【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第三十六章

1140 消えるべきだ

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( マリナ )

もう一度カールと共にハァ……とため息をつき、目の前でなおも言い訳と、今後の我々との関係について話すマリアンヌの父を見て、私達はニッコリと笑う。

元々裕福な男爵ながら、お金の着服、収入の不正改ざん、違法な労働力の斡旋、違法薬草の販売などなどを行って家を更に大きくしてきたこの男。


そろそろ捨て時ね。


そう考えた私とカールは、直ぐに今起きている ” まずい事 ” の罪もついでに被せて、その男を切り捨てれば、すぐに家族もろとも犯罪奴隷にその身を堕としていった。


ギャーギャーと泣きながら己の境遇を嘆いていたが、なぜ不満を持つのか分からない。


だって、身分を同じにして尊き親と子の絆を繋いでやったのだから、感謝すべき事なのに。


結局その後、何の情報も掴めないまま、アレはライトノア学院に入学してしまい、まんまと ” 奴隷に負けた公爵家 ” という最悪の事実を国中に見せつけた。


身を焼き尽くす程の酷い屈辱と怒り、到底耐える事のできない憎しみ……。

私達メルンブルク家は、毎日毎日まるで地獄にいるかの様な苦しみに耐えながら、日々を過ごさなければならなくなったのだ。


悪い意味での噂の中心になってしまったメルンブルク家。

そしてその最大の被害者になってしまったのは、私の可愛い可愛い子供達であるグリードとシャルロッテであった。


” 病弱とお聞きしておりましたが、次男のリーフ様とはいつ頃お会いできるのでしょうか? ”


” 何でもあのライトノア学院で歴代最高点を上回る点数を取ったとか……。

素晴らしく優秀な御子息で、ご両親も鼻が高いでしょうな。 ”


” メルンブルク家の中で一番の優秀な子供は、断トツでリーフ様だろう。 ”



美しさを一切持たない、無価値なゴミが自分たちより上。


その事は、二人の心を深く傷つけ、悲しみのドン底に落とした。


当たり前だ。

それは今までの価値観、つまりは自分が歩んできたキラキラと光り輝く人生の全てを否定されたのだから。


食事も満足に取れなくなる程憔悴しきっている二人を見て、私とカールは頭を抱えて嘆き悲しんだが、自分たちも全く同じ状態になっていたため、なんと言っていいのかすら分からなかった。


” 美しさこそ、この世で最強の武器である ”

それこそ、この世界の絶対的なルールで、そのルールの元、メルンブルク家は存在している。

だから、世界を守るためにも早く……早く……。


早く世界を壊そうとする、あの邪神の子を滅ぼして!!!


ガクガクと恐怖に怯えながらも、毎日毎日イシュル神に祈り続ける。


” どうか一刻も早く卵が孵化し、あの邪神の子を打ち倒してくれます様に。

どうか世界をお救いください。


イシュル神よ────!! ”



しかし……。

そんな祈りをあざ笑うかの様に、待てども待てども ” 呪災の卵 ” は孵化しない。

予定時期を過ぎても一向に孵化したという知らせは入らず、カールと二人で長い苦しみを味わったのだが……やっと待ちに待った時が来た!!


王都の空中を舞う、白い伝電鳥を窓から見上げながら、私はニヤッと笑う。


そして直ぐに身支度をして王宮へ。


顔には外向き用の悲しげな顔を張り付け、満面の笑みを隠しながら……。



これで全てが上手くいく。

この世をあるべき姿に戻し、使命を果たした我がメルンブルク家は神に最も近い存在に……本当の ” 家族 ” に戻る事ができるのだ。


見えるのは輝かしい未来!!



────────────……のはずだったのに……。



目の前に広がるグシャグシャに壊れてしまった未来は、私に大きなショックを与え、残酷な現実を直視できずに視線は下へ下へと下がっていく。


バタバタと忙しなく走り回る、仲間に入れてやろうとしていた貴族達。

オロオロと動揺を隠せないエドワード派閥の同志達。

そして戦いを宣言したニコラ王と、そんなニコラ王を弾劾するエドワード様とカール。


混乱したその場で、私は何が悪かったのかと必死に考えていた。


アレの入学を許してしまった事?

アレに対して警戒を緩めてしまった事?

暗殺に失敗した事?

レガーノに捨てた事?


つらつらと1つずつ、自分の選んできた選択肢を上げていき……。



────────あぁ……アレが生まれた事が全て駄目だったのだ。


その答えをだした。


禁忌を犯してでも、生まれた瞬間に消しておかなければならなかった。

それが正解だったのに……。


あまりの事に私は扇子の下で乾いた笑いを漏らした。


私達は間違えてしまった。

最も間違えてはいけない選択肢を……自ら選んでしまった!


痛む頭を抱えながら、アレの姿をスクリーン上で捉えボンヤリと見つめる。


黒き禍々しい呪いの蝶に対峙する、醜くみすぼらしい子供。

私にはその子供の方が、呪いの化け物よりもっと恐ろしい存在に見えた。


────ゾッ……。


背筋が凍りつき臆する心に気づくと、次に襲い来るのは激しい怒りの感情と憎しみの感情だ。


この私、マリナは、絶大な美と気品、頭脳と、全てが完璧な貴族女性として生きてきた。

誰も彼もが私を褒め称え、こうして公爵家という地位まで手に入れたのだ。


そんな私に叶わぬ望みなど今までなかった。

だから私があの様な醜いゴミの様な存在に脅かされるなどあってはならない!!


ボンヤリしていた頭は、怒りによって徐々にクリアーとなり、スクリーンの中で戦うアレを睨みつけると、激しい怒りと憎しみの炎がメラメラと燃え上がる。


アレは私の世界のために存在ごと消えるべきだ。

それが正しい世界の姿なのだから。


私は直ぐにカールに近づき、ソっと耳元に顔を寄せた。
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