【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
1,422 / 1,649
第四十五章

1406 アイリの人生

しおりを挟む
( モール )

「 その通りさ!

私は今、久しく感じてなかった幸せを感じているよ!

……確かに私はこういう形でしか幸せを感じられない。

必要とされている感じが、こういう一方通行の関係でしか得られないんだ。

随分と歪んでいるよねぇ……。  」


寂しそうに言ったアイリは、困った様に笑いながらスターフルーツの皮を剥いて俺に差し出した。



アイリの歪な心は、同じ様に歪んだ心を持つ相手にひたすら ” 与える ” 事でしか、幸せを感じられない様だった。

人から何も貰っても受け取れないから、相手に ” 与えて ” 孤独を癒やす。


だからアイリの現在の幸せは、目一杯わがままを言われて、頼ってくれて、そしてそんな相手に与え続ける事。

俺は俺でそれを受け取る事がベストだと分かっているから特に罪悪感などはない。

歪んだ心同士妙な居心地の良さを感じ、俺は暫くの間アイリと俺の奇妙な関係を続ける事にした。

────どうせ、この関係は長く続かない事が分かっていたから。




「 ────ゲホッ!……ゴホッ……。 」


俺と出会ってからあまり酒を飲まなくなったアイリは、よく咳き込む様になった。

理由は単純なモノで、若い頃の無茶が祟り、全臓器が回復のしようがなく弱っているからだった。

それをアイリは分かっている様で、だからこそ死の恐怖から逃避するため、そして体を蝕む痛みから逃げるために毎日大量の酒を飲んでいた様だ。


……もう長くはないな。


アイリと出会って三ヶ月くらい。

日に日に弱っていったアイリだったが、絶対に俺に ” 助けて。 ” と言わない。

それはアイリにとって不幸せな事だから、きっと死ぬまで絶対に言わないだろう。


俺は一通り家事を終わらせて痛みに耐えているアイリの背中を擦りながら、ため息をついた。


「 ……お酒、もう飲まないの? 」


例え寿命が少しくらい縮んでも、痛みを忘れられるなら飲んだ方がいい。

そう思っての言葉だったが、アイリはフッと鼻で笑う。


「 最後くらいは ” 楽  ” に流されるの止めてみたいんだよ。 」


この言葉は何となく心の奥に突き刺さり、モヤモヤする日々が少しだけ続いたある日、とうとうアイリは倒れてしまった。

もうベッドから起き上がる事もできない。

そんなアイリを見ながら、俺は黙ってベッドの脇に座った。


” 大丈夫? ” という気遣いの言葉は、アイリを苦しめる事が分かっていた。

だから、一定の距離を保ったままの何でもない様な日常話だけをする。


「 少し前に作ってくれたサツマイモのお焼きは美味しかったな~。

また元気になったら作ってよ。 」


「 ……まさか、10枚も食べちゃうとは思わなかったよ……。 」


普段から俺達はお互いに踏み込んだ話はしなかったため、アイリの事を詳しく知らなかった。

だからたわいない話題しかなかったからという理由もあって……俺は当たり障りない話題を選んで話を振ったが、突然アイリが自分の事を語り出す。

それには驚いたが、今の最善は ” 聞く事 ” だと分かったから、黙ってアイリの話に耳を傾けた。


「 ……これでもねぇ、小さい頃は必死に努力していた頃もあったんだ……。

でも……本当に欲しかった両親からの愛情は貰えなかったよ……。

世の中っていうのは、必ずしも努力と結果は結びつかない。

要は……諦めちまったんだよ、私は……。

” 努力なんて馬鹿らしい。

結果がついてこないなら、一番楽で得する道を選ぼう。 ”

” それこそが最も幸せな生き方なんだ。 ”

その答えを……若い頃の私は選んだ。

そしてすごく楽しくて楽で……幸せな日々を過ごしたんだけどねぇ……辿り着いた先は 
  ・・
……ココだった。 」


────ドキッ……。


アイリの言葉に少しだけ動揺した心を隠し、そっけなく「 ……そう。 」と返すと、アイリは少しだけ楽しそうに笑った様に見えた。


「 ……きっと……あんたもいつかは同じ場所に辿り着くよ。

目の前の最善は……天国の様な場所に繋がってないから。


……私って……結構美人だったからさ……チヤホヤされて……その時に一番楽で楽しく稼げる場女になって……最初は良かった……。

若さってのは最強の武器で……でも……同時に未来を見えなくする最強の曇りガラスだったんだよねぇ……。

突然その曇りガラスがなくなって視界が晴れた時は……もう引き返す事のできない所まできちまってた。 」


…………ゲホゲホッ……。

シーン……と静まり返った中で、アイリが咳き込んだので、「 休む? 」と聞いたが、アイリは話をやめようとしない。

首を横に振って、遠い過去を見ている様だった。

しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

神のミスで転生したけど、幼女化しちゃった! 神具【調薬釜】で、異世界ライフを楽しもう!

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
旧題:神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜  ※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!  2026/3/9に発売です!書籍は2026/3/11に発売(予約受付中)です!イラストは、にとろん様です。よろしくお願い致します!  ファンタジー小説大賞に投票して頂いた皆様には、大変感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 校正も自力です(笑)

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。 その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。 両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。 自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。 自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。 相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと… のんびり新連載。 気まぐれ更新です。 BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意! サブCPに人外CPはありますが、主人公は人外CPにはなりません。 (この世界での獣人は人間の種類の一つですので人外ではないです。) ストックなくなるまでは07:10に公開 他サイトにも掲載してます

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

処理中です...