【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第四十二章

1332 幸せの場所

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( ライキー )


~ 呪災の卵孵化前 ~


空は真っ黒に染まり、ザワザワと騒がしくなってきた森の中……遠くの方で沢山のモンスター達の咆哮が轟く。


「 ……っ!!ヒィっ!! 」


正体不明のモンスターの鳴き声と、強く吹き付ける風でガタガタ揺れるキノコ小屋の中で、僕は耳を塞ぎ膝に顔を埋めて震えていた。


先ほど全街民に伝電鳥での避難勧告が出され、勿論ここにもその知らせが届く。

更に守備隊員がわざわざここまで知らせにも来てくれたが、僕は感謝の言葉を告げてここを離れる気がない事を伝えた。


僕は死んでもここを離れない。

だってここだけが ” あーちゃん ” との思い出と共に生きていける場所だから。


そう、ここだけが僕のたった一つの ” 幸せの場所 ” なのだ。


僕は目を閉じたまま、 ” あーちゃん ” と出会った時の思い出を振り返る。




僕の生まれた家< メイキルド家 >は、まさにこの国にありふれた程いる貴族らしい貴族であった。


過去の栄光に縋り、祖先たちが残した財産を食いつぶし、贅沢が染み付いた身を満足させるため次々と借金を増やしては ” 誰か ” がどうにかするのを待つ……。


そんな両親の元、僕は生まれた。


その ” 誰か ” にするため、僕は小さい頃から厳しい英才教育の元育てられたが……僕には悲しいくらいに剣も魔法も座学も突出するものはなく、剣と魔法は才能皆無、そして座学も死ぬほど頑張ってなんとか人並み程度であった。


最後の望みとして受けた資質鑑定も、結果は菌類を育てるのに特化した生産系の下級資質【 菌生者 】


両親はここで完全に僕を切り捨て、8歳下の妹レナを後継者、もしくは強力な資質持ちの婿を取らせる道具として期待し始めた。


僕はそんな妹がとても心配で……どうにか助けなければと壁になり続けたが、レナは小さい頃から内に秘めた賢さを持っていて、僕が庇わなくてもうまく立ち回ってトラブルを回避していた様に思う。


僕って何かの役に立っているのかな……。


ズ~ン……と凹んでしまう事も多かったが、レナはそんな僕をいつだって気遣ってくれて、笑顔で「 ありがとう。 」と言ってくれた。


それが申し訳なくて、僕だって自分にできる事を精一杯やろうと、見栄で入れられた高学院在学中に、キノコ畑を作ってコツコツキノコの栽培を始める。

すると数少ない小学院時代の友人であるケンとマルクは、僕の育てた< 味好みキノコ >や< 甘味キノコ >を食べて ” 天才! ” と絶賛してくれた。


< 甘味キノコ >

甘いはちみつに似ている味がするキノコ

主にデザートなどに使われる高級品


それに背中を押された僕は、そのキノコを飲食店に売り込み、これが大好評!

皆が僕の作ったキノコを、美味しい美味しいと言って食べてくれるのは嬉しかった。


だから僕は将来この能力を生かして家を立て直そうと、そう心の中で決めたのだが────────……そう簡単に物事は進まない。


両親にキノコの栽培について説明し、その事業を拡大する事で家を立て直す事ができるかもしれないと言ったのだが……理解を得る事はできなかった。


「 貴族ともあろうものが、そんな泥臭い土いじりなんぞできるか!!

ふざけるなっ!!! 」


「 この役立たずの恥知らず者!!

役立たずには役立たずなりの使い道を用意してあげるから大人しくしてなさい!! 」


父と母はそう言って、キノコ畑をめちゃくちゃに壊してしまったのだ。


僕は全てを否定され、めちゃくちゃにされてしまったキノコ畑を前に呆然と座り込む。


役立たず……。

そんな事は────分かっているよ。


絶望する気持ちが心一杯に広がったが、めちゃくちゃにされたキノコを見て本日納品する予定だった事を思い出して青ざめた。


大変だ!

お店の人に迷惑を掛けてしまう!


慌てて納品する予定だった店へと走り、店主に謝罪したのだが、店主は烈火のごとく大激怒し始めた。


「 ふざけるなっ!!!お前が納品してくれなけりゃこっちは大損だ!!!

その損害分、ちゃんと弁償しろよっ!!

一日の売上金と迷惑料込みで金貨50枚!今直ぐ払え!! 」


「 えっ!!そ、そんな大金払えないよ……っ!

だって< 味好みキノコ >は一本銅貨1枚で卸しているのに……金貨50枚はあり得ない! 」


100倍以上の値段の売上金と迷惑料など、どう考えてもおかしい。


それを必死に訴えたが、店主は聞く耳を持たず僕を殴って店の外へと放りだした。

そのまま怒鳴られ続け、僕は地面にうつ伏せになったまま起き上がる気力を失ってしまう。


僕は何をやっても役立たず。

だからこうやってどこでも怒鳴られて怒られてしまうんだ。


こんな人生ならいっそ……。


絶望に心が覆われそうになったその時、店長の怒鳴り声がピタリと止まり、代わりに可愛らしい声が近くで聞こえた。


「 へぇ~?< 味好みキノコ >が銅貨一枚……か。

高級キノコがこれでもかと使われている話題の店って聞いていたんだけど、まさかそんなに安く買い叩いてたからだったんだ~。 」

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