【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
1,459 / 1,649
第四十六章

1443 祈り

しおりを挟む
( オリビア )

ポロポロ……。

ポロポロ…………。


それを止めようとしても止める事はできなくて……。

ハッ!と気づけば、なかったはずの両手があって、下には美しい泉が広がっていた。

目から落ちては泉に波紋が広がっていくのを呆然と見下ろしていると、爺さんが嬉しそうに泉に手をつけて笑う。


「 綺麗だよね。でも見えない人ってたくさんいる。

きっと受け取れない人には見えない。

自分に向けられているモノを。 」


「 受け取る……?

私は……何も……与えてもらってなんか……。 」


そこで頭の中にパッ!と浮かんだのは、差し出されたタオルだった。

そして ” 大丈夫? ” という言葉も……。


私が初めて ” 使おう ” としたモノ。


────ヒク……っ……。


口元が引きつり、血の気が下がる。

すると、そんな私を見下ろした爺さんは、さっきまでなかった私の手をギュッと握った。


「 一度でもその ” 先 ” に進めば、もう一生何も見えなくなる。

確かに、君の人生は ” 辛い  ” が沢山だ。


だけど────……だからこそそれに負けなければ、君は誰よりも強くなれる。


だから強くなって ” 辛い ” を与えようとする奴らを、君の考えるやり方でぶっ飛ばしてやればいい。

それでそいつらから、根こそぎ ” 楽しい ” を奪ってやれ。

目指せ!ナンバーワン!

強くなって、 ” 辛い ” を全部叩きのめしてやれば、人生はめちゃくちゃ楽しいよ! 」


カラッ!と笑った爺さんは、私の手を掴んだまま、勢いよくバンザイをする。

すると、まるで見えない何かが空に打ち上がった様な気がして……それと同時に空が大きな
                     
亀裂音と共にパリィィィィ────ンっ!!!としまった。


すると亀裂の先に見えるのは、真っ青な青空!


赤い空は跡形もなく消えていき、まるで最初から青空の下にいたかの様であった。


「 もう何が起きても驚かない自信があるな……。 」


私は晴れた空を見上げた後……そのまま周りの景色を改めて見つめる。

すると、足元に広がる泉を中心に大地は潤っていたが……まだまだその先は赤く爛れた大地が広がっていた。


その景色を目に焼き付けていると、爺さんはゆっくり私の手を離す。

私は自由になった手を見下ろし…… ” 想い ” をくれた少女と、” 辛い ” を与えてくるクソみたいな両親の姿を思い浮かべた。


ぶっ飛ばす相手は ” 辛い ” を与えてくる奴ら。

私は絶対に、もうそれを間違えたりしない。


それを間違えれば、私は ” 想い ” を受け取るための手を失くし……一生この美しい景色を見ることができなくなる。


「 ぶっ飛ばしてやるよ。

全部の ” 辛い ” と……それを与えてくる奴らを全部……。 」


ボソッと呟いた時には……あの爺さんは泉に波紋だけ残して消えていた。




────ハッ!!


気がつけば目の前には泣きそうな顔をしながらタオルを差し出す少女の姿が。

そして、私は両手をその少女の首に向かって伸ばしている最中であった。


そのため、直ぐにその手を動かし、差し出されたタオルを掴む。


「 ありがとう。 」


生まれて初めて口から出た言葉は、ジワジワと乾いた体に染み渡り凍っていた心を動かしてくれる。

向けられた想いが嬉しい。

” 嬉しい ” は、幸せな気持ちを運んでくれる。


その気持ちいい感覚に思わず笑みを浮かべると……突然目の前の少女がワー!と喋りだした。


「 いつも怪我だらけだったから心配だったの!

本当はもっと早く声を掛けたかったんだ……。 」


私を害そうなどとは微塵も思ってない優しい言葉に泣きそうになる。

それをグッとこらえ黙る私に、その少女はヒソヒソと声を潜めて話しだした。


「 今、毎日怪我してるお姉さんをどうにか助けようって、大人たちが教会に駆け寄っているんだ。

アイツの目があるから、慎重にって……。

きっとあと少しの辛坊だよ。

もうすぐお姉さんも皆も自由になれる! 」


キラキラ輝く目をまだ真正面から見れなくて、渡されたタオルで顔を隠す。


こんな諸悪の根源である奴らの娘の私を……皆助けようとしてくれていたのだという。


その事実を知ると、今まで頭の中に浮かんでいた周りでヒソヒソと私を憎み囁く声は消え、笑っていると思っていた顔は、一瞬で悲しげに歪む顔に変化した。


私は────…………私は一体どこの世界を見ていたのだろう?


タオルに埋もれていた顔を上げ、完全に覚めた目でこの世界を見ると……この世界は残酷で無情で……そして美しいモノでもあるんだと思った。


 ” 想い ” は誰から貰う最高のプレゼントだよ。

だからそれを上手く受け取れない事が……俺は一番悲しい事だと思う。


私は……世界で一番悲しいヤツだったんだな。


「 早く悪いヤツがいなくなりますように! 」


突然少女が神に祈りだしたので……私も一緒に初めて神に祈りを捧げる。

頭の中にいたのは、この世界を見せてくれた爺さんだったけど……。


しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話

あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」 トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。 お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。 攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。 兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。 攻め:水瀬真広 受け:神崎彼方 ⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。 途中でモブおじが出てきます。 義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。 初投稿です。 初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

【大至急】誰でもいいので、魔王からの求婚を穏便に断る方法を教えてください。

志子
BL
魔王(美形でめっちゃピュア)×聖職者(平凡)のお話。 聖女の力を持っている元孤児ロニーは教会で雑用をこなす日々。そんなロニーの元に一匹の黒猫が姿を現し、いつしかロニーの小さな友人となった。 注意)性的な言葉と表現があります。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

処理中です...