【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
1,417 / 1,649
第四十五章

1401 何かを持っている人

しおりを挟む
( モール )

「 ────あ~……めんどくせぇ~な~。くっそ~。 」


悪態をつきながら入ってきたのは、俺の父であるヨセフ。

ヨセフは、とても聖書者とは言えない様な野蛮な動きで、俺と横並びの椅子に座ると、前の椅子に足をダンッ!と乗せた。

そして頭の後ろで手を組み、椅子の背もたれにもたれ掛かる。


「 ……セイ父さんに言いつけるよ。 」


「 えぇ~……それは駄目。

またセイに怒られるだろう?

俺は改心したんでぇ~。優しくて穏やかな聖職者なんでぇ~。 」


優しくて穏やかな聖職者……ねぇ?


その正反対をいくような行動と、何よりニヤ~と人を誂うような笑みに呆れたが、ヨセフの本質はこっち。

ヨセフは柔らかな言動と態度で非常に上手く隠しているが、本来はひどく攻撃的で複雑な心質を持っている。


” 人 ” というモノに対する、激しい怒りと憎しみ。

しかし、逆に一切の興味もない様な無関心さも持っていて、その心情を理解する事は難しい。


そんなヨセフに対してのBESTな対応は…… ” ない ”


要は、” 人 ” がぶつけてくる感情によって、ヨセフの心は一切揺れ動かないため、これだという最適の答えがないのだ。


そう考えると、ヨセフは唯一俺のままで接する事ができる相手という事か……。


その事実に対し複雑な想いを抱いてしまうのは、ヨセフも俺と同様の能力を持っているからだ。

そして────俺とは違い、相手に対してのBESTな行動や言動を取っているのに、何一つ想う所はない様だった。

              
「 ……ヨセフはさ、辛くないの?。 」


相手が望む ” 最適 ” だけを選ぶの。


突然のそんな質問に対しても、ヨセフは動じる事なく軽い感じで笑いながらそれに答えた。


「 別にぃ~。これが ” 俺 ” だからさ。

今の俺も俺。

穏やかで優しい、皆が望む完璧な聖職者を偽る俺も俺。

そしてそれを選んでいるのも俺。

ほら、全部俺だ。

自分の正しさを突き通すには、偽りの世界も必要だからさ。 」


「 ……そう。 」


ヨセフにとって俺が思い悩み嫌悪する状況は、最大限利用できるモノでしかないらしい。


ここまで割り切れたらいいな……。


リゼル同様、俺はそんなヨセフに対しても、羨ましいという想いを持っている。

俺は……多分、すごく中途半端な存在なんだろうなと思う。


ヨセフは顔を天井へ向け、フンフ~ン♬と鼻歌を歌い出したので、俺はその顔をボンヤリと眺めながら考えた。


いいな。

いいな。

リゼルの様にまっすぐ走って行けず、ヨセフの様にキッパリ割り切れない俺は、一体どうしたらいいんだろう。


中途半端な俺は……。


悶々とした想いでいっぱいになると、突然ヨセフがフッと笑い、上に向けていた視線を正面に戻す。


「 結果が分かっている事をやるのはしんどいな。

それを知っているのに、進みたい道を行けるのは一つの才能だよ。

普通は誰もが最適と思える道へ進むだろう。

誰だって苦しい想いはしたくないから。 」


もっともな言葉に、俺は沈黙で肯定を返すと、ヨセフは困った様にため息をついた。


「 最適な選択肢を選び続ける事は何も悪い事ではない。

人の望むそのままの姿になってしまう事だってそれはそれで良い。


でも、問題はそんな自分を受け入れられるかどうかだ。


結局全てが感情論に行き着くものなんだよね、知能がある生き物は。

” 好きか嫌いか。”

モールは今の自分が好きじゃない。

そしてそれが続くほど、どんどん嫌いになっていく。

そこが一番の問題なんじゃないか?


こればっかりは、どんなに周りが自分の事を褒めても、無駄な人には無駄なんだ。


だって、自分が嫌いなモノを褒められたって、全然うれしくないもんね~。

むしろ周りの人間の持つ価値観の違いに、更に苦しめられる人もいる。 」


「 ……そうかもね。 」


べらべらと語られる話を何となく聞きたくなくて、そのまま軽く流したが……心はズキズキと痛んだ。

そんな俺を見て、ヨセフは目を閉じてうっすら笑みを浮かばる。


「 そんな嫌いな自分を好きになるには、自分以外の存在が必要なんだよ。

心を根本的に変えてくれる何かを持っている人。

そんな人に出会えたら、多分自分の全てのモノに存在意義を持たせてくれるよ。

自分が嫌いな自分も全て。

それをくれる存在に……出会えるといいな。 」


ヨセフは言うだけ言って、パカッ!と目を開けると、そのまま勢いよく立ち上がった。


「 ────まぁ、一生見つからない人もいるし~。結局 ” 運 ” だけど! 」


そして、大きく伸びをしながら、最後はそれだけ付け足して去っていく。

皆が望む完璧な聖職者の顔を張り付けて……。


ヨセフの言葉は、その時はピンと来なくて……でもだからといって完全に忘れる事はできないインパクトを心の中に残した。
しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

契約満了につき

makase
BL
仮初めの恋人として契約を結んだ二人の、最後の夜。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

処理中です...