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第四十五章
1406 アイリの人生
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( モール )
「 その通りさ!
私は今、久しく感じてなかった幸せを感じているよ!
……確かに私はこういう形でしか幸せを感じられない。
必要とされている感じが、こういう一方通行の関係でしか得られないんだ。
随分と歪んでいるよねぇ……。 」
寂しそうに言ったアイリは、困った様に笑いながらスターフルーツの皮を剥いて俺に差し出した。
アイリの歪な心は、同じ様に歪んだ心を持つ相手にひたすら ” 与える ” 事でしか、幸せを感じられない様だった。
人から何も貰っても受け取れないから、相手に ” 与えて ” 孤独を癒やす。
だからアイリの現在の幸せは、目一杯わがままを言われて、頼ってくれて、そしてそんな相手に与え続ける事。
俺は俺でそれを受け取る事がベストだと分かっているから特に罪悪感などはない。
歪んだ心同士妙な居心地の良さを感じ、俺は暫くの間アイリと俺の奇妙な関係を続ける事にした。
────どうせ、この関係は長く続かない事が分かっていたから。
「 ────ゲホッ!……ゴホッ……。 」
俺と出会ってからあまり酒を飲まなくなったアイリは、よく咳き込む様になった。
理由は単純なモノで、若い頃の無茶が祟り、全臓器が回復のしようがなく弱っているからだった。
それをアイリは分かっている様で、だからこそ死の恐怖から逃避するため、そして体を蝕む痛みから逃げるために毎日大量の酒を飲んでいた様だ。
……もう長くはないな。
アイリと出会って三ヶ月くらい。
日に日に弱っていったアイリだったが、絶対に俺に ” 助けて。 ” と言わない。
それはアイリにとって不幸せな事だから、きっと死ぬまで絶対に言わないだろう。
俺は一通り家事を終わらせて痛みに耐えているアイリの背中を擦りながら、ため息をついた。
「 ……お酒、もう飲まないの? 」
例え寿命が少しくらい縮んでも、痛みを忘れられるなら飲んだ方がいい。
そう思っての言葉だったが、アイリはフッと鼻で笑う。
「 最後くらいは ” 楽 ” に流されるの止めてみたいんだよ。 」
この言葉は何となく心の奥に突き刺さり、モヤモヤする日々が少しだけ続いたある日、とうとうアイリは倒れてしまった。
もうベッドから起き上がる事もできない。
そんなアイリを見ながら、俺は黙ってベッドの脇に座った。
” 大丈夫? ” という気遣いの言葉は、アイリを苦しめる事が分かっていた。
だから、一定の距離を保ったままの何でもない様な日常話だけをする。
「 少し前に作ってくれたサツマイモのお焼きは美味しかったな~。
また元気になったら作ってよ。 」
「 ……まさか、10枚も食べちゃうとは思わなかったよ……。 」
普段から俺達はお互いに踏み込んだ話はしなかったため、アイリの事を詳しく知らなかった。
だからたわいない話題しかなかったからという理由もあって……俺は当たり障りない話題を選んで話を振ったが、突然アイリが自分の事を語り出す。
それには驚いたが、今の最善は ” 聞く事 ” だと分かったから、黙ってアイリの話に耳を傾けた。
「 ……これでもねぇ、小さい頃は必死に努力していた頃もあったんだ……。
でも……本当に欲しかった両親からの愛情は貰えなかったよ……。
世の中っていうのは、必ずしも努力と結果は結びつかない。
要は……諦めちまったんだよ、私は……。
” 努力なんて馬鹿らしい。
結果がついてこないなら、一番楽で得する道を選ぼう。 ”
” それこそが最も幸せな生き方なんだ。 ”
その答えを……若い頃の私は選んだ。
そしてすごく楽しくて楽で……幸せな日々を過ごしたんだけどねぇ……辿り着いた先は
・・
……ココだった。 」
────ドキッ……。
アイリの言葉に少しだけ動揺した心を隠し、そっけなく「 ……そう。 」と返すと、アイリは少しだけ楽しそうに笑った様に見えた。
「 ……きっと……あんたもいつかは同じ場所に辿り着くよ。
目の前の最善は……天国の様な場所に繋がってないから。
……私って……結構美人だったからさ……チヤホヤされて……その時に一番楽で楽しく稼げる場女になって……最初は良かった……。
若さってのは最強の武器で……でも……同時に未来を見えなくする最強の曇りガラスだったんだよねぇ……。
突然その曇りガラスがなくなって視界が晴れた時は……もう引き返す事のできない所まできちまってた。 」
…………ゲホゲホッ……。
シーン……と静まり返った中で、アイリが咳き込んだので、「 休む? 」と聞いたが、アイリは話をやめようとしない。
首を横に振って、遠い過去を見ている様だった。
「 その通りさ!
私は今、久しく感じてなかった幸せを感じているよ!
……確かに私はこういう形でしか幸せを感じられない。
必要とされている感じが、こういう一方通行の関係でしか得られないんだ。
随分と歪んでいるよねぇ……。 」
寂しそうに言ったアイリは、困った様に笑いながらスターフルーツの皮を剥いて俺に差し出した。
アイリの歪な心は、同じ様に歪んだ心を持つ相手にひたすら ” 与える ” 事でしか、幸せを感じられない様だった。
人から何も貰っても受け取れないから、相手に ” 与えて ” 孤独を癒やす。
だからアイリの現在の幸せは、目一杯わがままを言われて、頼ってくれて、そしてそんな相手に与え続ける事。
俺は俺でそれを受け取る事がベストだと分かっているから特に罪悪感などはない。
歪んだ心同士妙な居心地の良さを感じ、俺は暫くの間アイリと俺の奇妙な関係を続ける事にした。
────どうせ、この関係は長く続かない事が分かっていたから。
「 ────ゲホッ!……ゴホッ……。 」
俺と出会ってからあまり酒を飲まなくなったアイリは、よく咳き込む様になった。
理由は単純なモノで、若い頃の無茶が祟り、全臓器が回復のしようがなく弱っているからだった。
それをアイリは分かっている様で、だからこそ死の恐怖から逃避するため、そして体を蝕む痛みから逃げるために毎日大量の酒を飲んでいた様だ。
……もう長くはないな。
アイリと出会って三ヶ月くらい。
日に日に弱っていったアイリだったが、絶対に俺に ” 助けて。 ” と言わない。
それはアイリにとって不幸せな事だから、きっと死ぬまで絶対に言わないだろう。
俺は一通り家事を終わらせて痛みに耐えているアイリの背中を擦りながら、ため息をついた。
「 ……お酒、もう飲まないの? 」
例え寿命が少しくらい縮んでも、痛みを忘れられるなら飲んだ方がいい。
そう思っての言葉だったが、アイリはフッと鼻で笑う。
「 最後くらいは ” 楽 ” に流されるの止めてみたいんだよ。 」
この言葉は何となく心の奥に突き刺さり、モヤモヤする日々が少しだけ続いたある日、とうとうアイリは倒れてしまった。
もうベッドから起き上がる事もできない。
そんなアイリを見ながら、俺は黙ってベッドの脇に座った。
” 大丈夫? ” という気遣いの言葉は、アイリを苦しめる事が分かっていた。
だから、一定の距離を保ったままの何でもない様な日常話だけをする。
「 少し前に作ってくれたサツマイモのお焼きは美味しかったな~。
また元気になったら作ってよ。 」
「 ……まさか、10枚も食べちゃうとは思わなかったよ……。 」
普段から俺達はお互いに踏み込んだ話はしなかったため、アイリの事を詳しく知らなかった。
だからたわいない話題しかなかったからという理由もあって……俺は当たり障りない話題を選んで話を振ったが、突然アイリが自分の事を語り出す。
それには驚いたが、今の最善は ” 聞く事 ” だと分かったから、黙ってアイリの話に耳を傾けた。
「 ……これでもねぇ、小さい頃は必死に努力していた頃もあったんだ……。
でも……本当に欲しかった両親からの愛情は貰えなかったよ……。
世の中っていうのは、必ずしも努力と結果は結びつかない。
要は……諦めちまったんだよ、私は……。
” 努力なんて馬鹿らしい。
結果がついてこないなら、一番楽で得する道を選ぼう。 ”
” それこそが最も幸せな生き方なんだ。 ”
その答えを……若い頃の私は選んだ。
そしてすごく楽しくて楽で……幸せな日々を過ごしたんだけどねぇ……辿り着いた先は
・・
……ココだった。 」
────ドキッ……。
アイリの言葉に少しだけ動揺した心を隠し、そっけなく「 ……そう。 」と返すと、アイリは少しだけ楽しそうに笑った様に見えた。
「 ……きっと……あんたもいつかは同じ場所に辿り着くよ。
目の前の最善は……天国の様な場所に繋がってないから。
……私って……結構美人だったからさ……チヤホヤされて……その時に一番楽で楽しく稼げる場女になって……最初は良かった……。
若さってのは最強の武器で……でも……同時に未来を見えなくする最強の曇りガラスだったんだよねぇ……。
突然その曇りガラスがなくなって視界が晴れた時は……もう引き返す事のできない所まできちまってた。 」
…………ゲホゲホッ……。
シーン……と静まり返った中で、アイリが咳き込んだので、「 休む? 」と聞いたが、アイリは話をやめようとしない。
首を横に振って、遠い過去を見ている様だった。
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