【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』

バナナ男さん

文字の大きさ
20 / 39

19 ルーカスは……

しおりを挟む
「兄さん、凄いじゃないか。二ランクもステータスレベルをあげるなんて、普通はできないよ。兄さんは努力の天才だね。」

「ル、ルーカスぅ~……。あ、ありがとうぅぅぅっ。」

突然優しい言葉を掛けられて、僕の目からはブワッ!と涙が飛び出した。

自分の努力を認めてもらう事。
それが何よりも嬉しかった。

その後、ワンワンと可哀想なくらい泣きわめく僕を抱きしめて背中を撫でてくれたルーカス。

絶縁したら、もう僕とルーカスは他人。
こうして会う事も話す事もこれで最後なんだ。

それが悲しくて悲しくてギュッ!としがみつく様に抱きしめると、ルーカスは嬉しそうに笑ったが、そんなルーカスに父は怒鳴り声を上げた。

「ルーカス!ほら、さっさとお前も鑑定しろ。
────ふんっ!もし役に立ちそうな才能がなかった場合は、家のためという大義名分の元、やっと追い出せる。
まぁ、もしも役に立つ才能に恵まれていたなら、一生この私達と家のために生きる事は許してやるがな。」

「娼婦の子供如きに、一体なんの才能があるのかしらねぇ?」

二人は後ろにいるリアムに命じて馬車を呼ぶ様に命令し、さっさと帰る用意をし始めている。
ルーカスはそれを見て、口端を僅かに上げて不気味な笑みを浮かべた。

「ルーカス……?」

「あぁ、ごめんごめん。じゃあ、俺も直ぐに鑑定を終わらせるから、少し待っててね。」

ルーカスの様子が不安で、その名を呼べば、直ぐにいつものルーカスに戻った。

気のせいだったかな?
まぁ、それより……ルーカスはこれから大丈夫だろうか……?

僕はルーカスの背をボンヤリと見つめながら、その将来が心配で心配で堪らなかった。

ルーカスがどんなに素晴らしい才能に恵まれているとしても、父と母は絶対に認める事はない。
それでいて、ルーカスの才能を自分たちのために一生利用し搾取するだろうと思う。
それならいっそ、ルーカスに才能なんてなければ……!
都合の良い妄想が浮かんだが、直ぐに現実を思い出し、力がない自分に怒りが湧いた。

力がないと何も、選ぶ事もできない。
それって本当に悲しくて悔しい事だ。
恵まれた環境までなくなってしまった僕には、もう何かを選べる力はない。

自分の手の平を見つめ、また涙がボロボロと流れて視界が滲んだが、それでもルーカスといられる最後の時間を大事にしようと神官の前に静かに立つルーカスの背中を見つめた。

「では、これよりクレパス家の御子息、ルーカス様の鑑定を始めます。」

「…………。」

返事もしない不遜な態度に、神官様は一瞬眉を潜めたが、直ぐに淡々と鑑定を始める。
周りは目を惹く容姿をしているルーカスを自然と目で追っていて、先程の父と母の様子から、ルーカスが正妻の子ではない事が伝わってしまった様だ。
ヒソヒソと陰口を叩き始めた。

「一体どなたのお子なのかしらね?第二夫人にしないという事は……相手は平民なのでは?」

「ライゼル様もとても精悍な顔をされているけど……あの子はまた違った目を惹く美しさを持っていますわ。
さぞや相手の方もお綺麗だったのでは?……そうなると、大体の予想はつきますね。」

弱みを握られまいと、父と母は必死で平然とした様子を見せている。
そんな緊張が漂う中────とうとうルーカスの鑑定結果がその頭上に現れた。

「────なっ……っ!!こっ、これはっ……!!」

「────えっ……?う、嘘……。」

「あれは……っ。」

注目される中、ルーカスのステータスボードに書かれている内容を目にした途端、全員が目を大きく見開く。

「ば……ばかな……っ。」

「あ、あり得ない……っ!」

同じく父と母も真っ青に青ざめてワナワナ震えていたし、僕だってビックリしすぎて言葉もでなかった。


【ステータスボード】

<ルーカス>

才能ギフト……【聖令神】
能力値……潜在ステータス値(SSS)、現在の総合ステータス値(SSS)


『人』の始まりを創ったとされる神様と同じ才能!
つまりルーカスは────……。


「か、神よ……っ。この奇跡に感謝を……。」

この時点で周りにいる神官達は一斉にルーカスに向かって跪き、祈りを始めると、一人、また一人と周囲の貴族達も跪いた。

「なんてことだ……。どうかお許し下さい。」

「神様の降臨だ……。この奇跡に立ち会えた事を誇りに思います。」

その中で、父と母は真っ青な顔のまま黙って跪き、頭を下げたのだが、そんな二人には目もくれず、ルーカスは呆然と立ち尽くす僕の元へと帰ってくる。

「兄さん、帰ろう。もう用事はすんだから。」

「えっ……あ、う、うん……だけど……。」

周りで一斉に跪いている人達を見渡し、僕も慌ててその場に跪いた。

「も、申し訳ありませんでした。僕は今まで何も知らずに……。」

確かに前から凄い凄いと思っていたが、ルーカスは、なんと神様と同じ才能の持ち主だったのだ。
人に生きる場所を与えてくれた、始まりの神様と同じ才能……。

そんな神様に、僕はなんて気安い態度を!

ビクビク、オドオドしている僕を見て、ルーカスは不思議そうな表情をした。

「??どうしたの?兄さん。変な事言って……。とりあえず帰って休もうか。
ちょうど馬車が到着したみたいだし、これからの事はゆっくり考えればいいよ。」

ひたすらマイペースなルーカスに、一人でアワアワして焦っていると、優しく手を取られる。
そしてそのまま立ち上がらせて貰ったのだが────何故か突然眠くなってきた。

「あ……あれ……?なんか……眠……。」

「これから色々面倒な事がありそうだから、兄さんはゆっくり眠ってていいよ。
おやすみ兄さん。」

「……??ル、ルーカ……ス……。」

まるで太陽の様に眩しい笑顔を浮かべたルーカスの顔を最後に、僕の視界も意識も真っ暗闇に。
そうして僕はなんと眠ってしまった様だった。

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~

マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。 王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。 というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。 この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する

ユッキー
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。 そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。

「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された

あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると… 「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」 気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 初めましてです。お手柔らかにお願いします。 ムーンライトノベルズさんにも掲載しております

泥酔している間に愛人契約されていたんだが

暮田呉子
BL
泥酔していた夜、目を覚ましたら――【愛人契約書】にサインしていた。 黒髪の青年公爵レナード・フォン・ディアセント。 かつて嫡外子として疎まれ、戦場に送られた彼は、己の命を救った傭兵グレイを「女避けの盾」として雇う。 だが、片腕を失ったその男こそ、レナードの心を動かした唯一の存在だった。 元部下の冷徹な公爵と、酒に溺れる片腕の傭兵。 交わした契約の中で、二人の距離は少しずつ近づいていくが――。

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

BLゲームの主人公に憑依した弟×悪役令息兄

笹井凩
BL
「BLゲーの主人公に憑依したら、悪役令息の兄が不器用すぎてメロかった」……になる予定の第一話のようなものです。 復讐不向きな主人公×ツンツンクーデレな兄ちゃん 彼氏に遊ばれまくってきた主人公が彼氏の遊び相手に殺され、転生後、今度こそ性格が終わっている男共を粛清してやろうとするのに、情が湧いてなかなか上手くいかない。 そんな中、ゲームキャラで一番嫌いであったはずのゲスい悪役令息、今生では兄に当たる男ファルトの本性を知って愛情が芽生えてしまい——。 となるアレです。性癖。 何より、対人関係に恵まれなかったせいで歪んだ愛情を求め、与えてしまう二人が非常に好きなんですよね。 本当は義理の兄弟とかにしたほうが倫理観からすると良いのでしょうが、本能には抗えませんでした。 今日までの短編公募に間に合わなかったため供養。 プロットはあるので、ご好評でしたら続きも載せたいなと思っております。 性癖の近しい方に刺されば、非常に嬉しいです。 いいね、ご感想大変励みになります。ありがとうございます。

処理中です...