【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第四十六章

1451 背後にいるモノ

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( オリビア )


「 こんなになるまでよう頑張ったのう。

お主の怒りはよく分かる。じゃが、落ち着け。

集団化した ” 悪 ” を裁くには、とても時間が掛かるのじゃ……。

ここでアイツラを断罪すれば、他の仲間たちによってこの街は復讐されるじゃろう。

それこそ一人一人……弱い者から順番に消されていくぞ。

証拠も全員総出で消されて、もう裁く事はできぬ。

自分以外にも大事を持つ ” 善 ” に、集団化した ” 悪 ” を一気に倒すのは不可能なんじゃ。

それこそ……おなじ ” 悪 ” でも無い限りは……。 」


「  そ……んな……。

じゃあ……善人は……ただ、我慢しろ……と?

それが ” 正しい世界の姿 ” ……なのです……か? 」


絶望を感じ、悔しさと怒りでブルブル震えながらそう尋ねると、ヘンドリク様は困った様に眉を下げたが……私の目をまっすぐ見つめ返して言った。


「 アレが ” 正しい ” と思わないから、皆戦うのじゃ。

自分なりの戦い方でな。 」


ヘンドリク様は私から目を逸らすと、父と母を睨みつける。

その瞳の奥には激しい怒りの感情があり、私は自分の浅はかさを恥じた。


この人は、怒りを抑えて大事なモノを守りながら戦っているんだ。

その想いを理解し、私も大事なモノを守りながら一生アイツラと戦ってやろうと誓う。


自分なりの戦い方を探す。

まずはそれからだ。


少しだけ動ける様になってきた体を必死に動かし、上体を起こして父と母を睨みつけると、ジーナや街の人たちも、同じ様に二人を睨みつけた。


” 悪  ” とは別のやり方で戦う。

善人はそうやって終わりの見えない戦いをし続けて生きていかなければならないのだ。

多分、それがこの幸せの ” 代償 ” なんだと思う。


私がグッ……と唇を噛み締めて、怒りを抑え込んでいると、父と母は勝ち誇った様な顔で笑った。


……いつかぶっ殺してやるからな。


そんな決意を胸に刻んだ私だったが……突然、ヘンドリク様の様子が変わった事に気づき、そちらへ視線を移す。

すると、ヘンドリク様は汗をダラダラと掻きながら立ち上がり、父の方を睨みつけた。

先程までの余裕は見られず、酷く警戒した様子で睨んでいるため、父と母も少々動揺したようだ。

父が訝しげな目をヘンドリク様へ向けて言った。

                      
「 何だよ、急に……。そんな警戒しなくても、もう何にもしねぇよ。 」


「 ……お主など警戒しておらん。

ワシが警戒しているのは…………後ろにいる ” モノ ” に対してじゃ。 」


「 ────はっ?? 」


父と母は勿論の事、私も街の人々も、ヘンドリク様の睨んでいる視線の先へと視線を動かしていったのだが……ソレに気づきゾッ!!と恐怖に身を凍らせた。


父のすぐ背後に一人の少年が立っていたからだ。

気配すらなく……まるで最初からそこに立っていたかの様に、自然に。


「 ────っ!!!!?? 」


その少年が目に入った瞬間、今まで味わった事のない恐怖が生まれた。

そして、体中が ” 逃げろ ” ” 逃げろ ” と警告を発してくる。

こんな事初めてで……でも、嫌と言うほど思い知らされたのは……。

  
コレは

触れてはいけない ” 何か ” だ!という感覚だ。


「 ……っ────!!!! 」


多分父も母も、私と同様の感覚を持ったのだろう。

慌ててその少年から距離を取り、戦闘態勢をとった。


その顔に余裕などなく、青ざめて汗をダラダラ掻いているため、その場は緊張に包まれる。


「 お……お前は……一体……。  」


父が震える唇でやっとそう尋ねたのを見守りながら、私はその少年をジッ……と見つめた。


多分歳は私と同じか……それよりは上?かもしれない。

まだ少年のほっそりした体をしていて、しかし背はかなり高い事から、将来を考えると、中々良い体格になりそうだ。

もしかして戦闘職の資質持ちかもしれない。

しかし、それよりも印象に残ったのは、黒に限りなく近い灰色の髪だ。

パッと一瞬なら黒色に見えなくもない。


そんな禁忌の色を持つその少年の顔をジッ……と見つめたが、どんな顔をしているのかは、その半分しか見えなかった。

なぜなら、そいつは目元が主に隠れるハーフタイプの黒い仮面を被っていたから。


禁忌と言われている黒に近い髪、黒いハーフ仮面……更には黒いロングコートを肩に掛けている姿は、まるで邪神そのものの様であった。

更に恐ろしい程魔力反応が静かで……そんな外見と中身の大きな差がまた人に恐怖を与えてくる。


────強い。

多分レベルを測る事すらできないほど……。


その未知な存在に対して震える体を必死に抑えていると、そいつは顔の下半分から見えている口元を大きく歪めてニタァァ~と笑った。


「 みぃ~つけた。そろそろの時期が来たな。

────ククッ。

いい感じに熟していて嬉しいぜ。 」


「 ……はぁ?何を言ってやがるんだ。てめぇ……。 」


父は必死に戯けた様に言ったが、弱々しく声のトーンとテンションは低い。

その得体がしれない存在に恐怖しているのが分かる。

そしてそれがお見通しとばかりに、そいつは心底馬鹿にした様に鼻で笑った。
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