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第三十四章
1107 夢の形
しおりを挟む( マリン )
ルルには戦闘の才能はあっても心の適性はゼロ。
つまり無理に戦闘職につかせれば100%死ぬ。
結局人間なんて、自分の才能よりも心の適正の方が遥かに大事で、それがなければ能力を発揮できる事はない。
そしてそんな状態で戦えば、そのままそれは ” 死 ” に直結する。
しかも人を ” 躾ける ” などとほざく輩がいる所になど任せれば、あっという間に消費されるだけされて最後はポイ捨てされる事だろう。
私の宝物。
大事な大事な娘をそんな事に使われてたまるか!!
カッカしながら、私は部屋の荷物を少しづつ整理し始め、後は職場をやめてこの街から出ていこう!
そう考えながら朝出勤すると、また恒例となりつつあるオーナーの ” 娘を国に貢献~…… ” と始まった。
” はぁ……こんな薄情な人間の作る料理なんて、そもそも人様に出して良いのだろうかと思ってしまうよ。
これはお店のために、そんな冷たい人間はやめてもらうしか…… ”
” そうかい、ならちょうど良かった。
今日で辞めさせてもらうよ。あばよ、クソ野郎。 ”
そのまま店の制服を叩きつけて帰ろうとする私を、オーナーは ” えっ!!? ” と目を剥き、止めようとしてきたが、私は心底嫌そうにその手を払ってその場を去った。
そしてルルをつれて朝一で街を出る。
悪い街ではなかったが人自体が少なく、そのせいで固まってしまった価値観に反発できる者達は少なかった。
だから今度はもっと人が多い王都に近い所へ。
きっと人が沢山いれば、沢山の価値観を持った者達がいるはず。
その中ならルルの資質ではなくルル自身を見てくれる人がいるかもしれない。
そんな希望を胸に、ワクワクしながら馬車に乗っていたのだが───反対にルルはどんどんと暗く沈んでいった。
「 お母さん、ごめんなさい……。 」
とうとう謝罪までしてきたので、困ってしまった私はこっそりため息をつく。
ルルは優しくて……それでいて鋭い子だ。
だから自分のせいであの街から出ていくのだと、感づいていた。
気に病む事はなんにもないっていうのに……困ったねぇ。
ズ~ンッと暗くなってしまったルルを見て、ポリポリと頭を掻く。
私にとって ” 幸せ ” とは、地位やお金で手に入るモノではなく、ルルがいなければ決して手に入らないモノだ。
これは親になって初めて知った事。
かつて子供の時に思い描いた夢。
全てを掛けてでも叶えたかった夢は、子供が生まれて姿形をあっさり変える。
自分の夢の中心にはルルがいて、自分の力を試すのも出世して認められたいという気持ちも、自分がしたいというよりは、子供に伝えたい、残したいという気持ちへと変化していった。
それが不思議な事に本当に ” 幸せ ” で、立ち止まりそうになっても背中を押し続ける力となって、私は今も歩き続けることができている。
自分という存在がいつか消え去ったとしても、私の全てを引き継いで未来を歩んでくれる存在がいる事。
それが最大のモチベーションになっているのだから、つまりは私にとってルルが自分の夢そのものになる様なものだ。
自分の母もきっと同じだったに違いない。
母も自身の全ての知識、技術、思い出を私に託して、それはそれは幸せそうな笑みを浮かべて旅立っていったから。
勿論人によってはそれは ” 正しく ” ないのかもしれない。
” 子供や後世の者達のために夢を犠牲にするなんておかしい ”
” そんなあっさり形を変えてしまう程度の小さな夢だったんだろう?つまんない人生! ”
そう言ってくるやつらだっていて、でもそれはそれで悪くはない。
要は正しい、正しくないという話ではなく、私がそう望み、そうなったというだけの話だ。
だから私のかつての夢。
” 大きい店でお店を任されてみたい ”
” 自分の考えたメニューを出して、自身の腕前を確かめたい ”
これはルルが幸せな事が大前提にあるって事。
どっちかしか持っていけないなら私は間違いなく、ルルを選ぶ。
それを遠回しに伝えてやると、ルルは泣いてしまったので、そのまま私は馬車に揺られながら、外の景色に目を向け、穏やかな笑みを浮かべた。
それからルルと私は長い事馬車に揺られ、流れついた街は【 グリモア 】
そこで初めて夫が残してくれたお金に手をつけ、小さなお店【 森の恵み 】を開く。
ここでは誰もルルの資質の事は知らないので、ここで健やかに生きていってほしい、そう願い必死に働いた。
そんな願い通りにルルは目に見えて明るくなっていったが、やはり根本的な悩みは常に心の奥にあるらしく突発的に暗くなる事はあったが、ゆっくりと自分の好きな事ややりたい事を考えている様だ。
う~ん……。
う~ん…………。
そんな頭を抱えて悩む姿もみられる様になってきた。
そんな姿に喜びを、そしてほんの少しだけ寂しさを感じていた頃────命を助けられたリーフとレオンを店に連れてきた時から、その様子が激変する。
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