【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第四十六章

1442 ” 想い ” を貰う

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( オリビア )

気休めの言葉を吐き、その場を濁そうとしても無駄。

そうハッキリ伝えてやったのだが……爺さんはフルフルと首を横に振った。


「 いや~違う違う。

多分ね、全部 ” 運 ” だよ、 ” 運 ” 。 」


「 ……へっ……? 」


私に対する気遣いの様なモノは微塵も感じられず、本当にただ思っている事を口にした爺さんに固まってしまう。

すると爺さんは、やれやれと困った様に眉を下げながら、私の手をゆっくりと離した。


「 この世界の中で、意味がある事って、実はすごく少ないんじゃないかな?

そもそも生まれる場所は ” 運 ” だし、持って生まれてくるモノだって ” 運 ”

そして、その持っているモノをどう使って生きていくかが ” 個性  ” なんじゃないかな~と思っているよ、俺は。

だから、君と同じ境遇で、悲しい選択をする人だって沢山いる。


────────こんなふうに。 」


爺さんは自由になった両手を私の方へゆっくり伸ばし────────……まるで首を締める様に触れる。

恐怖で青ざめる私を……やはり爺さんは静かな瞳で見ていた。


” あの……これ、使って。 ”


そう話しかけてきた少女に、私は────……?


「 …………っ! 」


まるで全身に冷水を浴びたかの様にヒヤッ……と体の体温が下がる。

そして押し黙ってしまった私を見て、爺さんは首から手をゆっくりと離した。


「 ” 神様は乗り越えられる試練しか与えない ”

俺はその言葉がすごく好きだよ。

その内容が好きなんじゃない。

誰かが誰かのために考えた ” 辛い ” を乗り越えるための言葉だから。

そこには誰かに向けられた ” 頑張れ ” っていう想いがある。

それを貰えるって、すごく嬉しい事だなって思うんだ。 」


「 ば……かじゃないのか……?普通じゃない……。

そんな気休めな言葉が嬉しいなんて……。 」


自分でもどうかと思うくらい弱々しい言葉で返すと、男は困った顔で頭を掻く。


「 俺は鳥頭で普通の人より難しい事を考えると、頭がパーンしちゃうんだ。

だから難しい事は分からない。

だけどさ────……。 」


────────ビシビシッ!!!!!


爺さんの話が進む度、突然真っ赤な空に小さな亀裂が入っていく。

ギョッ!として空を見上げると、まるでゴミの様な空の破片がパラパラと雨の様に落ちてきた。

それが当たって痛いのに……爺さんは全然痛がる様子もなく、この不思議な現象自体に気がついてない様だ。

そのため空を指差し、その異常事態を伝えようとしたのだが……爺さんが嬉しそうに笑いながら、先に口を開く。


「 ” 想い ” は誰から貰う最高のプレゼントだよ。

だからそれを上手く受け取れない事が……俺は一番悲しい事だと思う。 」


「 ────っ!!そんなものっ……そんなモノ何の役にも立つものかっ!!!

世の中は無情で、残酷で…… ” 使う ” か ” 使われるか ” の2つの関係性しか存在しないじゃないかっ!!!

私はそんなの……っ……欲しくないっ……!! 」


あまりにも馬鹿な事を言うものだから、つい今の状況も忘れ、またカッ!となって怒鳴りつけた。

すると爺さんは、この時初めて悲しげな顔をする。


「 君は受け取りたいと思っているから、ここに俺がいる。
                  
見えないモノを見える様にするには……なんだ。

人は……          ない……        から……。 」


最後の爺さんの言葉はなぜか私の意識に入らず理解できなかった。

そのため訝しげな目で睨んでやったが、平然とした様子の爺さんは突然私の手を指差す。


「 ……? 」


その視線に釣られて、私が自分の両手を見下ろすと────そこにあるはずの自分の両手が無くなっている事に気付いた。


「 う……うわぁぁぁぁぁぁ!!!! 」


痛みもなく、出血もしていない。

ただ肘から先の手が無くなっている!

驚き叫ぶ私の前で、爺さんはやはりのほほんとしていて、続けて私の足元を指差す。

そのため今度は、恐る恐るその指を追って足元を見下ろしたのだが……そこは先ほどと変わらぬ赤黒く爛れた大地があるだけだった。


「 な……なにを……。 」


「 大丈夫だから。

さぁ、下に向かって ” 手 ” を伸ばしてごらんよ。

そこは綺麗な泉だから。 」


” でも……伸ばす手がないんだ……。 ”


そう伝えたいのに声が出なくて……更に、爺さんの様子が普通過ぎたのと、ありえない事の連続で、多分私は正気ではなかったのかもしれない。

そのため言われた通り、失くしてしまった手を下に向かって伸ばしたのだが────……そこで無いはずの指先に何かが触れた様な気がした。


” ……気持ちいい……。 ”


その感触は紛れもない、冷たい水の感覚で……。

渇望していたその感触は、暑さで爛れた体に染み込んでくるようだった。


ここで喉の乾きを思い出した私は、その水の感触を無いはずの手で救い上げると、そのまま飲む様に手を上に上げる。

すると口の中一杯に水の味が広がり、喉の方へと流れていくと……喉の乾きとともに心の乾きまでものすごい速さで潤っていくのを感じて目から涙が溢れ出す。
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