【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第三十五章

1123 欲しかったな

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( マービン )


怖がられるだろうか?

もしかすると気持ち悪い!と罵られるかもしれないし、それとも中身が一つもないなんて!と笑われる可能性もある。


どちらにせよ、そうなったらもう抱っこして揺すっては貰えないだろう。


それが一番悲しくて、ズ────ン……と落ち込んでいると、そのじいさんはニコニコと笑いながら言った。


「 本当だ!空っぽだね。

これから一体何が入っていくんだろう?


何だかワクワクするね。 」


あっけらかんと言われた言葉に思わずカッ!となり「 簡単に言うなっ!! 」と怒鳴り散らす。

すると今まで目を逸らしてきた事、誰にも言えなかった事、その全てをぶち撒けた。


「 母も父も俺を便利な道具としか思ってないっ!!


……だから何もくれなかった。

愛された事なんて…… ” 見て ” 貰えた事だって一度も……。


飛竜達だって皆俺にそっぽを向くし、周りに群がってくる奴らだって、皆……俺といれば得だから寄ってくるだけだ。

誰も俺に何もくれない。

だから俺は……空っぽなんだ……。 」


最後の方はほとんど独り言の様に呟く様な声だったが、じいさんは俺の言っている意味を理解しているのかしてないのか……酷くあっさりと「 そっか~。 」と返事を返してくる。



怒った……?

呆れた……?

きっと嫌だと思ってるに違いない。



こんな初めて会う分けのわからない子供に八つ当たりされて嫌じゃないわけがない。

それが分かっていたので、不安でチラッとじいさんを見ると、そこには予想していた様な表情は浮かんでおらず、ニコニコと楽しそうに笑うじいさんの顔があった。


それを見て何だか凄く安心してしまい、タガが外れたかの様に俺は次々と心の中を曝け出す。


「 もうどうしたらいいのか分からないんだ。

だって俺、穴の埋め方なんて知らねぇもん。

誰も教えてくれないし、誰にも聞けない。 」


「 うんうん。 」


「 そもそも皆ズルいじゃないか!!

何の苦労もなく親に愛されて、土台を作って貰ってさ!

その上にい~っぱい自分で好きなモノを、好きなだけ積み重ねる事ができるんだぞ!?

何で俺は貰えないんだ!!

何で俺は ” 見て ” 貰えないんだよ!! 」


キィー!キィー!!と自分勝手に騒ぐ俺を、やはりじいさんはニコニコしながら聞いてくれる。

だから現状の不満をこれでもかとぶつけてやると、そのじいさんは、うんうんと頷きながら言った。


「 そればっかりは ” 運 ” なんだよなぁ~。

結局人は、どうしようもできない ” 運 ” の上、歩いていかないといけないからね。

まぁ、それは人に限らずか。 」


「 運って……まぁ、そりゃ~……一言でいえばそういう事なんだけど……。

俺は運が悪くて空っぽなのか……。 」


理不尽で不平等な ” 運 ” というものに、やや納得いかないという顔をしていると、じいさんはフフ~と楽しそうに笑う。


「 でも、俺は空っぽって凄く好きだけどな。

だってさ、1から自分で好きなモノを好きなだけ創れるじゃないか!


それって凄く自由で楽しい!


そうは思わないかい? 」


「 …………。 」


あまりにポジティブな考え方に呆気に取られていると、じいさんは続けて少しだけ困った顔をして俺に言った。


「 親から貰う土台は、その親が今まで生きてきた歴史、その集合体なんだ。


自分の失敗した経験、嫌だった思い出……それを全て排除した、自分にとっての一番だと思う綺麗で最高の形の土台だね。

それを親は大好きな子供達へ与えようとする。


自分の子は可愛いからね。

自分と同じ思いをさせたくないんだよ。 」


「 …………。 」


自分には与えられなかったモノを ” 羨ましい ” と感じている俺を見て、やはりじいさんは困った様な顔のまま話を続ける。


「 ……でも、それって同時に、あらゆる経験値と選択する自由を奪うモノでもある。


子供たちが親と同じ様に感じるとは限らないし、与えられた土台の上だと自分が思い描いたモノが凄く建てづらい事もあるんだ。

それこそ元々ある土台を全て壊さないと何も建てられない子もいる。


そこが親と子の難しい所なんじゃないかなと俺は思っているよ。


これもきっと ” 運 ” なんだろうね。 」


しみじみと語られる言葉は、俺の中の視界を大きく広げてくれて……すぐそこにあった地獄の様な元楽園が少し遠のいた気がした。


「 ……でも欲しかったな……。 」


ボソッと呟いた力ない言葉に対し、じいさんはキョトンとした顔で俺を見つめた後、嬉しそうに笑う。


「 うん、俺も! 」


あぁ……このじいさんも俺と同じ、空っぽだったのかな……?


そう思った瞬間、俺はリーフ様の事を思い出した。


リーフ様は俺とは比較できない程の孤独の中で生きてきた人だ。


生まれて直ぐに両親に捨てられ、王都では自分以外で完成した ” 家族 ” がいて……俺だったらきっと憎むと思う。


両親を、そして自分を弾くこの世界全てを。


でもリーフ様の中身はパンパンに詰まっていて、【 空っぽの王様 】とは程遠い。

そして目の前にいるこのじいさんも……。

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