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第四十一章
1303 もどかしい
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( ユーリス )
「 ……俺達は効率を最も重視しているので。
低コスト、低燃費……。無駄と失敗に溢れているお手本を、嫌と言うほど近くで見ているのでね。 」
視線すら合わせず淡々と言い返してやると、ドノバンさんとケンさんはブーブーとまるで子どもの様に不貞腐れた様子を見せる。
「 うっわ!可愛くねぇ後輩!この水色マッシュめ! 」
「 赤ちゃんにチョロっと毛が生えた程度の若造のくせに! 」
子どもの悪口か!
ヒソヒソ、グチグチと囁き合う中年二人を完全にシャットダウンして、俺は冷静に黒いモヤで隠れてしまっている森の上空を睨みつけた。
現在呪いの化け物を相手しているのは、公爵家メルンブルク家の次男、リーフ・フォン・メルンブルク。
激しい戦闘音とバチバチという雷の様なモノが頻繁に発生している事から、戦いは激化しているのは分かるが、戦況は不明だ。
俺はどんどんと濃くなっていく様に見える、黒いモヤを見てゴクリと唾を飲み込んだ。
化け物が森の奥に引っ込んだ後、それをリーフ君は直ぐに追いかけ、それから直ぐに周りの黒いモヤは濃くなっていき、今は全く見えなくなっている。
直ぐに解析班に解析させたが、一切の情報を見ることができないという返事が帰って来ただけ。
ただし、呪い属性である事は間違いない様で、呪いが効かないリーフ君のみしかあの黒モヤの中には入れないという事だ。
「 ────クソっ。 」
もどかしさから、つい汚い言葉が漏れてしまい、直ぐに落ち着くため深呼吸をする。
戦闘音が聞こえる事から、恐らく完全にフィールドを変えるフィールド変換魔法とは別物の様、そしてどうやらまるで穴だらけのチーズの様に空間が捻じれている事だけは判明していた。
空間が捻じれているなら後方から魔法攻撃などの援護射撃もできない。
何かできることはないのか……。
「 何もできないのはもどかしいですね……。
でも、だからこそ落ち着いて、ここを死守しましょう。
とりあえず戦闘力の高いユーリスさんや若い層の戦闘員には、体力を温存してもらいたいです。
前線に突っ込んで行くのは我々シニア組にお任せを。 」
自然と険しくなっていく顔に気づかれた様で、マルクさんに声を掛けられてしまった。
俺もまだまだだなと反省し、ペコッと軽く頭を下げる。
「 すみません、取り乱しました。
しかし、なぜ温存を? 」
「 私もケンも……ユーリスさんと同じ懸念を持っているからです。
これで終わりのはずがないからね。
悪人のしつこさとタチが悪さは、嫌という程知っているつもりだよ。 」
困った様に笑うマルクさんに、俺も同様の笑みを返す。
悪の象徴であるエドワードと、悪の知将とも言われているメルンブルク家。
残忍に冷酷に……。
そんな彼らは、恐らくまだまだ奥の手を隠しているはず……。
俺は団員達に指示を出すため、その場で大声で叫んだ。
「 各班、熟練者を前へ!他隊員はそのサポートに回れ!
そしてA級以上の各隊員は、できるだけ力を温存せよ。 」
俺の指示を聞いた団員達はすぐさま状況を読み取り、陣形を変える。
熟練者は今まで経験してきた戦闘経験により、戦いのペース配分や戦闘テクニックに非常に優れていて、そのため長期戦や耐久戦になれば、その能力を遺憾なく発揮してくれる。
そのため長期戦が想定される戦いの場合は、こうしてまずは熟練者を前に出し、戦力の温存をしながらここぞという時に最強戦力を投入する。
ザッと目を通せば、守備隊の方も、同じ陣営に変わった様だ。
さぁ、次はどう出る?
油断しない様にピリピリしている俺の元へ、空からコチラにデバフを掛けようとしている< ビリビリ・バタフライ >を全て焼き尽くしたドノバンさんがやってくる。
「 やっこさん、お次はどんな手でくるんだか……。
これで終わりってこたぁ~ねぇもんな。 」
「 さぁ?どうでしょうかね。
流石に呪いを打ち消す存在が現れる事は全く予想してなかったでしょうから……。
しかしこの世の汚物を全て中に突っ込んで固めた様な、あの王子様と大貴族様の事です。
警戒は緩めずにいきましょう。 」
「 おまっww
ホントお前あいつらの事嫌いだな!www 」
ププー~!と笑う能天気に笑うおじさんは、そのままひとしきり笑った後、突然真面目な顔で、チラッと俺の方へ視線を向けた。
「 街中と……後他にも何箇所か変な魔力反応があるな。
お前も気づいてんだろ?
最悪、後方に下がった戦闘員達は街に向かわせねぇと駄目かもしれねぇな。
クソっ随分派手なお祭りをやるつもりらしいな、こりゃ。 」
「 ……どうやらそうみたいですね。 」
俺は街の方へと視線を一瞬向けて、ふぅ……とため息をついた。
「 ……俺達は効率を最も重視しているので。
低コスト、低燃費……。無駄と失敗に溢れているお手本を、嫌と言うほど近くで見ているのでね。 」
視線すら合わせず淡々と言い返してやると、ドノバンさんとケンさんはブーブーとまるで子どもの様に不貞腐れた様子を見せる。
「 うっわ!可愛くねぇ後輩!この水色マッシュめ! 」
「 赤ちゃんにチョロっと毛が生えた程度の若造のくせに! 」
子どもの悪口か!
ヒソヒソ、グチグチと囁き合う中年二人を完全にシャットダウンして、俺は冷静に黒いモヤで隠れてしまっている森の上空を睨みつけた。
現在呪いの化け物を相手しているのは、公爵家メルンブルク家の次男、リーフ・フォン・メルンブルク。
激しい戦闘音とバチバチという雷の様なモノが頻繁に発生している事から、戦いは激化しているのは分かるが、戦況は不明だ。
俺はどんどんと濃くなっていく様に見える、黒いモヤを見てゴクリと唾を飲み込んだ。
化け物が森の奥に引っ込んだ後、それをリーフ君は直ぐに追いかけ、それから直ぐに周りの黒いモヤは濃くなっていき、今は全く見えなくなっている。
直ぐに解析班に解析させたが、一切の情報を見ることができないという返事が帰って来ただけ。
ただし、呪い属性である事は間違いない様で、呪いが効かないリーフ君のみしかあの黒モヤの中には入れないという事だ。
「 ────クソっ。 」
もどかしさから、つい汚い言葉が漏れてしまい、直ぐに落ち着くため深呼吸をする。
戦闘音が聞こえる事から、恐らく完全にフィールドを変えるフィールド変換魔法とは別物の様、そしてどうやらまるで穴だらけのチーズの様に空間が捻じれている事だけは判明していた。
空間が捻じれているなら後方から魔法攻撃などの援護射撃もできない。
何かできることはないのか……。
「 何もできないのはもどかしいですね……。
でも、だからこそ落ち着いて、ここを死守しましょう。
とりあえず戦闘力の高いユーリスさんや若い層の戦闘員には、体力を温存してもらいたいです。
前線に突っ込んで行くのは我々シニア組にお任せを。 」
自然と険しくなっていく顔に気づかれた様で、マルクさんに声を掛けられてしまった。
俺もまだまだだなと反省し、ペコッと軽く頭を下げる。
「 すみません、取り乱しました。
しかし、なぜ温存を? 」
「 私もケンも……ユーリスさんと同じ懸念を持っているからです。
これで終わりのはずがないからね。
悪人のしつこさとタチが悪さは、嫌という程知っているつもりだよ。 」
困った様に笑うマルクさんに、俺も同様の笑みを返す。
悪の象徴であるエドワードと、悪の知将とも言われているメルンブルク家。
残忍に冷酷に……。
そんな彼らは、恐らくまだまだ奥の手を隠しているはず……。
俺は団員達に指示を出すため、その場で大声で叫んだ。
「 各班、熟練者を前へ!他隊員はそのサポートに回れ!
そしてA級以上の各隊員は、できるだけ力を温存せよ。 」
俺の指示を聞いた団員達はすぐさま状況を読み取り、陣形を変える。
熟練者は今まで経験してきた戦闘経験により、戦いのペース配分や戦闘テクニックに非常に優れていて、そのため長期戦や耐久戦になれば、その能力を遺憾なく発揮してくれる。
そのため長期戦が想定される戦いの場合は、こうしてまずは熟練者を前に出し、戦力の温存をしながらここぞという時に最強戦力を投入する。
ザッと目を通せば、守備隊の方も、同じ陣営に変わった様だ。
さぁ、次はどう出る?
油断しない様にピリピリしている俺の元へ、空からコチラにデバフを掛けようとしている< ビリビリ・バタフライ >を全て焼き尽くしたドノバンさんがやってくる。
「 やっこさん、お次はどんな手でくるんだか……。
これで終わりってこたぁ~ねぇもんな。 」
「 さぁ?どうでしょうかね。
流石に呪いを打ち消す存在が現れる事は全く予想してなかったでしょうから……。
しかしこの世の汚物を全て中に突っ込んで固めた様な、あの王子様と大貴族様の事です。
警戒は緩めずにいきましょう。 」
「 おまっww
ホントお前あいつらの事嫌いだな!www 」
ププー~!と笑う能天気に笑うおじさんは、そのままひとしきり笑った後、突然真面目な顔で、チラッと俺の方へ視線を向けた。
「 街中と……後他にも何箇所か変な魔力反応があるな。
お前も気づいてんだろ?
最悪、後方に下がった戦闘員達は街に向かわせねぇと駄目かもしれねぇな。
クソっ随分派手なお祭りをやるつもりらしいな、こりゃ。 」
「 ……どうやらそうみたいですね。 」
俺は街の方へと視線を一瞬向けて、ふぅ……とため息をついた。
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