【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第五十一章

1543 王とエルビス

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( ニコラ )

「 まさか死亡者がゼロだなんて!

これぞまさに奇跡ってヤツですね~!

そんな奇跡を連れてきてくれた救世主様にお会いできるのが楽しみです~。 」


エルビスが、いつもの様にのほほ~んとした口調でそう言ったが、随分とご機嫌なのは、鼻歌を歌いながらクルクル回り続けているのを見れば分かった。

私の身支度を整えてくれている侍女達はクスクス笑いながら、やはり機嫌が良さそうに仕事を続けている。

この度の戦いの功労者達に報奨を直接与えるため、私はその代表者達をこの王宮へ集める機会を作った。

それは、もう間もなく始まる。


「 フッ……。確かにこれは、奇跡と呼ぶのに相応しい結末だな。

全てを道連れに ” 死 ” を決意したというのに、まさかこんなどんでん返しを経験するとは……。 」


目の前に置かれている姿見の鏡には、今まで見たことがないくらい嬉しそうに笑っている自分がいた。


呪いの化け物の特殊能力によって引き起こされたモンスターの大行進。

流石にこれほどの規模で起これば、必ず犠牲者は出てしまうだろう。

そう考えていたのだが────なんと結果は ” ゼロ ”  !


至る所で連鎖反応を起こす様に、一般人まで戦い始め、まさに国民全員が戦うという前代未聞の出来事になってしまったのだ。


「 グリモアの街中で発生したモンスターの大群……その一部を倒したのが、非戦闘員の街民達だったと聞いた時は腰を抜かすかと思ったぞ。 」


「 僕も驚きましたよ~。

たまたま街の中に、統率系の資質持ちの女性がいたらしいですね。

今まで戦闘に参加した事がない様なので、残念ながら才能と気質が合わなかった人だったのでしょう。

一体どんな心境の変化があったんでしょうね~?

まぁ……そんな人達は一人や二人じゃなかったようですけど! 」


頭をグイ~と横に倒して考え込むエルビスを見て、私は目を閉じて微笑んだ。


「 どこか遠い世界の物語ではなく、自分も登場する現実の物語になったからだろう。

此度の事は、誰にとってもこれからの人生を永遠に照らす光になる。

絶望しかないはずだったこの戦いの物語は、随分と壮大な物語になったものだ。 」


「 そうでしょうね!

人は努力した先に望んだ結末があった時、人生に光を見出しますから。

これぞ、本物のハッピーエンドです!

ザマァ見ろ~! 」


るんるん♬と嬉しそうにしながら、大笑いしているエルビスに失笑した後────……私は浮かんでいた笑みの一切を消し去りエルビスに問う。


「 ……ルノマンドの件はどうなった?

Sランクを数体、更に同意があったとはいえ、SSランクのドラゴンまで閉じ込める能力……まさに国を滅ばしかねない危険な能力だ。

これがまた悪用されれば、また同じ様な事が起こり得る。 」


姿見に映るエルビスはクルクル回るのを止め、笑みを張り付けたままメガネを上に上げた。


「 クレア様に拷問を掛けて貰いましたが……やはり能力を全て失っている事は間違いないようです。

本当に奪われてしまったみたいですね~。

ヨセフ司教にも見てもらったのですが、” まるで建っていたはずの家が丸ごと消えた様だ ” って言ってました。 」


「 能力を奪う……か。

本当にそんな能力が存在しているのか。 」


聞いたことがない能力であるため、おそらくは特級資質。

ルノマンドの能力を手にしたその人物は、これから一体何をするつもりなのか……。


次第にピリピリとした緊張に包まれるが、エルビスがお手上げのポーズを取って笑い出した事で、それが飛散する。


「 ん~……。僕は放っておいて大丈夫な気がするんですよね、彼。

まぁ、勘ですけど! 」


「 ……ほぅ?なぜそう思う? 」


のほほんとした笑みに思わず力が抜けて、ため息を混じりにため息をつくと……エルビスは顎に手を当て、首を軽く傾けた。


「 だって~もし、純粋な ” 悪 ” がそんな力を持っていたら……全世界の資質は奪われていますから。 」


キラキラ~!

わざとらしく輝く目でそう言い切ったエルビスに、また失笑してしまう。


「 確かにな。 」


エルビスの言う事はご尤も。

そんな無敵の能力を手にして、未だ世界中の人々の資質が奪われていない事を考えると、少なくとも緊急的な警戒は必要ないと考えた。


「 このことはまたおいおい調べていくしかないな。

エルビス、引き続き頼む。  」


「 は~い!お任せ下さい、ニコラ王よ~!

それより今は救世主様ですよ!救世主様!

まさかカルパスが保護した子供が、ここまで成長するとは思いませんでしたね! 」


またしてもルンルン~♬とご機嫌で周りだすエルビスの横で、私はその当時の事を思い出す。


メルンブルク家の次男が生まれた際、真っ先にカルパスがエルビスに連絡をとった。

” 生まれた子供を直ぐに保護したい。 ” と。

その子供の事を聞いたエルビスはすぐに動き、カルパスをその生まれた子供の専属執事に変えさせた。
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