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第四十五章
1414 与えられた役割
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( 第二聖騎士団団長ジャリー )
10歳になる頃、私は教会に捨てられた。
理由は二つ。
一つはブスだから、そしてもう一つは役に立たないから。
両親はパッとしない容姿と、何かに突出した才能の一つもなく生まれて来た私を、毎日の様にそう罵って突き放した。
どうしてそんなことをするの?
最初はそう疑問に思っていたが、その理由はとても単純なモノで、 " 自分に似ているから。 " だ。
自分の容姿に自信がなかった母は、小さい頃からそれに強いコンプレックスを持っていたらしい。
だから必死にお洒落や化粧を学び、それでも足りずに体を売ってまで、普通よりは美しいであろう外見を手に入れた。
対して父は頭の回転が良い方ではなく、更に容量が悪く不器用で決して仕事が出来る人間ではなかった様だ。
だからこそ、必死に頭を下げ、人にへつらい、媚び、人としての尊厳を犠牲にして、やっと普通よりは良い出世をした男であったと聞いた。
そんな二人が結婚した理由は、" 世間体 " 。
それのみ。
遥か高みは望めない事を知っていた二人は、手が届く範囲内の中で一番マシだと思える同士で結婚した。
そして周りには幸せであると必死に見栄を張り、そんな中で生まれて来たのが私。
自分の最も隠したい嫌いな自分が、これでもかと形になって生まれて来た私を、両親は愛することなどできなかったのだ。
母が捨てたくて捨てたくて、やっと捨てる事ができた大嫌いな自分の容姿。
父が全てを犠牲にしなければならなかった原因の要領の悪さ、不器用さ。
その全てを持って生まれた私は両親にとってのトラウマそのものだった。
更にそれにトドメを刺したのは周囲の反応だ。
" 似てないね。 "
" 本当に二人の子供なの? "
直接言ってくる者たちはいなかったが、口で語らずとも目で語られる沢山の目に、最初に耐えられなくなったのは母だった。
「 このどブス!!
そんな気持ち悪い目で私を見るなっ!!! 」
暴言と共に叩かれた頬をおさえ呆然としていると、母の口からはタガが外れた様に、私への攻撃的な言葉が飛び出してくる。
「 そんなブサイクな顔じゃあ、誰もお前なんて必要とする奴なんていない!! 」
「 存在自体が迷惑なのよっ!!!私の視界に入るな!! 」
「 生きている事自体図々しい事を理解しろっ!!! 」
何一つ言い返す事ができずに青ざめる私に向かい、母の隣でその様子を見ていた父はプッ!と吹き出した。
「 お前は動きがトロくて目につくし、何をやらせても不器用で使えない。
それにその容姿じゃあ娼館にだって売れない。
そういうのを " 役立たず " というんだよ。
お前には何の価値もない。 」
" 役立たず "
" 価値がない "
その言葉たちは驚くほどスルッと入って来て、私は縋る様な目を母に向ける。
私をこの世に生み出してくれた人。
きっと心の奥底では私を肯定してくれる筈だと信じていたからだった。
しかし────その口から出た言葉は私の心をズタズタに引き裂く。
「 お前の名の " ジャリー " は、道端に転がる砂利から取ったものなのよ。
そんなモノに……価値なんてあると思う? 」
青ざめる私を見て満足そうに微笑む母と、口元を押さえて笑う父を見て、私は突然悟った。
きっとこの二人は、私を通して大嫌いな自分への復讐をしたかっただけだ。
” 自分を苦しめてきたモノを退治してやった! ”
まるでそう語っている様な二人の目は、私を現在苦しめている。
間違っていたのは過去の自分で、苦労して手にした今は正しいモノになった。
間違っているモノを断罪する事で、自分の心は癒えていく。
それは二人にとって堪らなく気持ちいい事だった様だ。
だから、私がそれからどんなに努力してお洒落しても、テキパキ動いても……私という " 間違い " が秀でてしまえば、自分の正当性が失われてしまう、気持ちいい事が奪われてしまう。
それを知っていた二人は、私を " ブスで役立たず " という立場に置きたがった。
結局私に求められていた役割はそれで、それ以外になろうとすると、彼らに取っては " 役立たず " になる。
つまり、世界一美人で優秀になったって、私は両親にとって " 役立たず " にしかなれないという事だ。
それでも私は…………両親に愛されたかった。
だから暴言を吐かれても、叩かれてもニコニコと笑う。
そして家事も雑用も全てボロボロになっても頑張って頑張って、両親にとっての ” 役立たず ” のまま在ろうとした。
その結果────私は10歳の時に教会に捨てられてしまったのだ。
私は必死に努力した。
血反吐を吐く思いをしながら。
自分の心を踏みつけ抑えつけながら……。
────それでも……ダメだった。
欲しかった物が何一つ手に入ることはできなかった事。
その事実は、私から自己肯定感を全て奪い、人と話すのも見られるのも怖くなる。
こんな役立たずがこの世界に存在していいの?
役立たずに居場所はあるの?
そんな気持ちで一杯になって塞ぎ込む日々は続いたが、同時に────別の何かの感情が心の中にゾワゾワと出てこようとしているのを感じて首を傾げる。
この気持ちは一体何だろう?
その答えの意味が分かったのは、鑑定を受ける直前の頃だ。
10歳になる頃、私は教会に捨てられた。
理由は二つ。
一つはブスだから、そしてもう一つは役に立たないから。
両親はパッとしない容姿と、何かに突出した才能の一つもなく生まれて来た私を、毎日の様にそう罵って突き放した。
どうしてそんなことをするの?
最初はそう疑問に思っていたが、その理由はとても単純なモノで、 " 自分に似ているから。 " だ。
自分の容姿に自信がなかった母は、小さい頃からそれに強いコンプレックスを持っていたらしい。
だから必死にお洒落や化粧を学び、それでも足りずに体を売ってまで、普通よりは美しいであろう外見を手に入れた。
対して父は頭の回転が良い方ではなく、更に容量が悪く不器用で決して仕事が出来る人間ではなかった様だ。
だからこそ、必死に頭を下げ、人にへつらい、媚び、人としての尊厳を犠牲にして、やっと普通よりは良い出世をした男であったと聞いた。
そんな二人が結婚した理由は、" 世間体 " 。
それのみ。
遥か高みは望めない事を知っていた二人は、手が届く範囲内の中で一番マシだと思える同士で結婚した。
そして周りには幸せであると必死に見栄を張り、そんな中で生まれて来たのが私。
自分の最も隠したい嫌いな自分が、これでもかと形になって生まれて来た私を、両親は愛することなどできなかったのだ。
母が捨てたくて捨てたくて、やっと捨てる事ができた大嫌いな自分の容姿。
父が全てを犠牲にしなければならなかった原因の要領の悪さ、不器用さ。
その全てを持って生まれた私は両親にとってのトラウマそのものだった。
更にそれにトドメを刺したのは周囲の反応だ。
" 似てないね。 "
" 本当に二人の子供なの? "
直接言ってくる者たちはいなかったが、口で語らずとも目で語られる沢山の目に、最初に耐えられなくなったのは母だった。
「 このどブス!!
そんな気持ち悪い目で私を見るなっ!!! 」
暴言と共に叩かれた頬をおさえ呆然としていると、母の口からはタガが外れた様に、私への攻撃的な言葉が飛び出してくる。
「 そんなブサイクな顔じゃあ、誰もお前なんて必要とする奴なんていない!! 」
「 存在自体が迷惑なのよっ!!!私の視界に入るな!! 」
「 生きている事自体図々しい事を理解しろっ!!! 」
何一つ言い返す事ができずに青ざめる私に向かい、母の隣でその様子を見ていた父はプッ!と吹き出した。
「 お前は動きがトロくて目につくし、何をやらせても不器用で使えない。
それにその容姿じゃあ娼館にだって売れない。
そういうのを " 役立たず " というんだよ。
お前には何の価値もない。 」
" 役立たず "
" 価値がない "
その言葉たちは驚くほどスルッと入って来て、私は縋る様な目を母に向ける。
私をこの世に生み出してくれた人。
きっと心の奥底では私を肯定してくれる筈だと信じていたからだった。
しかし────その口から出た言葉は私の心をズタズタに引き裂く。
「 お前の名の " ジャリー " は、道端に転がる砂利から取ったものなのよ。
そんなモノに……価値なんてあると思う? 」
青ざめる私を見て満足そうに微笑む母と、口元を押さえて笑う父を見て、私は突然悟った。
きっとこの二人は、私を通して大嫌いな自分への復讐をしたかっただけだ。
” 自分を苦しめてきたモノを退治してやった! ”
まるでそう語っている様な二人の目は、私を現在苦しめている。
間違っていたのは過去の自分で、苦労して手にした今は正しいモノになった。
間違っているモノを断罪する事で、自分の心は癒えていく。
それは二人にとって堪らなく気持ちいい事だった様だ。
だから、私がそれからどんなに努力してお洒落しても、テキパキ動いても……私という " 間違い " が秀でてしまえば、自分の正当性が失われてしまう、気持ちいい事が奪われてしまう。
それを知っていた二人は、私を " ブスで役立たず " という立場に置きたがった。
結局私に求められていた役割はそれで、それ以外になろうとすると、彼らに取っては " 役立たず " になる。
つまり、世界一美人で優秀になったって、私は両親にとって " 役立たず " にしかなれないという事だ。
それでも私は…………両親に愛されたかった。
だから暴言を吐かれても、叩かれてもニコニコと笑う。
そして家事も雑用も全てボロボロになっても頑張って頑張って、両親にとっての ” 役立たず ” のまま在ろうとした。
その結果────私は10歳の時に教会に捨てられてしまったのだ。
私は必死に努力した。
血反吐を吐く思いをしながら。
自分の心を踏みつけ抑えつけながら……。
────それでも……ダメだった。
欲しかった物が何一つ手に入ることはできなかった事。
その事実は、私から自己肯定感を全て奪い、人と話すのも見られるのも怖くなる。
こんな役立たずがこの世界に存在していいの?
役立たずに居場所はあるの?
そんな気持ちで一杯になって塞ぎ込む日々は続いたが、同時に────別の何かの感情が心の中にゾワゾワと出てこようとしているのを感じて首を傾げる。
この気持ちは一体何だろう?
その答えの意味が分かったのは、鑑定を受ける直前の頃だ。
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