【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第五十二章

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( ニコラ )

譲る気はないといった圧倒されるオーラを身に纏い、コレット殿はリーフ殿に頼みこむ。

いつもは感情に乏しい、あのコレット女王が……?

その差に戸惑い、言葉を失っている私達の前で、リーフ殿はその後直ぐに ” まっ!いっか! ” と言わんばかりに、あっけらかんと答えた。


「 分かった!いいよ! 」

「 ────!感謝する! 」


パァァ~!!と今まで見たことがないくらい、眩しい笑顔を見せたコレット女王を見て、ライアン殿は顔をグチャリと潰して「 ……きもっ……。 」と呟く。

それによりまた言い合いになる……と思ったが、コレット女王は上機嫌のままリーフ殿へ話しかけた。


「 では早速────……と言いたい所だが、会う日はこちらが決めてもよいだろうか? 」

「 ??うん、いいよ~! 」


会う時期を指定?

多少の違和感を感じたが口には出さず、快諾したリーフ殿との会話を見守る。

すると、コレット女王は嬉しそうに笑いながら、読めない感情を宿した目でリーフ殿を見つめた。


「 では……リーフ殿が15歳を迎えるイシュル神の日以後、その日を出会いの日にしたいと思う。

いかがだろうか? 」

「 ────!! 」


リーフ殿は目に見えて動揺した様に見えたが……直ぐに首を振って、それを抑えた様に見える。

そしてその後直ぐにコクリと頷いたため、これも承諾した様だ。

すると、コレット殿はリーフ殿の答えを喜び、そのまま今度は私の方を向いた。


「 ────という事でニコラ殿、申し訳ないがその際の調整は任せて良いだろうか? 」


「 ……あ……あぁ、勿論だ。 」


衝撃を受けつつ、快くその役目を承諾したのだが、次にコレット殿から飛び出した言葉に、また新たな衝撃を受ける。


「 場所はレイティア王国の私のプライベートルームで頼む。

勿論我が国への移動は、専用魔道路を創る故、問題ないだろう。

良いだろうか? 」


「「 …………。 」」


私とレギン殿がどう答えればいいのか分からず固まっていると、ライアン殿が膝を叩いて笑いだした。


「 だぁ~はっはっ!!!

なんだよ、お前こういう子ネズミみたいなガキがタイプだったんだな!

無理やり番になろうなんざ、中々やるじゃねぇか!!

ちょっ~とだけ、見直したぜ~! 」


「 …………この獣以下の獅子猫が。 」


またいつもの様にストン……と表情を失くしたコレット女王が、舌打ちした後、憎々しげに呟く。

腹を抱えてライアン殿が笑う中、同じ様な事を考えてしまった私とレギン殿はひたすら沈黙した。


「 うん、分かった!

じゃあ、コレット女王様のお部屋にお邪魔しますね。

トロロン・ピックの串焼きは好きですか? 」


そんな最悪の空気の中、やはりリーフ殿はあっけらかんとした様子で頷くと、多分手土産的なモノの確認をした様だ。


「 何でも嬉しい。 」


またコロッ!と態度を変えて、笑顔をリーフ殿に向けるコレット殿を見て、” まさか本当に婿候補としてリーフ殿を……? ” と考えてしまった。


「 コ、コレット殿……リーフ殿は────……。 」


まだ成人前。

流石にそんな子供相手に女性がグイグイ迫るのは……!


意を決して発言しようと思ったのだが────……。


────ドスーン!!!


なんと上から真っ赤な巨大毛玉が落ちてきたので、言葉を切る。


「 クップルルル~♬ 」

「 あ、あげ玉。 」


ご機嫌で首を降っているのは、リーフ殿の契約獣。

白いはずの羽毛は、血で赤く染まっている。


もしや怪我を……?


気遣う視線を送っていると、リーフ殿がオロオロしながら、契約獣の羽毛をどうかと思うくらい強く擦り始めた。


「 だ、大丈夫だよね……?

まさか殺したり……。 」


真っ青になりながらブルブル震えるリーフ殿の前で、召喚獣の首元にくっついていた、黒いスライムが触手をブンブンと横に振る。

それにホッとしたリーフ殿は、ムスッ!としているレオン殿を、召喚獣の後ろに投げるように乗せると、自分自らも乗った。


「 じゃあ、俺達はそろそろお腹空いたから、現実に帰るね!

皆、バイバ~イ! 」


「 あ……。 」


コチラが何か口にするその前に、リーフ殿はあっという間に空へ。

そしてまるで流れ星のように、行ってしまった。


「 うおぉぉぉぉ!!!救世主様、ありがとうぉぉぉ!!! 」

「 ありがとう!! 」

「 ありがとぉぉぉぉ────!!! 」


それに気付いた者達は、空に向かって一斉にお礼を叫ぶ。

それは、全く止まずに歓声は続いた。いつまでもいつまでも……。


「 ……ありがとう。 」


私もそんな皆にまじり、空に向かって御礼を告げた。

そして、こんな奇跡の一部になってしまった自分を振り返り、フッ……と思う。


今、この瞬間こそハッピーエンドだと。


晴れやかな気持ちのまま、リーフ殿が去っていった空を見つめていると、突然背後から「 お父様。 」と私を呼ぶ声が聞こえた。


「 ……ソフィアか。 」


振り返らずとも分かった私が、その名を口にすると、ソフィアは静かに私の隣に並ぶ。


「 私は────……。 」


ソフィアは下を向いて一旦言葉を切った後、直ぐに顔をまっすぐ前に向けて話を続けた。


「 私の ” 正義 ” の形は、とてもお父様と似ている形をしていると思います。

でも……これからその形は、どんどんと変わっていくでしょう。

自分で削る事もあれば、周りに削られて……それでも、自分の理想の形を探していきたいです。

この広い世界で、沢山の人やモノを見ながら……。 」


「 ……そうか。

それは親として、とても嬉しい事だ。 」


ソフィアはこれから沢山の出会いによって、どんどん変わっていく事だろう。

それはかつての私も同じ。


しかし、親という立場からその成長を見るのは、嬉しい半分寂しくもある。

とても不思議な気分だと思った。

我が娘の未来を思い描き、フッ……と笑うと、ソフィアも笑う。

そして────次に言われた言葉に驚かされて、目を見開いた。


「 しかし、最初に形を与えて下さったのは、お父様です。

憧れはしっかりとした心の土台を創ってくれました。

だから、私はこれから安心して広い世界を見に行けます。

ですので────……。 」


驚いてソフィアの方を見ている私の目を、ソフィアはまっすぐ見返す。


「 少なくとも私は、お父様が間違っていたとは思いません。

ここまで私を導いて、育ててくださってありがとうございます。

そして、これからも……私の憧れであるその形を失わないで欲しいと、子としては思っております。 」


「 …………。 」


自分のしてきた事を肯定してもらう事。

ただそれだけで、私の今までの苦労も、これからまだまだ襲い来るであろう脅威に対する不安も恐怖も、全てが消えていく。

自分の人生そのものと言っていい心の形のまま、またこの美しい世界で生きていきたいと、そう思った。


「 では、もう少しだけ頑張ってみようか。

子が自分の形をしっかりと創り終えるまでは。 」


「 フフッ。よろしくお願いします。 」


ソフィアと目を合わせ笑い合った後、私達は共に周りを見渡す。

歓喜する者達。

憎々しげにそんな彼らを睨みつける者達。

そんな反応を見せる者達を見て、表情を引き締めた。


これで終わりではない。

きっと死ぬまで戦いは続く。


それを確信した私は、決意を新たにする。


王としてまた戦い続けよう。


次のハッピーエンドを目指して。
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