【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第五十三章

1594 スタンティン家のその後

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(マリオン)

「そちらの出荷は少し遅れてもかまわん。先に注文があった方を最優先にしてくれ。」


ひっきりなしに舞い込む仕事に日々忙してくしている父様は、伝言シャボンに向かってメッセージを伝えると、そのままソファーに座り込んだ。

そのタイミングで母様が、侍女にお茶を持ってくるよう命じ、すぐにテーブルの上に紅茶が置かれる。


「呪災の卵の事件から、注文や契約を結びたい貴族達の対応が間に合いませんわね。しばらくは休み無しになりそうだわ。」


母様も酷く疲れた様子で父様の隣に置かれたソファーに座り込むと、紅茶を一口飲み込んだ。

父様もそんな母様を見てから、自信も紅茶に口をつけて大きく息を吐き出す。


「あぁ、今まではエドワード派閥の手前、沈黙を守っていた貴族たちが、チャンスとばかりに声を掛けてくる。
こちらとしてもチャンスだ。
良い関係を作れそうな貴族たちをキッチリと選び、契約を結んでおきたい。」


疲れているはずの父様の目はキラッと光り、執事に命じて沢山の書類の束を持って越させると、その場で目を通し始めた。

すると、母様も同じ様に目を輝かせながら、侍女に持ってこさせた貴族女性達からの手紙に目を通し始める。


我がスタンティン家は、新たに設立したソフィア派閥を支える支柱的存在として、これからますます忙しくなるだろう。

忙しいながらも、生き生きと動いている両親を見ながら、俺はクスッと笑った。


今まで不当な扱いをされながらも、領民達を守るためエドワード派閥に入っていた者達が、一斉にソフィア派閥へ。

結果、それぞれの分野に非常に力を持った貴族たちの大量流出に、焦ったエドワード派閥の高位貴族達は、妨害工作に乗り出したが……肝心のエドワード様と、メルンブルク家が未だ沈黙している事で上手くいってない。


父様と母様が言う様に、今が力をつける絶好のチャンス。これを逃すわけにはいかない。

そんな想いを持って、書類に目を通していた父様だったが……突然何かを考え込んでいるように眉を寄せた。


「さて……次の手をどう出すべきか。
身分制度というモノがある限り、100%優位に立つのは難しいが……クズに大人しく従うつもりは毛頭ない。
どうにかして高位貴族達と不利のない繋がりを繋いでおきたいのだが、良い手はないだろうか?」


流石は父様。もう既に次の手を考えていたとは……。


尊敬の眼差しで父様を見つめると、フッ……と以前リーフ様と話した時の事を思い出した。


『マリオンも成長の証を少しづつご両親に見せないとね。』


「……私から一つ提案があるのですが、聞いて頂けませんか?」

「おぉ、マリオン。何か案があるのか?」


口を開けば、ワクワクしながら身を起こす父様と、興味津々の目を向けてくる母様……。

そんな二人の視線を一身に受けながら、俺は初めて両親とは違う自分の考えを口にする。


「魔道具を、平民の手にも渡る様にするのはどうでしょう?」

「平民に……?マリオン……それは……。」


父と母は、途端に複雑そうな顔をし、困惑している様子を見せた。


我がスタンティン家の魔道具販売は、貴族に対してのみ。

それを誇りとしてきたのは知っているし、ブランドという力の必要性も知っている。


俺がそれをちゃんと知った上で言った事を両親は確信している様で、兄の時の様に直ぐに拒否はされなかった。

それは父様と母様からの、何よりの信頼の証。

それが嬉しくてクスッと笑いを漏らしながら、自信満々に続きを話す。


「勿論、我が家からは販売しません。スタンティン家の魔道具ブランドは、無駄な争いを失くすために重要なモノですから。」

「???どういう事だ?
まさか、スタンティン家の販売ルートを2つに分ける気なのか?
しかし────それでは結果的に我が家から魔道具を販売することには変わらぬし……自分たちと同じ魔道具を平民が持っていると貴族たちから苦情も来るだろう。
下手をすればブランド力が低下する恐れも……。」


父はあらゆる可能性を考え、そう発言したが────残念ながらハズレだ。

首を横に軽く振って、父様の可能性を否定する。


「父様。現在、平民の生活は手動が基本で、中には魔道具を見た事すらない者達もいます。
その最たる原因は、魔道具が高価である事ですよね。」

「ふむ……。確かにその通りだ。
平民で魔道具を手にできるのは、裕福な家庭か商人……だからこそ、魔道具には絶対的価値がある。」

「戦闘職でも使うけど、貴族達の様に自分の生活のために使う事はないわね。」


母様も興味が出てきたのか、話に入ってきたため、俺はコクリと頷いた。
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