【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第四十五章

1402 嫌いなモノを……

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( モール )

しかし、だからといって何かが変わるということもなく……。

俺は相変わらず、もっとも楽で得をすることができる最適な答えを選び続ける。

更に、俺の資質が非常に希少な< 特級資質 >であった事もわかると、誰もが ” まさに選ばれし者の人生だ ” と、口にしたが……全然うれしいという感情は湧かなかった。


” 自分の嫌いなモノを褒められたって嬉しくない。 ”


本当にその通りだ……。


ヨセフの言った言葉を思い出し自傷気味に笑いながら、やりたいこともなかった俺は周りに望まれるまま、最も能力的に適している聖兵士の道を選んだ。

” 人のために何かしたい ” 

” 困っている人を助けたい ” 

そう願い志願する者達が多い中、俺はそんなやる気に溢れている者たちに仕事を任せては、望まれるフォローをする。

すると、あっという間に異例とも言える出世をしていき、これまた順調過ぎる人生になっていた。


「 モールさんは凄いですね!

何でもできるし、全部モールさんの言った通りになりました! 」


「 この間はありがとうございました!

モールさんのお陰で、全部うまく行きましたよ! 」


「 モールさんはいいな~。

どうしたらモールさんの様な、人間になれるんですか? 」


心からの賛辞やお礼に、俺はにっこり笑う。

そして、やはり最適とも言える答えを返しては、彼らが険しい道でも意気揚々と進んでいく背中を見つめ続けた。


「 ……俺はこんな俺になんてなりたくないけどね。 」


俺の心が伴ってない都合がいい言葉を聞いては、 ” この人は唯一自分の事を分かってくれる素晴らしい人だ! ” と勘違いをして去っていく人たちを見て、苦笑いをする。


好意を向けられればられるほど、自分の ” 嫌い ” との差にひどく苦しめられる。


俺は俺が好きじゃないのに、皆は俺が好き。

” 個 ”  を持たない俺が好きなんだ。


じゃあ、俺は……?



「 私モールさんが大好きです!

彼女になりたいとか、そこまで望んでません。

ただ側にいるだけで幸せです。 」


一生懸命に自分の気持を伝えてくれる女性に、お礼を告げながら心の中で謝罪した。


ごめんね。

俺は俺が嫌いなの。

だからそれを好きっていう君の事も……多分好きにはなれないんだ、って。


人が向けてくれる好意すらも受け取れなくなってしまった、俺の歪んだ心が悲しい、辛い、苦しい。

でも、どうやってこれを直せるかも、直そうという気力も ” 楽 ” が奪っていく。


もういい。

これが自分の人生なんだ。


そう諦めていたその時……俺は、自分の人生を劇的に変えてくれた人物と出会った。


聖兵士の仕事が落ち着いている中、俺は自分を慕う数人の男達と飲み屋へと出かけていた。

俺を含めて全員が全員、これといった目的もなく、ただ ” 生きている ” という表現が正しい連中で、要は一緒にいて楽しいけど大事ではない存在……いわゆる都合が良いだけの関係の者たちであった。


一番気楽でいい。


相手を思いやる心を持たず、気持ちを返したいと思わない者達。

相手に ” 与える ” 事をしようとしない者達は、こちらもアッサリ捨てる事ができるから都合がいい。

それに……。


────チラッ。


飲み屋について直ぐに店員に偉ぶる連れの男たちの姿を見て、窘めながら心の奥で笑う。


嫌いな自分が隠れて居心地もいい。

ゴミを隠すならゴミの中……ってやつ?


薄暗い想いを抱きながら、まずい酒を飲み、くだらない愚痴を聞いていると、男たちの中の一人が突然隅の方のテーブルを見てニヤッと笑った。


「 あ~!アイリじゃねぇか! 」


弾む声、気安い態度で話しかける男からは……あまり気分がいいとは言えない感情が伝わってくる。

蔑み、優越感、愉快、加虐的思考……。


「 …………。 」


ちょうどテーブルに置かれた果実水を飲みながら、俺は男たちが声を掛けた< アイリ >とやらがいる席へと視線を向けた。

そこは店の中でも影になる端の方にあるテーブルで、周りは陽気な雰囲気で満ちているというのに、ひどく陰気な雰囲気を漂わせている場所だ。


そこで背中を丸めてちびちび安いお酒を飲んでいるのは、50代半ばから60代の……いわゆる初老と呼ばれるくらいの年齢の女性で、たった一人で座っていた。

恐らく若い頃はかなりモテていたのでは?というくらいには、整った顔をしているが、疲れて隈の消えない目や全体的に陰鬱なオーラでは、それを想像しづらい。

肩までの長さのパーマが掛かった髪は、ボサボサのまま、後ろに一つに縛っているだけ。

それに土と灰で薄汚れたシャツとスカートを着ている姿は、失礼だが ” 森の奥に暮らしている年老いた魔女 ” を連想してしまう。

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