中です...