【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』

バナナ男さん

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22 籠の鳥

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◇◇
「兄さん、これから視察に向かうよ。」

「分かった。」

ルーカスが視察で現場に向かうと言えばチョコチョコとついて行き、ルーカスの仕事が終わるまで横で待つ。
その地の代表の人とお話しているルーカスの姿を見ている僕は、何もしていない。

「兄さん、これからモンスターの討伐に行くよ。」

「分かった。」

馬に乗った沢山の騎士達。
それを率いて移動する白い馬に乗ったルーカスと、前に抱き抱えられる様に同じく乗っている僕。
周りの騎士団員達からの視線はチラチラと突き刺さるが、ルーカスに何か物申す者はいない。
そして目的のモンスターを発見すると、ルーカスはアッサリと剣で倒してしまい、ポカンとする団員達を置いて、さっさと僕を連れて帰路につく。
僕は、ただ馬の上に乗っていただけ

「兄さん、今夜王宮でパーティーがあるらしいけど行きたい?」

「うん、行く。」

ルーカスは僕が何も言わなければパーティーなど、人の集まりには行かない。
しかし、パーティーは貴重な出会いの場。
ここでひと目で恋に落ちて~なんかはよく聞くし、それ以外にもお互い収める領や商売について熱く語ったり、お互いメリットがありそうなら双方が納得する契約をするキッカケにもなる場所なので、出ておくに越した事はないはずだ。

ルーカスと仲良くなれる人がいるといいな!

ゴッ!と燃えていた僕、パーティーにつくと、ルーカスの方に一斉に人が群がりニッコリしていたが……。

「────邪魔。」

その一言で全員が固まり、地獄の様な雰囲気になってしまう。
僕だって白目を剥いて立ち尽くしてしまったが、ルーカスは全く気にする事なく、僕の腕を掴みズルズルと食べ物が乗っているテーブルへ行った。

「兄さんはコレとコレ、コレも好きだよね。
ちゃんとここのシェフには言っておいたから兄さんの好きなモノしかないよ。」

美味しそうな料理の数々がお皿の上に山を作ると、ルーカスは笑顔で僕にそれを差し出す。

「あ、ありがとう……。」

もうお礼を言うしかなくてポツリと呟くと、そのまま好意的ではない視線が突き刺さったまま、料理を平らげていくしかなかった。

それから片時も兄である僕を離そうとしないルーカスについたあだ名が<兄狂いの公爵サマ>。
それに苦言を────呈したくても、ルーカスはその恐ろしい程の才能と実力により、誰一人文句が言えない立場へとなっていた。
それでもルーカスに取り入りたいと考える人たちは跡を絶たなかったが、ルーカス本人はそういう人たちに対する嫌悪感が凄まじく、近寄ることすら至難の業の様だった。

『汚い。』

周りの人間に対してそう語るルーカスの態度は、まるで氷の様に冷たく、決して褒められるモノではないが、咎めるのも果たして正しいのかどうか僕には分からない。
ルーカスは、今までの自分が置かれていた状況全てが憎くて、だからこうして有名になった途端、近づいてくる人達に対して嫌悪感があるらしいから……。

「兄さん、兄さん……。」

「うん、どうしたの?ルーカス。」

ルーカスは家に帰ると、僕の膝の上に頭を乗せて子供の様に甘えてくる。
きっとこれも幼少期のルーカスの人生に関係するのだと思うと、僕にはある思いが浮かんだ。
ルーカスがこの家で冷遇された過去がなかったら、今頃、幸せに暮らしていたのかもしれないって。

「…………。」

悲しくなってきて、まるで罪滅ぼしの様にルーカスの頭を撫でる。
仮に僕がちゃんと当主になれる実力があったら、ルーカスがこの家にやってきた時に両親に意見が言えたのかもしれない。
最近は、自分の力のなさにずっと悲しみと悔しさを感じている。

「俺、凄く幸せなんだ。兄さんと出会ってからずっと。この幸せがずっと続きますように。」

「……そっか。」   

幸せそうに笑うルーカスだが、多分ルーカスは幸せではない。
沢山の人に人生を歪められた結果に得た、偽物の幸せだ。

「僕は……。」  

幸せだ。
ルーカスと出会って沢山の事を教えてもらったから。
でもルーカスは……?

「…………。」

僕が黙ったままでいると、次第にルーカスが眠ってしまったので、僕は風邪を引かないように、上着をかけてあげた。

◇◇
片時も僕を離さないルーカスだったが、他国の王族などを集めるパーティーには、僕を王宮の一室に置いて出席する。
理由は『女が沢山いるから』。
つまり女性たちを僕に合わせたくないと言うことらしい。

「何もできない兄が先に結婚なんてできないから大丈夫なのに……。
ちゃんと自立してないと、相手のお嫁さんを路頭に迷わせてしまうからね。僕がまずしなければならないのは、お嫁さん探しじゃなくて、仕事を見つける事だよ。
でも……こんな僕に一体何の仕事ができるだろうか。」

「……どうでしょうか。」

本日も部屋に置いてかれた僕。
暇すぎて、その間は一緒に待機しているリアンとお喋りタイムを楽しむ。

リアンはルーカスが手元に残した一握りの使用人の一人で、今も屋敷の中や、たまには外出時は一緒に付き添ってもらってきた。
ルーカスいわく、リアンは『当主を絶対に裏切らない男』だからと言って、信用はしている様だ。
リアンは、ソファーに座っているだけの僕に紅茶を淹れてくれたので「ありがとう」と伝えると、リアンは僕を気遣いながらポツリポツリと話し始めた。

「……恐らくルーカス様は、グレイ様がお仕事されるのを許さないと思います。」

「───へっ?」

ハッキリと断定されて驚くと、リアンは紅茶を入れたティーポットを用意された台に置いて、小さく息を吐き出す。

「それどころか、ずっと今の状態のまま、籠の鳥の様に生きていくと思いますよ。」

「籠の鳥??」

聞き慣れない言葉に首を傾げると、なぜかリアンが悲しげな顔をした。

「誰もが欲しいと思ってもすべてを手に入れられるわけではありません。人生には妥協も諦めも必ず必要です。
ですが────人によってはどうしても諦められず、一生追い続けるモノもあります。」

「?リアンの言うことは難しいね。一体何だろう?」

色々と考えさせられる質問について必死に考えていると、リアンは真剣な眼差しで応えた。

「親から貰う無償の愛です。
それは、その後の人生で、他人から与えられる全てのものを受け取る器を作ってくれます。
その器がないと、人から何かを受け取るのがとても難しくなります。仮に受け取れたとしても、形を大きく変えて受け取ることしかできません。
だから無意識に無償の愛を探し続けるんです。」

「あ~確かにそれは一理あるかも!」

僕は、自分でも自覚があるくらい反応が薄い子供だったと思う。
無視されても怒鳴られても、ビックリはするし嫌だと思うけど、その感情に熱量がない。

それって多分、無償の愛ってやつを貰えなかったから、うまく受け取れなかったのかもしれない。
今までの人生を振り返りしみじみした後、今度はルーカスと出会った後の事を考えた。
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