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第四十五章
1400 自分が消える
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( 第一聖兵士団団長モール )
「 モールはいいよな。 」
まるで挨拶の様に言われる言葉に、俺はニコッと曖昧な笑みを浮かべた。
ここで…… " 別にそうでもないよ。" と言えば " 嫌味かよ。" という怒りの感情が。
" まぁね。 " と肯定すれば、" 傲慢で嫌なヤツ。" とまた別の怒りの感情を向けられる。
結局どちらにしても、気持ちがよくなる言葉は返ってこない。
こういう時はどうしようか……などと迷う事なく、俺は今この場で最もマシな感情を持たれるであろう言葉を選んで口にする。
<聖愛師の資質>(先天スキル)
< 読心愛 >
相手が自分に向ける感情を読み取る事ができる
かつ自分の選ぶ選択により、相手に発生する新たな感情も未来予知できるため、最もBESTな選択肢を常に選ぶ事が可能である
本日俺に、その挨拶の様な嫌味を言ってきた同級生は、俺の選んで返した答えに不満はあれど、” まぁ、いいか。 ” と忘れるくらいの気持ちを抱いた様だ。
そのままツラツラと日々の愚痴と不満を吐き出すと、満足そうに俺の前から去っていった。
俺がこの世に生まれた時から、自然と持っていたスキル< 読心愛 >。
これにより人と関わる上で、常に最善の答えが頭に浮かぶ。
そしてそれを選んだ時に向けられる感情や、最善ではない答えを選んだ先にある未来も……。
その全てを知ってわざわざ最悪な答えなど選ぶはずもなく、俺は常に最善の未来を選んで生きてきた。
その結果、俺が手にしたのは、誰もが羨む様な幸せな人生と…………俺という ” 個 ” の喪失だ。
自分という ” 個 ” が消える。
その事に最初は恐怖し、逆らおうとした事もあったが、結局はできなかった。
それに逆らう事は、例えるなら目の前に崖がある事が分かっているのに、足を踏み出すのと同じ事だったからだ。
それが分かっているのに足を踏み出し、痛みにありふれた人生を生き抜いていく強さが────俺にはなかった。
そんな俺には決してない強さを持っていたのは、一歳下の弟< リゼル >だ。
リゼルは、先に何があっても苦しむのが分かっていても、がむしゃらに進んでいける強さを持っていた。
俺の様に ” 仕方がない ” と諦める場面でも「 上等だぁぁぁ!! 」と叫んでは、一人、突っ込んでいってはボロボロになって帰って来る。
前が崖でも喜んで飛び出し、痛みだらけの人生を歩むリゼル。
そして足を止めて最善を選んで ” 楽 ” しかない人生を歩む俺。
180度違う正反対の気質を持つ俺達に交わる点はなく、兄弟仲は良いとは言えなかった。
「 兄さんの馬鹿野郎!!おすまし顔しやがってムカつく!!
勝負しろ!!そんで兄さん負けろ!! 」
「 ばーかばーか!!次は負けねぇからな!! 」
リゼルは俺が最善を選んでも、睨む、怒鳴る、喧嘩をふっかける、更には勝負といって殴り掛かってきたりもした。
もちろん、そんな単純な思考と動きのリゼルの攻撃など当たるはずもなく、軽くいなしてやれば、恥ずかしげもなく ” ぎゃああああああん!!! ” と大号泣する。
そしてそんな丸裸な感情を出し尽くしては、もう出す所もないだろうに、セイ父さんの所に言って、また泣き……次の日にはケロッ!としていた。
────……いいな。
俺がリゼルを見て思う事はこれだ。
自分の感情を素直に吐き出し、常に辛い未来へとぶつかっていけるリゼルが心底羨ましかった。
リゼルは痛みと共に沢山の手に入れたモノを両手いっぱいに抱え、未来へ続く道を楽しみながら歩いている。
必要なモノだけ選んで楽な道を歩く俺の手は、空っぽなのに……。
” 楽 ” を取り、自分の選択肢がない人生に……価値を見出すのは難しかった。
” じゃあ、自分を変える努力をすればいいのに。 ”
そう言われても、俺の足は動かない。
だって楽な道を歩くってことは、その足を奪い、原動力となる心も壊すモノだったからだ。
人間は ” 楽 ” によって、簡単に壊れてしまう。
どうしたらいいかと考える思考さえ、” 楽 ” は奪っていってしまった。
だから俺は、誰もいない時間に一人で教会に行っては何も考えない時間を作る。
もちろんそれで何か解決する期待をしているわけではなくて、人がいるとどうしても最善の選択を選んでしまうから、それが辛くてだ。
この一人の時間だけが、自分が ” 個 ” に戻れる時間か。
そう思うと、フフッ……と笑いがこぼれてしまった、その時……突然教会に誰かが入ってくる音がした。
「 モールはいいよな。 」
まるで挨拶の様に言われる言葉に、俺はニコッと曖昧な笑みを浮かべた。
ここで…… " 別にそうでもないよ。" と言えば " 嫌味かよ。" という怒りの感情が。
" まぁね。 " と肯定すれば、" 傲慢で嫌なヤツ。" とまた別の怒りの感情を向けられる。
結局どちらにしても、気持ちがよくなる言葉は返ってこない。
こういう時はどうしようか……などと迷う事なく、俺は今この場で最もマシな感情を持たれるであろう言葉を選んで口にする。
<聖愛師の資質>(先天スキル)
< 読心愛 >
相手が自分に向ける感情を読み取る事ができる
かつ自分の選ぶ選択により、相手に発生する新たな感情も未来予知できるため、最もBESTな選択肢を常に選ぶ事が可能である
本日俺に、その挨拶の様な嫌味を言ってきた同級生は、俺の選んで返した答えに不満はあれど、” まぁ、いいか。 ” と忘れるくらいの気持ちを抱いた様だ。
そのままツラツラと日々の愚痴と不満を吐き出すと、満足そうに俺の前から去っていった。
俺がこの世に生まれた時から、自然と持っていたスキル< 読心愛 >。
これにより人と関わる上で、常に最善の答えが頭に浮かぶ。
そしてそれを選んだ時に向けられる感情や、最善ではない答えを選んだ先にある未来も……。
その全てを知ってわざわざ最悪な答えなど選ぶはずもなく、俺は常に最善の未来を選んで生きてきた。
その結果、俺が手にしたのは、誰もが羨む様な幸せな人生と…………俺という ” 個 ” の喪失だ。
自分という ” 個 ” が消える。
その事に最初は恐怖し、逆らおうとした事もあったが、結局はできなかった。
それに逆らう事は、例えるなら目の前に崖がある事が分かっているのに、足を踏み出すのと同じ事だったからだ。
それが分かっているのに足を踏み出し、痛みにありふれた人生を生き抜いていく強さが────俺にはなかった。
そんな俺には決してない強さを持っていたのは、一歳下の弟< リゼル >だ。
リゼルは、先に何があっても苦しむのが分かっていても、がむしゃらに進んでいける強さを持っていた。
俺の様に ” 仕方がない ” と諦める場面でも「 上等だぁぁぁ!! 」と叫んでは、一人、突っ込んでいってはボロボロになって帰って来る。
前が崖でも喜んで飛び出し、痛みだらけの人生を歩むリゼル。
そして足を止めて最善を選んで ” 楽 ” しかない人生を歩む俺。
180度違う正反対の気質を持つ俺達に交わる点はなく、兄弟仲は良いとは言えなかった。
「 兄さんの馬鹿野郎!!おすまし顔しやがってムカつく!!
勝負しろ!!そんで兄さん負けろ!! 」
「 ばーかばーか!!次は負けねぇからな!! 」
リゼルは俺が最善を選んでも、睨む、怒鳴る、喧嘩をふっかける、更には勝負といって殴り掛かってきたりもした。
もちろん、そんな単純な思考と動きのリゼルの攻撃など当たるはずもなく、軽くいなしてやれば、恥ずかしげもなく ” ぎゃああああああん!!! ” と大号泣する。
そしてそんな丸裸な感情を出し尽くしては、もう出す所もないだろうに、セイ父さんの所に言って、また泣き……次の日にはケロッ!としていた。
────……いいな。
俺がリゼルを見て思う事はこれだ。
自分の感情を素直に吐き出し、常に辛い未来へとぶつかっていけるリゼルが心底羨ましかった。
リゼルは痛みと共に沢山の手に入れたモノを両手いっぱいに抱え、未来へ続く道を楽しみながら歩いている。
必要なモノだけ選んで楽な道を歩く俺の手は、空っぽなのに……。
” 楽 ” を取り、自分の選択肢がない人生に……価値を見出すのは難しかった。
” じゃあ、自分を変える努力をすればいいのに。 ”
そう言われても、俺の足は動かない。
だって楽な道を歩くってことは、その足を奪い、原動力となる心も壊すモノだったからだ。
人間は ” 楽 ” によって、簡単に壊れてしまう。
どうしたらいいかと考える思考さえ、” 楽 ” は奪っていってしまった。
だから俺は、誰もいない時間に一人で教会に行っては何も考えない時間を作る。
もちろんそれで何か解決する期待をしているわけではなくて、人がいるとどうしても最善の選択を選んでしまうから、それが辛くてだ。
この一人の時間だけが、自分が ” 個 ” に戻れる時間か。
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