【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第四十七章

1465 踊る人生

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( ヘンドリク )


「 ……これはこれは、Sランク冒険者のヘンドリク様ではありませんか~。

本日はご旅行か何かでこちらに?

こ~んな田舎、特に観光するモノなんてないと思いますけどねぇ~? 」


「 まぁ、そんな所かのぉ。

しかし……随分と大騒ぎしていたようじゃが……祭りごとでもしておったのかな? 」


軽いジャブをする様に会話を続ける。

ここで答えの選択肢を間違えれば、面倒な事になると知っているからだ。


その後、奴はペラペラと嘘八百を並べて説明しだすが、下手な発言をすれば、全国に散らばっている他の仲間たちがどんな動きをするのか分からない。

そのためニコッと笑みを浮かべて、それに答えた。


「 ……ほぅ?そうかそうか。なら間に合って良かったわい。

じゃあ今後はもう二度とこんな事がない様に、信用できる冒険者をこの街に在住させよう。

構わぬな? 」


「 ……へぇ~……?信頼できる冒険者様を……ねぇ?

────ま、良いんじゃないですか~?

治安が良くなって助かりますよぉ~。

……ただ、長くいついてくれるといいですけどね~。

ほら~、最近物騒でしょ?

例えば……ただ歩いているだけだったのに、ブスッ!……とかねぇ?

そういう事も、あるかもしれませんねぇ~? 」


” お前たちは見張られている。 ” 

そう暗に告げてやると、奴らは逆に、秘密裏に処理すると脅してきた。


大事が自分以外にない者達を完全に抑え込むのは難しい。

それをこういう時に、嫌というほど思い知らされる。


結局二十四時、間関係者全員を見張るなど不可能だ。

ましてや貴族の協力もあっては……。


悔しい想いを抑え込んでいると、突然足元の転がっているオリビアが息も絶え絶えな状態で言った。


「 あい……つらが……街を……っ!

証言が必要なら……わた……しが……っ!! 」


その目は殺気だっていたが……やはりその先は、自分を理不尽に認めてくれない世界へは向いていない。

それがワシの心をコツンと叩く。


これから長い長い戦いになるだろうと思う。

しかし、ワシはワシのできる精一杯をしようと、オリビアに敬意を持ってそう誓ったのだが……次の瞬間、恐ろしい ” 何か ” の気配がして、息が一瞬できなくなるほどの恐怖を感じた。


何じゃ……?

この気味の悪い気配は……。


恐る恐るその気配の方へ視線を向ければ、黒い仮面をつけた少年?が立っている。

とても静かで澄んでいる気配なのに、恐怖がベッタリ纏わりつく……そんな不可解な気配。


その恐ろしい気配は、以前一瞬だけ感じた気配に瓜二つで……直ぐにその時の事を思い出した。


以前、ある街でどうしようもない盗賊まがいの貴族が、自分の思うがままの支配をしていた時の事。

貴族という身分が故に、しっかりとした証拠が必要で待機していた時、突然この気味の悪い気配を察知し、その現場へ向かったのだが……そこで全てが終わっていたのだ。
                           

その貴族の豪邸は、まるでチーズの様に沢山の穴開き状態になっていて、建物同様穴だらけの貴族の男と他の私兵や使用人らしき者達が豪邸から吊るされていたからだ。

もはや元の面影を探すのは不可能なほど穴だらけになっていた死体を見上げ唖然としていると、近くでガサッという物音を聞き、そちらに視線を向ける。

すると、そこには門番らしき男が一人、呆けた状態で座り込んでいたので……直ぐに駆け寄った。

するとその男は、ポツリポツリと自分が目にした出来事を説明し始める。


「 と、突然正門から……変な黒い仮面を被った子供がやってきたんです……。

それで……早く帰った方がいいって……俺、言いました……。

ここの貴族は気まぐれで何をするか分からないから……心配で……。 」


「 子供??────黒い仮面……。 」


黒は禁忌の色と言われているため、そんな色の仮面をあえて付けるのは少々妙だ。

男はそれからもガタガタと震えながら、必死に説明を続けた。


「 そ……そしたら……その子供は…… ” お前は使っては駄目だな。 ” って……。

一体何の事だろう?って思って尋ねようとしたら……隣にいた上司が……その子供に掴みかかろうとして……。

そしたら一瞬でその上司の両手が穴だらけになったんだ。

それで情けなくも尻もちをついている俺の前で…… ” そっちのお前は使っていいモノだな。 ” って……。

気がついたら、この館の貴族の男も……他の使用人達も私兵も……全員殺されました。

生き残ったのは……多分俺だけ……。  」


「 ” お前は使っては駄目 ” ? ” そっちのお前は使っていいモノ ” ??

一体どういう事なんじゃ……?

いや、それより……。 」


さっぱり意味の分からない言葉に首を傾げたが、それよりも真っ赤に染まっている景色を見て青ざめる。


たった一人で全員を……??


震えながら祈り始めた生き残りの男を見て、ワシは考え込んだ。

この男とて中々の実力者の様だ。

そんなレベルの者達が沢山いたはずなのに、誰一人手も足もでない実力の持ち主か……。


その事実にゾッ……とし、突如現れた恐ろしい敵になるだろうと覚悟をしていたのだが────……実際はそうはならなかった。

────というのも、その謎の少年は問題ばかり起こす、極悪人しか手に掛けなかったからだ。


そのためニコラ王は、完全にその少年を警戒対象から外し、形だけ指名手配扱いするに留めているし、ワシらのようなアーサー派閥寄りの戦闘機関からしてもすっかりその対象から外れている。


まさかこんな場所で出会えるとは……。


ワシは圧倒的な力で、オリビアの父と母を始末してしまった少年を見て、ゴクリと喉を鳴らす。


その少年が、実際に目の前で ” 悪 ” の気質を存分に発揮し、同じ ” 悪 ” を追い詰める姿を見ていると、非常に複雑な想いがあった。

お互い天敵ともいえる存在同士では、強い方が勝つ。

結果は、その少年の完全勝利で終わり、これから続くであろう長い長い戦いはあっけない程簡単に消え失せてしまった。


そうしてそのまま謎の少年は消え、自分たちを苦しめてきたモノ全てに開放された街の人々は喜んだが……結局これから幸せになれるかは自分達次第。


足を止めたモノに幸せは訪れない。

だが、既に踊りだしていた街の者達は大丈夫だろう。

必死な形相で悪に立ち向かっていた街の人々の姿を思い出し、笑みを零した。


そして、それはオリビアもだ。


「 私は…… ” 悪 ” が許せない。

全部ぶっ殺してやりたいと思っている。

でも……きっとあの少年と同じ道へは行けないと思う。

だから────これから探す。

自分の元から持っている気質と、今の自分が満足できる生き方を……。 」


「 そうか……。 」


オリビアはこんなクソみたいな世界の中で、自分の答えを出した。

そして更に力を求めて、ワシに弟子入りしたいと頼み込む。

絶対に大丈夫だろうとは思っていたが、つい意地悪くワシは聞いてしまった。


「 親の因果は非常に強力な恨みの念となってお主を苛む。

時には酷い八つ当たりや理不尽な想いもするだろう。

それでもお主は────この世界に憎しみを持たずにいられると思うか? 」


すると、オリビアはしっかりとワシの目を見つめ────迷いなく答える。


「 はい。

だって世界はとても綺麗なんだと……もう知っていますから。 」



それからオリビアはワシの初めての弟子になり、その後はザップル、パウロ、クロエ、サロと弟子は増えていった。


オリビアは、オリビアなりに正攻法で ” 悪 ” を討つ道を選び、ザップル達は誰もが自由に外へと飛び出せる家の様なクラスを創り人を救う。

それが今はワシの誇りであり、救いになった。


” ワシもい~れ~て! ”


いつの間にか歌って踊る皆を見て、ワシも全力で走り出す。

自分も踊って歌って……そして最後の時まで、そのまま皆と踊り続けたいと……そう思う。


それが今のワシが選んだ世界の救い方だ!


目の前でSランクモンスター討伐という偉業を成し遂げた仲間たちを見渡し────ワシはニコッと笑った。
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