【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
1,552 / 1,649
第五十章

1509 何も持ってない

しおりを挟む
( ソフィア )

リーフ様が呪いの蝶を倒した瞬間、真っ黒に染まっていた空は晴れ、なんと腐り朽ちていた森に花が咲いた。

暖かく爽やかな風が吹く中……私はホッと安堵の息を吐き出す。


「 リーフ様が……アレを倒して下さったのですね。 」


気が抜けてその場に崩れ落ちそうになったが、まだ戦いは終わっていない。

そのため必死に足を踏ん張らせ、その場に立ち続けた。


「 まだモンスターの行進は続いている。

それにこの後、私の声を直接国民達に届けなければ……。 」


王女としての戦いは、これからが本番でもある。

共に戦い、興奮冷め止まぬ国民達へ、感謝の気持ちと共にこれからこのソフィアが脅威に立ち向かう事を示さねばならないのだ。

奇跡の様な勝利を収めた今が、エドワード派閥の勢いを落とす最大のチャンス。

このチャンスを逃しては駄目。


「 まずは教会の避難所の方へ行かなければ……。 」


緊張とプレッシャーを少しでも緩和するため、大きく深呼吸をした後、下の階へ降りるため後ろを振り返ると────……。



一人の男がまるで幽霊の様にボンヤリと立っていた。



上がりそうになった悲鳴を飲み込み、その男を注視すると……その顔には見覚えがあり、背筋を凍らせる。


「 ……ルノマンド。 」


「 ……終われない……終われない……終われない…………終われないんだ……私は……こんな所では……っ……! 」


顔色は悪く真っ白で、更に額からは絶え間なく汗が流れ落ちている、元暗殺ギルド総長のルノマンド。

全世界に指名手配されているにも関わらず、その足取りは全く掴めなかったのだが……。


「 ……やはり貴方も今回の事件の首謀者の一人でしたか。 」


疑惑から確定した事実を口にし、私は焦りから心臓が早鳴りを始めた。


ルノマンドは、公式的には< 仲介人 >という、主に話術や交渉などに特化している資質とされているが……恐らくそれは虚偽の申請に違いない。

現在気配なくここにいる事から、それは間違いないだろうと思われる。


私は力の入らない手を開け閉めし、自分の現在の状況を冷静に確認した。


まだスキルのクールタイムが終わってないため、現在私に攻撃の手はない。

つまり、このまま攻撃されれば私は────……っ!


ゴクッ……。


喉を鳴らし警戒を強めたが、ルノマンドはそんな私が見えてないかの様にブツブツと呟き続けた。


「 なんでだよ……っ……なんで私の人生はこうもついてないんだ……っ!?

何をやっても平凡!平凡!平凡!平凡っ!!!


どいつもこいつも、沢山良いものを持って生まれてくるのにっ!!

ハッと目を引く美しい顔……スタイル……周りの心を掴む話術に沢山の人の目を引く才能……なんで私は何も持ってない?!

なんでなんでなんでっ!!

私を生みだした親が悪い!周りが悪い!!

答えろよ……っ!神様なんてもんがいるならなぁ!!! 」


最後は怒鳴る様にそう言い放つと、突然近くに建っているイシュル像の首辺りが歪み、ポキっ!と折れてしまう。

そしてゴロゴロと転がっていくイシュル像の首に見向きもせず、ルノマンドは頭を抱え、髪をグチャグチャとかき回した。


「 どんなに努力したって生まれつき持っている奴らには、一生敵わない……。

頑張っても頑張っても、どうせ誰も認めてくれやしないんだ!

外見も、パッとする能力もなかった私を……両親も友達も女共も、全員俺を馬鹿にしやがったんだ!!

両親は綺麗な顔した弟ばっかり可愛がりやがってぇぇぇ~……ふざけるなふざけるなふざけるなぁぁぁぁっ!!!

だから────────────。 」


ルノマンドは、突然ピタリと動きを止め、ゆっくりと顔をあげる。


「 全員消してやったんだ。

ちょっと運がよかっただけで、調子の乗っていた奴ら全員をなぁ。 」


その顔には表情がなく……しかし目は静かな怒りと憎しみでギラギラとしていた。

自分が持って生まれたモノ全てと、そして自分が持ってないモノを持っている全ての人々を恨み、理不尽に復讐してきたらしいルノマンド。

それをぶつけられて……私は怒りに震える。


王女として、聖女として……その責任と向けられるプレッシャーとの戦い。

私は持って生まれたモノ全てを憎んでいた。

それを捨てる事もできない自分の性格も憎み……いっそ全てを捨てて逃げれたら!と思った事だって一度二度ではない。


でも……それを憎んだって、残るのは恨みだけ。

そこで止まったら……。


私はこの戦いが始まる前の事を思い出した。


” 全て消えてしまえばいい。 ”


そう思う心はずっと心の中にあって、絶望と自分の正義の心の板挟みになった私の足は、手は、全ての器官は……グズグズのトマトの様に腐って落ちてしまった。

もうそうなったら前に進めない。

それって凄く悲しくて辛い事だ。

前に進み続ける仲間たちを見ているだけで人生を終えるって事なのだから。


前に進んでいく皆の背中に怒りと憎しみが湧いて……そこにはどんな世界が広がるんだろう?
しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

神のミスで転生したけど、幼女化しちゃった! 神具【調薬釜】で、異世界ライフを楽しもう!

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
旧題:神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜  ※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!  2026/3/9に発売です!書籍は2026/3/11に発売(予約受付中)です!イラストは、にとろん様です。よろしくお願い致します!  ファンタジー小説大賞に投票して頂いた皆様には、大変感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 校正も自力です(笑)

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。 その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。 両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。 自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。 自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。 相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと… のんびり新連載。 気まぐれ更新です。 BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意! サブCPに人外CPはありますが、主人公は人外CPにはなりません。 (この世界での獣人は人間の種類の一つですので人外ではないです。) ストックなくなるまでは07:10に公開 他サイトにも掲載してます

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

処理中です...