【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第四十八章

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( ルーン )


” イメージ ” は、人から見たもう一人の自分の姿。


それは人付き合いをする際とても重要なモノで、一度それが持たれると中々消えない厄介なモノかつ自然と集団の中の自分の立ち位置を決めるものでもある。

アタイはそのイメージとは全く違う ” 個 ” を持った人間で、それに苦しめられ続けてきた。


沢山いた兄たちの中で、アタイは一番チビでガリガリで……。

だから貧しい生活の中で、迷うことなく捨てるという選択肢を選ばれた。


これは貧しい街ではそれなりにある ” 子選び ” という悪習で、教会の子供を保護する制度を最大限に利用するモノであった。


沢山子供を生んで、自分たちのイメージに合う子供だけを手元で育てる。

そして役に立ってもらおう。


それが目的の ” 子選び ” で選ばれなかった子供は、教会へ捨て、育ててもらうというわけだ。

アタイはつまり、その役に立たないイメージで溢れた子供であったと言う事。

でも、実際は兄たちの中で一番力はあったし、魔法の才能だってあったのに……。


結局人はイメージでしか人を判断せず、本質を見極めようとしないモノでこの世界は溢れている様に思えた。

勿論自分だってそんなイメージを抱いて人と付き合うのだから、それを ” 悪 ” であるとは言えないし、悪いモノとは思っていない。


ただ────……人の持つイメージによって、自分が変わってしまう事が怖かった。



” ルーンは小さいから弱そう。 ”

” 派手な事とか嫌いそうだよね~。大人しそう。 ”

” ルーンちゃんは、外で遊ぶより中で遊ぶ方が好きなんじゃない? ”

” 少食そう。 ”


教会に捨てられてからも、アタイのイメージは家でのイメージと同じ様でそれが ” 正しい ” 事の様に思えてくる。


” 赤が嫌いそう! ”


「 うん、アタイは赤が嫌い。 」


” 戦うのとか嫌いそう!魔法の才能はあるのに勿体ないね。 ”


「 うん、アタイは戦うのが嫌い。 」


そうして、どんどんとアタイは人の作り出すイメージによって創り変えられていった。

気がつけばアタイは自分で自分をイメージできなくなっていて……でも、それで困る事は ” 特になし。 ” 

それで普通に友達もできたし、普通に生活もできたからそれでいいんだと思っていたのは……孤児院にクソみたいな貴族の男が来るまでだった。


その街を治めていたある貴族の男は正真正銘のクズ。

普段から身分を振りかざし、自分の愉快のために酷い嫌がらせや暴力を振るう男で有名な奴だった。

その魔の手は孤児院にまで伸びたが、教会側も子爵の身分、しかも教会に多額の寄付金を治めているとなっては中々強く出れない。

そのため神官達は自分たちの体を張ってそれに耐えていたのだが、ある日突然孤児院にやってきた男はとんでもないことを言い出した。


「 もうすぐ成人を迎える息子に、閨の練習用の者を何人かプレゼントしたい。

やっぱり使うモノは、なんでも新品のモノがいいからな。

この孤児院からちょうどいいのを選んで連れて行く。 」


唖然とする神官達と私達孤児達を見まわし鼻で笑う男は、とても人間には見えない。

そして運悪く男と目が合ってしまったアタイは、ジロジロと体中を舐める様に見られゾッとし、更に次に男が言い放った言葉に顔色を失くした。


「 お前みたいなチビで地味な女は、閨だといい味出すんだよな~。

お前はそのイメージピッタリだ。」


” アタイは今度はそのイメージに変えられるの? ”


「 ~~っ~~……っ!!! 」


嫌だと叫びたかった。

でも、アタイはアタイのイメージを浮かべる事ができずに、ただ漠然とそのイメージへと自分の心は流れていく。

黙って震える私や他の子供達の前に立ち、神官達は必死に猛抗議をしたが、その男は余裕で笑った。


「 俺のバックにはエドワード様がついているんだ。

この程度もみ消すのはたわいないんだぞ? 」


「 ────っ!!それでも……!!神の使いである子どもたちを渡すわけにはいかない! 」


勇敢に立ちふさがる神官達にイラッとしたのか、その男は神官達を殴りつける。


「 俺に逆らうんじゃねぇよぉぉぉっ!!!

この平民の神官如きがぁぁぁぁっ!!!

お前らみたいなゴミ平民は俺の言う事にハイハイ従ってりゃ~いいんだよっ!! 」


「 ────ぐっぅぅっ……っ!! 」


そしてそのまま倒れている神官達を殴る蹴るの暴行を加え始めたのだが、アタイは怖くて怖くて動けなかった。

その男の顔は愉快で満ち溢れていて……人を傷つける事が楽しくて楽しくて仕方がないのだと顕著に語る。


────もう駄目なんだ……。


そのまま殴られ続ける神官達を見て、震える手をゆっくりと伸ばした。


” やめて、やめてよ。 ”

”  アンタのイメージ通りになるから、優しい神官様達をこれ以上傷つけないで! ”


人の描くイメージ通りに生きていけば、誰も傷つかない。

だからそれが ” 正しい ” 世界なんだ!


答えを出したアタイが、絶望する心を奥底に隠して神官達の元へ駆け寄ろうとすると、突然バンッ!!と大きな音を立てて孤児院の扉が開かれた。

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