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第三十八章
1228 猫が来るといいね
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( ベリー )
作者不明の絵本、その最新作にしてその作者の最後の作品であると言われている【 シュペリンの踊り猫 】
可愛いモノを集めている過程でその魅力に取り憑かれ、今では優先的に集めているコレクションの絵本シリーズの一つだ。
「 ────さぁ?何処だろうね?
う~ん……そもそもその猫って ” 希望 ” を現しているって言うし……だとしたら ” どこから ” っていうのもおかしいんじゃない?
だって ” 希望 ” ってどこにでもあって、どこにもないもの。 」
私がクスクス笑いながらそう答えると、キュイちゃんは、あ~……と納得しながらも、何かを思い出した様に語りだした。
「 そうそう、そういえばこの間、お店に獣人の商人さんが来たじゃない?
狐の獣人さん。 」
「 えっ?…………あ~、来てたね。
その人がどうしたの? 」
確かキュイちゃんが凄く楽しそうに話していたから記憶に引っかかり、こうして覚えていたのだ。
でもそれがどうしたのかと興味津々で話の続きを聞く。
「 その人が凄く気になる事を言っていたのよ。
その人はエルフの国にも商品を卸しに行く事が度々あるらしくて、そこで王宮に勤めている騎士と話す機会があったらしいの。
そこでたまたま聞いた話なんだけど──── ” シュペリン ” って、古代エルフ話の言葉で ” 異なる世界 ” って意味なんだって。 」
「 異なる世界?? 」
これまた変わった言葉にワクワクと胸が踊る。
” 異なる世界 ”
それは何を意味しているのだろうか?
もしかしてどこか他の国ではなく、天国などの空想上の世界を意味しているのか、それとも別の表現として、その言葉を使ったのか……なんにせよ、非常に興味がわく事実に悶々と考えていると、キュイちゃんは更に面白い話をする。
「 それにね、その王宮騎士さんいわく、” 世に出ている絵本と原作の絵本の絵が違うらしい ” っていう噂があるんだって。
凄くミステリアスだよね。
それが本当なら、他の絵本シリーズも全部絵が違うのかな?
でも……それって何のためにそんな事をしたんだろう?? 」
キュイちゃんは言い終わった後、う~ん……と渋い顔で、その事について考え始めた。
噂が仮に本当だとしたら、確かに何故わざわざ絵を変えたのか?
とても不思議な話だ。
” 異世界から突如現れた希望 ”
それが絶望にまみれた世界を救う……いや、全員を踊らせて国を救わせるのだ。
その点もおかしいと感じて、改めてその謎について考えた。
” 一人の強き英雄が悪を打ち倒し、国と人々を救う。”
それが世に溢れている物語の王道ストーリーだ。
しかしこの絵本はそれとは逆で、全員が救う側。
この猫は物語としては主役ではなく、国を救うという観点から見れば、その他の人々全員が主役になっている。
それがとても斬新で、変わった話だと思ったが……同時にこれこそが理想の国の在り方なのではないかとも思う。
たった一人の強き者に救われた国は、きっと物語としてはハッピーエンド。
でも……現実の世界ではその後も物語は続いていく。
国は沢山の人々で成り立つ集合体だ。
そんな概念の中、たった一人が切り開いてくれた道をただ楽に歩いていくなんて……一体いつまでその道は続いているんだろう?
それを考えるとゾッ……とする。
強き者がいなくなり、道を失った人々はどうする事もできずにバラバラ。
きっとまた新たな ” 強き者 ” を探しながら、そこで ” 終わり ” を迎える事になる。
それってきっとハッピーエンドじゃない。
守備隊での体験は、私達にその事への恐怖を教えてくれた。
一人一人が全力を出して前に進まなければ、本当の意味で国は救われない。
しかし、多分それには ” 希望 ” が必要不可欠なんだ。
「 ……その ” 猫 ” がこの街に来てくれたらいいね。 」
ボソッと呟くと、キュイちゃんは困った顔で「 そうだね。 」と答えた。
私達の無期限の休職期間は長く、気がつけばライトノア学院の入学試験日当日になっていて……先が見えないもどかしさにため息をつく。
一体いつになったら傭兵に戻れるのか……。
大変そうな様子で依頼をこなす仲間たちや他の戦闘機関に申し訳なくて、ヤキモキしながらカフェで働いていると、諜報系のスキルを持っている傭兵仲間がコソッと耳寄りな情報を教えてくれた。
「 そういえば、今年受験した生徒達は大物揃いみたいだよ。
第一王女のソフィア様に、大司教の娘のジェニファー様……これは荒れそうだねぇ~。 」
「 あ~……それは確かに……。 」
聖女の称号を持つソフィア様と、教会トップの大司教の娘のジェニファー様は仲が悪いという噂は結構有名な話だったため大いに納得していると、仲間は更に耳よりな情報を口にする。
「 それともう一つとびっきり!
なんとあの公爵家メルンブルク家の子供が入学するんだって。 」
「 えっ?あのメルンブルク家の……? 」
自分はそこまで貴族事情に詳しくないが、メルンブルク家といえば傭兵達の間で悪い意味で有名な人たちで、かなりきな臭い噂話がついて回る。
何でも神がかった美しさを持った、悪魔みたいな人物なのだとか……。
作者不明の絵本、その最新作にしてその作者の最後の作品であると言われている【 シュペリンの踊り猫 】
可愛いモノを集めている過程でその魅力に取り憑かれ、今では優先的に集めているコレクションの絵本シリーズの一つだ。
「 ────さぁ?何処だろうね?
う~ん……そもそもその猫って ” 希望 ” を現しているって言うし……だとしたら ” どこから ” っていうのもおかしいんじゃない?
だって ” 希望 ” ってどこにでもあって、どこにもないもの。 」
私がクスクス笑いながらそう答えると、キュイちゃんは、あ~……と納得しながらも、何かを思い出した様に語りだした。
「 そうそう、そういえばこの間、お店に獣人の商人さんが来たじゃない?
狐の獣人さん。 」
「 えっ?…………あ~、来てたね。
その人がどうしたの? 」
確かキュイちゃんが凄く楽しそうに話していたから記憶に引っかかり、こうして覚えていたのだ。
でもそれがどうしたのかと興味津々で話の続きを聞く。
「 その人が凄く気になる事を言っていたのよ。
その人はエルフの国にも商品を卸しに行く事が度々あるらしくて、そこで王宮に勤めている騎士と話す機会があったらしいの。
そこでたまたま聞いた話なんだけど──── ” シュペリン ” って、古代エルフ話の言葉で ” 異なる世界 ” って意味なんだって。 」
「 異なる世界?? 」
これまた変わった言葉にワクワクと胸が踊る。
” 異なる世界 ”
それは何を意味しているのだろうか?
もしかしてどこか他の国ではなく、天国などの空想上の世界を意味しているのか、それとも別の表現として、その言葉を使ったのか……なんにせよ、非常に興味がわく事実に悶々と考えていると、キュイちゃんは更に面白い話をする。
「 それにね、その王宮騎士さんいわく、” 世に出ている絵本と原作の絵本の絵が違うらしい ” っていう噂があるんだって。
凄くミステリアスだよね。
それが本当なら、他の絵本シリーズも全部絵が違うのかな?
でも……それって何のためにそんな事をしたんだろう?? 」
キュイちゃんは言い終わった後、う~ん……と渋い顔で、その事について考え始めた。
噂が仮に本当だとしたら、確かに何故わざわざ絵を変えたのか?
とても不思議な話だ。
” 異世界から突如現れた希望 ”
それが絶望にまみれた世界を救う……いや、全員を踊らせて国を救わせるのだ。
その点もおかしいと感じて、改めてその謎について考えた。
” 一人の強き英雄が悪を打ち倒し、国と人々を救う。”
それが世に溢れている物語の王道ストーリーだ。
しかしこの絵本はそれとは逆で、全員が救う側。
この猫は物語としては主役ではなく、国を救うという観点から見れば、その他の人々全員が主役になっている。
それがとても斬新で、変わった話だと思ったが……同時にこれこそが理想の国の在り方なのではないかとも思う。
たった一人の強き者に救われた国は、きっと物語としてはハッピーエンド。
でも……現実の世界ではその後も物語は続いていく。
国は沢山の人々で成り立つ集合体だ。
そんな概念の中、たった一人が切り開いてくれた道をただ楽に歩いていくなんて……一体いつまでその道は続いているんだろう?
それを考えるとゾッ……とする。
強き者がいなくなり、道を失った人々はどうする事もできずにバラバラ。
きっとまた新たな ” 強き者 ” を探しながら、そこで ” 終わり ” を迎える事になる。
それってきっとハッピーエンドじゃない。
守備隊での体験は、私達にその事への恐怖を教えてくれた。
一人一人が全力を出して前に進まなければ、本当の意味で国は救われない。
しかし、多分それには ” 希望 ” が必要不可欠なんだ。
「 ……その ” 猫 ” がこの街に来てくれたらいいね。 」
ボソッと呟くと、キュイちゃんは困った顔で「 そうだね。 」と答えた。
私達の無期限の休職期間は長く、気がつけばライトノア学院の入学試験日当日になっていて……先が見えないもどかしさにため息をつく。
一体いつになったら傭兵に戻れるのか……。
大変そうな様子で依頼をこなす仲間たちや他の戦闘機関に申し訳なくて、ヤキモキしながらカフェで働いていると、諜報系のスキルを持っている傭兵仲間がコソッと耳寄りな情報を教えてくれた。
「 そういえば、今年受験した生徒達は大物揃いみたいだよ。
第一王女のソフィア様に、大司教の娘のジェニファー様……これは荒れそうだねぇ~。 」
「 あ~……それは確かに……。 」
聖女の称号を持つソフィア様と、教会トップの大司教の娘のジェニファー様は仲が悪いという噂は結構有名な話だったため大いに納得していると、仲間は更に耳よりな情報を口にする。
「 それともう一つとびっきり!
なんとあの公爵家メルンブルク家の子供が入学するんだって。 」
「 えっ?あのメルンブルク家の……? 」
自分はそこまで貴族事情に詳しくないが、メルンブルク家といえば傭兵達の間で悪い意味で有名な人たちで、かなりきな臭い噂話がついて回る。
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