【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第三十四章

1106 恵まれた才能

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( マリン )

自身の作業に没頭し始めた我が子ルルを横目に、私は作っておいたアイスティーをその場の全員に配って歩く。

これは同じ統率系資質を持った今は亡き夫のために作ったブレンドティーで、戦場へ行く際は必ず飲んでいたお愛用のティーであった。


まさかこれを娘が飲む事になるとはねぇ?


思ってもみなかった出来事に思わずクスッと笑うと、ティーを配るのを手伝ってくれたニーナが話しかけてくる。


「 お疲れ様、マリン。

貴方ずっと動きっぱなしだけど大丈夫なの?

疲れたら休みなさいよ。 」


「 何ってんだい。

娘が頑張ろうって時に親の私が休んでいられないよ。

ニーナこそ走り回っているけど休まなくていいのかい? 」


お互い顔を見合わせフッ!と小さく吹き出した後は、必死に動こうとしているルルへ視線を戻した。

ルルは今、生まれて初めて自分の力を人のために使おうとしている。

そう思わせてくれた環境に親としてただ感謝しよう。


そう思っていると───……


「 ───いいのかい? 」


困った顔でニーナがそう尋ねてきたので、私はニヤリと笑った。



勇敢な傭兵であった夫は正義感に溢れた非常に気持ちの良い男であった。

【 統率士 】という戦闘職としては天職であった才能を生まれながらに持ち、それを最大限に使って戦い続け……最後は勝てる見込みがゼロの戦場へ身を投じて敵の真っ只中に突っ込み派手に散ったらしい。


その訃報を聞いた時は、悲しくて悲しくて泣き崩れたが、同時にあいつらしい最後だったと誇らしい気持ちにもなった。


自分の信念を最後まで貫き通した男。

そんな最高にいい男と過ごせた日々に感謝を。


そして、私は愛した男が残していってくれたモノ──── ” 喜び ” も ” 悲しみ ” も……その全てを抱えて残りの人生を生きていく。

それが私なりの愛の形。


そしてそんな男が残してくれたモノの中で最も大事なモノが娘のルルだ。

恐らく私の亡き母に中身は全て似てしまった様で、ルルは夫にも私にも似ずに虫一つ殺せぬ優しい娘に育ってくれた。

だからその授かる資質も祖母と私同様の、調理に関する生産系資質だろうと考えていて、頭の中では、将来は ” 二人でお店なんかも開けたら楽しそうだ ” などと考えていたの────だが………。


ルルが授かった資質は夫と同じ【 統率士 】


戦闘職を目指す者達なら喉から手が出るような能力を持ち、たった一人パーティーにいるだけで、その能力は格段と上がる非常に稀有な上級資質であった。


それから私とルルの生活は激変し、毎日毎日家で、道端で、職場で────……とにかくひっきりなしに声をかけられる様になる。


” ぜひ娘さんをウチのパーティーへいただけませんか? ”


” 取り分は全体で儲けた分の三分の一でどうでしょう?

母一人の生活なら嬉しいのでは? ”


そんな娘をモノとしか思っていない言い方も多く、勿論直ぐに追い払ったが、とにかくしつこい。

その中でも店の出資者であるオーナーは特に酷く、断っても断っても毎日職場で大声で怒鳴り散らしてきた。


” 娘を戦わせろ!!親なら子の才能を伸ばしてやるのが当然の義務だろう!

今からでも直ぐに戦闘職の仕事場に娘を預けて、その才能を育ててもらえ! ”


” 誰もが羨む地位につけるチャンスなのに、お前も娘もずいぶんと愚かだな。

こんな料理しか能のない母の元に生まれてかわいそうに。 ”


” 国に貢献できる能力があるのに使わないなんて、国を想う気持ちはお前たちにはないのか!? ”


ガーガーと叫ぶ声は完全に無視して仕事をしていたが、後に分かった事だがこのオーナーは、それぞれ沢山の戦闘職の現場からルルを説得して引き渡すと約束し、お金を貰っていたそうだ。

だから必死だったのだと思われるが、私は絶対に頷かない。


誰に言われようが、娘には自分で選んだ道を生きて欲しいから。

そう願う私の心を勿論殆どの人達が分かってくれたが、そうではない人達もそれなりにいて、そういった者達は私を優しく諭そうとしてくる。


” 娘がエリート兵士なんて親として誇らしいじゃないか。 ”

” もう働かなくてよくなるわよ~。

娘がこれからは稼いでくれるんだから、貴方は幸運だわ。羨ましい。 ”


全くのお門違いの余計な言葉の数々に頭にきて、頭から泥水をぶっかけてやればほぼ全員口を閉ざす様になったが……それでも諦めてくれない奴らもいた。


それだけ上級資質、しかも統率系という資質は強力な資質で、基本はその血筋を必死に残してきた貴族にしか恵まれない資質だったからだろう。

だから戦闘職についている無名のパーティーなどは必死だ。


しかし、理由はそれだけではない。


貴族ではなく平民。

更に大人しくてまだ幼い女の子。

それも彼らが必死になる大きな理由の一つで、偉そうで権力のある貴族相手では自分の都合の良いように使えないが、ルルなら都合よく使っても何も言わないだろうと分かっているのだ。


中には ” 今から躾けてやればもっと使いやすくなる。 ” などと言うクソみたいなヤツ等もいた。

それに不快感を感じている者達が大半であっただろうが、とにかくそういった悪い奴らというのは目立つし行動も派手なため、止める事は難しい。

とうとうそういった輩の行動や言動によってルルは気に病んでしまったらしく、自ら ” 戦闘職に挑戦してみたい ” と言い出してしまった。

そのため、よくお店にくる人格者の守備隊員に頼み、一度ルルを守備隊訓練所へと見学に向かわせてみる事に……。


結果は予想通り。


ワーワーと大泣きしながら守備隊員におんぶされて帰ってきたルルを見て────確信した。

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