【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第五十三章

1598 ちょっと凹む……

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( マービン )

「 ────ヒッ!!! 」


窓の近くに立っていた兄が、ビクッ!と体を震わせ、短い悲鳴を上げる。

飛竜達は明らかに兄に対し敵意を出している様で、それに気付いた兄は更に青ざめた。


「 い……一体何があったというんだ……?

俺が領地視察に行っている間に……。 」


「 ほぅ?領地視察か……。

好きなだけ飲み食いし、好きなだけ贅沢品を買い、好きなだけ女をはべこらし毎日パーティー三昧するのが……なぁ?

随分と楽な領地視察だ。 」


父が心底軽蔑したようにそう言うと、兄はカッ!となったのか、父に向かい殴りかかった。

しかし、その拳が届く前に、父のストレートパンチが兄の顔の正面を捉える。


「 ────ヘブッ!!!! 」


カエルが潰れた時の様な悲鳴をあげて、兄は屋敷の壁に叩きつけられた。

そしてそのまま悲鳴をあげながら、顔を抑えてその場でゴロゴロと左右に転がる。


「 ヒ……ヒィィィィ~!!!

なっ……なにす────っ……。 」


鼻血と涎を飛ばしながら、父を睨んだ兄────……の首を、父は掴むと、そのまま兄の情けない顔を自分の目線の高さまで持ち上げた。


「 こんなザマで、専属騎士になって主人を何から守るのだ?

最底辺ランクのモンスターにすら勝てなさそうだが……。

まぁ、全ての仕事を下の者達に押し付け、ただ上でふんぞり返っているだけだろうな。

────そんな役立たずを、俺はライロンド家から出すつもりはないぞ。 」


「 ひぃっ!!! 」


睨まれただけで硬直した兄を見て、父はハァ……とため息をつくと、そのまままるでゴミを放り投げる様に、兄の体を投げ捨てる。

すると兄は顔面を床に強打しうめき声をあげていたが、父は周りで静かに控えている執事と守衛達に向かって命じた。


「 今直ぐマクベルの部屋の私物を運び出せ。

そして商人を呼び買い取らせろ。

それを今回の領地視察というフザけた遊戯の費用に当てる。

あとはこれから直ぐ働かせるから、マクベル用に作らせた作業着を持ってきてくれ。 」


「 は……はぁぁぁぁぁ!??? 」


兄は恐怖を上回る驚きによって、大声を上げる。

更に先程は完全無視していた執事や守衛が即座に動いたのも、相当頭にきたようで、バッ!!と起き上がり、父に食って掛かった。


「 ふ、ふざけるなふざけるなふざけるなぁぁぁぁ!!!

お、俺の私物をう、う、売る!!???働く!!??

な、何を────……っ!

お、お、お前が金は払えっ!!親の当然の責任だろう!!? 」


「 都合が良い時だけ親と呼ぶな、うっとおしい。

自分で贅沢に使った金くらい自分で出せ。

あぁ、そうそう。追い出されたくなければ、お前の今日からの我が家の仕事は飛竜のフンの掃除と処理、そして飛竜舎の掃除だ。

仕方ないよな?

飛竜にも乗れない、弱くて戦う事もできない。

おまけに事務仕事も下の者に押し付けてきたからできないと来たら、それしか仕事がないからな。

分かったらとっとと用意しろ。

ちなみに今日からお前の家は、飛竜舎の隣に立てた小屋だからな。 」


執事が持ってきたボロボロの汚い作業着を受け取ると、父は兄にそれを投げつける。

それを呆然と見つめたた兄は、パクパクと口を開け閉めしていた。


「 な、な、な…………。 」


鼻血をダラダラと垂らしながら、自分を凝視する兄に対し、父は汚いモノでも払うかの様にシッ!シッ!と手を払う。

すると、兄は父の突然の変化に動揺しながら、ヒクヒクと口端を動かした。


「 じょ……冗談────。 」


「 ────を言っていると思うか?

その腐った性格が、飛竜のフンと共に掃除できると良いな? 」


フッと鼻で笑って父が言うと、兄はカァァァ~……!と顔を赤らめ、どんどん自分の私物を運んでいく執事達や守衛達に向かい、また怒鳴りつける。


「 俺の私物に触るなぁぁぁぁ!!!この不届き者共がっ!!!

俺がライロンド家の正統なる主だぞ!?

それを、あんな下等貴族の男に……っ!

俺に今直ぐ従わなければ、お前たち全員、地獄へ送ってやるからな?

分かったかぁぁぁぁ!!! 」


往生際が悪い兄に、父は冷静に返した。


「 ” 竜を扱えないなら家に集る寄生虫だ。 ”

” 少しは役に立つ努力をするんだな、この役立たず ”

なんだろう?

お前がいつも俺に言っていた言葉だ。

だったらお前はただの寄生虫だ。

働け、役立たずの寄生虫が。 」


「 ~~っ……っ!!! 」


悔しげに父を睨むが、それ以上動かないのは、父と自分の圧倒的な力の差を知っているから。


毎日前線で戦う父と、爵位に胡座を掻いて毎日遊ぶだけの兄。

そもそも力の差を測ることすらできないんじゃないか……?


俺がタラ……と汗を掻きながら、なんとか逃げる方法を考えている兄を見つめていると……突然兄へ近づいたのは、黙ってことの成り行きを見ていた第三飛竜隊隊長のサンサだ。

サンサは、父や俺、他の飛竜隊隊長に執事たちが見守る中、スタスタと兄の元へと歩いていき────……。


────ドコォォォッ!!!


手加減なしの拳のストレートを顔に決めた。


「 ────ゴッ!!!! 」


兄は情けなくも吹っ飛び、壁に思い切り体を打ち付けられると、顔を押さえてヒーヒー!と悲鳴をあげる。


「 掃除夫とはいえ、我が隊へ来るには気合と根性が足らん。

私が直々に指導してやろう。

さっさと来い、クソガキが。 」


「 ギ……ギャ……ギャアァァァ!!! 」


そのまま兄の服を掴んだサンサは、原型を留めないくらいに容赦なく服を破り捨てていく。

そして丸裸になった兄を引きずり、「 た、助けてぇぇぇ!!! 」「 ご、ごめんなさいぃぃぃ!!! 」と叫ぶ兄をもう一度殴って気絶させた後、外へと連れて行ってしまった。


「 ……死ななきゃいいがな。 」


父がプッ!と吹き出しながら呟くと、飛竜隊のヒューイとバンが腹を抱えて笑い転げ、他の使用人達も、クスクス笑っている事から本当に兄に対して色々と思うところがあったんだろうなと思う。


「 …………。 」


俺は、なんとなくそんな兄の姿を見て……過去の自分を思い出して凹んだ。

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