1,156 / 1,649
第三十六章
1140 消えるべきだ
しおりを挟む
( マリナ )
もう一度カールと共にハァ……とため息をつき、目の前でなおも言い訳と、今後の我々との関係について話すマリアンヌの父を見て、私達はニッコリと笑う。
元々裕福な男爵ながら、お金の着服、収入の不正改ざん、違法な労働力の斡旋、違法薬草の販売などなどを行って家を更に大きくしてきたこの男。
そろそろ捨て時ね。
そう考えた私とカールは、直ぐに今起きている ” まずい事 ” の罪もついでに被せて、その男を切り捨てれば、すぐに家族もろとも犯罪奴隷にその身を堕としていった。
ギャーギャーと泣きながら己の境遇を嘆いていたが、なぜ不満を持つのか分からない。
だって、身分を同じにして尊き親と子の絆を繋いでやったのだから、感謝すべき事なのに。
結局その後、何の情報も掴めないまま、アレはライトノア学院に入学してしまい、まんまと ” 奴隷に負けた公爵家 ” という最悪の事実を国中に見せつけた。
身を焼き尽くす程の酷い屈辱と怒り、到底耐える事のできない憎しみ……。
私達メルンブルク家は、毎日毎日まるで地獄にいるかの様な苦しみに耐えながら、日々を過ごさなければならなくなったのだ。
悪い意味での噂の中心になってしまったメルンブルク家。
そしてその最大の被害者になってしまったのは、私の可愛い可愛い子供達であるグリードとシャルロッテであった。
” 病弱とお聞きしておりましたが、次男のリーフ様とはいつ頃お会いできるのでしょうか? ”
” 何でもあのライトノア学院で歴代最高点を上回る点数を取ったとか……。
素晴らしく優秀な御子息で、ご両親も鼻が高いでしょうな。 ”
” メルンブルク家の中で一番の優秀な子供は、断トツでリーフ様だろう。 ”
美しさを一切持たない、無価値なゴミが自分たちより上。
その事は、二人の心を深く傷つけ、悲しみのドン底に落とした。
当たり前だ。
それは今までの価値観、つまりは自分が歩んできたキラキラと光り輝く人生の全てを否定されたのだから。
食事も満足に取れなくなる程憔悴しきっている二人を見て、私とカールは頭を抱えて嘆き悲しんだが、自分たちも全く同じ状態になっていたため、なんと言っていいのかすら分からなかった。
” 美しさこそ、この世で最強の武器である ”
それこそ、この世界の絶対的なルールで、そのルールの元、メルンブルク家は存在している。
だから、世界を守るためにも早く……早く……。
早く世界を壊そうとする、あの邪神の子を滅ぼして!!!
ガクガクと恐怖に怯えながらも、毎日毎日イシュル神に祈り続ける。
” どうか一刻も早く卵が孵化し、あの邪神の子を打ち倒してくれます様に。
どうか世界をお救いください。
イシュル神よ────!! ”
しかし……。
そんな祈りをあざ笑うかの様に、待てども待てども ” 呪災の卵 ” は孵化しない。
予定時期を過ぎても一向に孵化したという知らせは入らず、カールと二人で長い苦しみを味わったのだが……やっと待ちに待った時が来た!!
王都の空中を舞う、白い伝電鳥を窓から見上げながら、私はニヤッと笑う。
そして直ぐに身支度をして王宮へ。
顔には外向き用の悲しげな顔を張り付け、満面の笑みを隠しながら……。
これで全てが上手くいく。
この世をあるべき姿に戻し、使命を果たした我がメルンブルク家は神に最も近い存在に……本当の ” 家族 ” に戻る事ができるのだ。
見えるのは輝かしい未来!!
────────────……のはずだったのに……。
目の前に広がるグシャグシャに壊れてしまった未来は、私に大きなショックを与え、残酷な現実を直視できずに視線は下へ下へと下がっていく。
バタバタと忙しなく走り回る、仲間に入れてやろうとしていた貴族達。
オロオロと動揺を隠せないエドワード派閥の同志達。
そして戦いを宣言したニコラ王と、そんなニコラ王を弾劾するエドワード様とカール。
混乱したその場で、私は何が悪かったのかと必死に考えていた。
アレの入学を許してしまった事?
アレに対して警戒を緩めてしまった事?
暗殺に失敗した事?
レガーノに捨てた事?
つらつらと1つずつ、自分の選んできた選択肢を上げていき……。
────────あぁ……アレが生まれた事が全て駄目だったのだ。
その答えをだした。
禁忌を犯してでも、生まれた瞬間に消しておかなければならなかった。
それが正解だったのに……。
あまりの事に私は扇子の下で乾いた笑いを漏らした。
私達は間違えてしまった。
最も間違えてはいけない選択肢を……自ら選んでしまった!
痛む頭を抱えながら、アレの姿をスクリーン上で捉えボンヤリと見つめる。
黒き禍々しい呪いの蝶に対峙する、醜くみすぼらしい子供。
私にはその子供の方が、呪いの化け物よりもっと恐ろしい存在に見えた。
────ゾッ……。
背筋が凍りつき臆する心に気づくと、次に襲い来るのは激しい怒りの感情と憎しみの感情だ。
この私、マリナは、絶大な美と気品、頭脳と、全てが完璧な貴族女性として生きてきた。
誰も彼もが私を褒め称え、こうして公爵家という地位まで手に入れたのだ。
そんな私に叶わぬ望みなど今までなかった。
だから私があの様な醜いゴミの様な存在に脅かされるなどあってはならない!!
ボンヤリしていた頭は、怒りによって徐々にクリアーとなり、スクリーンの中で戦うアレを睨みつけると、激しい怒りと憎しみの炎がメラメラと燃え上がる。
アレは私の世界のために存在ごと消えるべきだ。
それが正しい世界の姿なのだから。
私は直ぐにカールに近づき、ソっと耳元に顔を寄せた。
もう一度カールと共にハァ……とため息をつき、目の前でなおも言い訳と、今後の我々との関係について話すマリアンヌの父を見て、私達はニッコリと笑う。
元々裕福な男爵ながら、お金の着服、収入の不正改ざん、違法な労働力の斡旋、違法薬草の販売などなどを行って家を更に大きくしてきたこの男。
そろそろ捨て時ね。
そう考えた私とカールは、直ぐに今起きている ” まずい事 ” の罪もついでに被せて、その男を切り捨てれば、すぐに家族もろとも犯罪奴隷にその身を堕としていった。
ギャーギャーと泣きながら己の境遇を嘆いていたが、なぜ不満を持つのか分からない。
だって、身分を同じにして尊き親と子の絆を繋いでやったのだから、感謝すべき事なのに。
結局その後、何の情報も掴めないまま、アレはライトノア学院に入学してしまい、まんまと ” 奴隷に負けた公爵家 ” という最悪の事実を国中に見せつけた。
身を焼き尽くす程の酷い屈辱と怒り、到底耐える事のできない憎しみ……。
私達メルンブルク家は、毎日毎日まるで地獄にいるかの様な苦しみに耐えながら、日々を過ごさなければならなくなったのだ。
悪い意味での噂の中心になってしまったメルンブルク家。
そしてその最大の被害者になってしまったのは、私の可愛い可愛い子供達であるグリードとシャルロッテであった。
” 病弱とお聞きしておりましたが、次男のリーフ様とはいつ頃お会いできるのでしょうか? ”
” 何でもあのライトノア学院で歴代最高点を上回る点数を取ったとか……。
素晴らしく優秀な御子息で、ご両親も鼻が高いでしょうな。 ”
” メルンブルク家の中で一番の優秀な子供は、断トツでリーフ様だろう。 ”
美しさを一切持たない、無価値なゴミが自分たちより上。
その事は、二人の心を深く傷つけ、悲しみのドン底に落とした。
当たり前だ。
それは今までの価値観、つまりは自分が歩んできたキラキラと光り輝く人生の全てを否定されたのだから。
食事も満足に取れなくなる程憔悴しきっている二人を見て、私とカールは頭を抱えて嘆き悲しんだが、自分たちも全く同じ状態になっていたため、なんと言っていいのかすら分からなかった。
” 美しさこそ、この世で最強の武器である ”
それこそ、この世界の絶対的なルールで、そのルールの元、メルンブルク家は存在している。
だから、世界を守るためにも早く……早く……。
早く世界を壊そうとする、あの邪神の子を滅ぼして!!!
ガクガクと恐怖に怯えながらも、毎日毎日イシュル神に祈り続ける。
” どうか一刻も早く卵が孵化し、あの邪神の子を打ち倒してくれます様に。
どうか世界をお救いください。
イシュル神よ────!! ”
しかし……。
そんな祈りをあざ笑うかの様に、待てども待てども ” 呪災の卵 ” は孵化しない。
予定時期を過ぎても一向に孵化したという知らせは入らず、カールと二人で長い苦しみを味わったのだが……やっと待ちに待った時が来た!!
王都の空中を舞う、白い伝電鳥を窓から見上げながら、私はニヤッと笑う。
そして直ぐに身支度をして王宮へ。
顔には外向き用の悲しげな顔を張り付け、満面の笑みを隠しながら……。
これで全てが上手くいく。
この世をあるべき姿に戻し、使命を果たした我がメルンブルク家は神に最も近い存在に……本当の ” 家族 ” に戻る事ができるのだ。
見えるのは輝かしい未来!!
────────────……のはずだったのに……。
目の前に広がるグシャグシャに壊れてしまった未来は、私に大きなショックを与え、残酷な現実を直視できずに視線は下へ下へと下がっていく。
バタバタと忙しなく走り回る、仲間に入れてやろうとしていた貴族達。
オロオロと動揺を隠せないエドワード派閥の同志達。
そして戦いを宣言したニコラ王と、そんなニコラ王を弾劾するエドワード様とカール。
混乱したその場で、私は何が悪かったのかと必死に考えていた。
アレの入学を許してしまった事?
アレに対して警戒を緩めてしまった事?
暗殺に失敗した事?
レガーノに捨てた事?
つらつらと1つずつ、自分の選んできた選択肢を上げていき……。
────────あぁ……アレが生まれた事が全て駄目だったのだ。
その答えをだした。
禁忌を犯してでも、生まれた瞬間に消しておかなければならなかった。
それが正解だったのに……。
あまりの事に私は扇子の下で乾いた笑いを漏らした。
私達は間違えてしまった。
最も間違えてはいけない選択肢を……自ら選んでしまった!
痛む頭を抱えながら、アレの姿をスクリーン上で捉えボンヤリと見つめる。
黒き禍々しい呪いの蝶に対峙する、醜くみすぼらしい子供。
私にはその子供の方が、呪いの化け物よりもっと恐ろしい存在に見えた。
────ゾッ……。
背筋が凍りつき臆する心に気づくと、次に襲い来るのは激しい怒りの感情と憎しみの感情だ。
この私、マリナは、絶大な美と気品、頭脳と、全てが完璧な貴族女性として生きてきた。
誰も彼もが私を褒め称え、こうして公爵家という地位まで手に入れたのだ。
そんな私に叶わぬ望みなど今までなかった。
だから私があの様な醜いゴミの様な存在に脅かされるなどあってはならない!!
ボンヤリしていた頭は、怒りによって徐々にクリアーとなり、スクリーンの中で戦うアレを睨みつけると、激しい怒りと憎しみの炎がメラメラと燃え上がる。
アレは私の世界のために存在ごと消えるべきだ。
それが正しい世界の姿なのだから。
私は直ぐにカールに近づき、ソっと耳元に顔を寄せた。
152
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる
路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか?
いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ?
2025年10月に全面改稿を行ないました。
2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。
2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。
2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。
2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる