【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』

バナナ男さん

文字の大きさ
24 / 39

23 どうしようか……

しおりを挟む
ルーカスが沢山の感情をぶつけてくれて、うまく受け取れない僕の器に無理やりそれをねじ込んでくれた。
そうしたら、ルーカスがいなくなることが怖くて悲しくて、更にルーカスを虐める全てのものに対する怒りも初めて経験できたのだ。

そこには熱量がある。
自分の心に熱が灯るのが────本当に嬉しいと思った。

「僕の心の器に無理やり心を入れてくれたのは、ルーカスだ。本当に心から感謝しているよ。」

自然と笑顔になる僕を見て、リアンは「グレイ様はお強いですね。」と言う。 
残念ながら、『強い』という言葉が全く当てはまらない事を伝えようとする前に、リアンは続けていった。

「たまにその無償の愛を、すんなり人に与えられる人間がいます。
ずっとずっと欲しかったものを与えられた人間は……今まで貰えなかった反動か、与えてくれた人に酷く執着します。
あとは元々の性格も影響するんでしょうね。いずれにせよ……相性が悪かった、そう思います。」

「……???」

分かるような分からないような?
リアムの話は中々哲学的なお話が多くて混乱してしまったが、とりあえずルーカスも僕も幸せであると、そういうことだろうか……。

「うん。とりあえずルーカスが幸せならいいんだけど……。でも、少しこのままである事に危機感はあるよ。
だって兄弟はいつかは別々の道を歩かないといけないんだから。
だからルーカスは、これから先一生一緒にいたいなと考える女性を見つけないといけないね。」

「…………そうですね。」

リアンはとても複雑そうな顔をして、色々考え込んでいるようだったが、とりあえず最後はコクリと頷いていた。
リアンに口に出す事で、僕は自分がすべきことを固める事ができた気がする。

『ルーカスと共に人生を歩んでいけるパートナーを見つける事』

ルーカスの歪な心の器に、これでもかと心を詰め込んでくれる人が幸せになるのに必要だ。
そうなれば、ルーカスはもっともっと幸せに────……。

「…………。」

何故か心はチクチクと傷んだが、それは気づかないフリをした。


◇◇
「ルーカス、今日はどんな人がパーティーにいたの?」

僕を置いて出席するパーティーの後、僕は何でもない様子でルーカスにこう質問する。

そのパーティーに出席した時は、沢山の香水の匂いがするので、恐らく沢山の女性とお喋りはしてくるはず。

ドキドキしながら尋ねると、ルーカスはとてもとても嫌そうな顔をして答えた。

「外見ばかり飾り立てた欲望まみれの人間達だよ。
べらべらと自分の事を語るか、俺を褒めるか……いずれにせよ、全部に欲望が見え隠れして気持ち悪い。
本当は出たくないんだけど、兄さんとの穏やかな生活のためには仕方ないかな。」

「そ、そう……。」

嫌なモノを吐き捨てる様にそう言うルーカスからは、好意的なモノは一切見られない。
きっと嫌な人ばかりじゃないとは思うが、中々それを見分けるのは難しいんだろうなとは思う。
僕だって、今まで空気の様に扱ってきた人達が、突然チヤホヤしてきたら……そりゃ警戒するもんね。

「中にはいい人もいるかもしれないから、じっくりお話してみるといいかもよ。
勿論ルーカスがお話してみたいと思ったらいいから。」

「…………。」

ルーカスは黙ったまま僕を見つめ、そのまま強く抱きしめてきた。

「俺は兄さんだけがいい。なのに周りが心底うっとおしいよ。
今の自分をどんなに褒め称えられたって、何も心には響かないんだ。
以前の惨めな自分を受け入れてくれた兄さんしか、もう心の中には入らない。
だから永遠に俺の心の中は兄さんだけ。
どうしたらもっと一緒にいられるんだろうね?」

「ル……ルーカス……くるし……。」

強く抱きしめられすぎてとても苦しい。
そのせいで言っている事がよく聞こえず、バシバシと背中を叩くと、ルーカスは「ごめんごめん。」と言いながら力を弱めてくれた。
そしてそのまま二人で恒例となっているお風呂でお互いの背中を洗い、床につく。
ルーカスはまるで逃さないと言わんばかりに僕の体に腕を絡ませ、朝まで離してはくれなかった。


◇◇
「……どうしようか。」

最近頻繁になってきた僕を置いてのパーティー。
きっと王様は必死なんだろうと思う。
ルーカスは僕が思った以上に国によって必要な人で、そんなルーカスをどうにかしてこの国に根付かせたいという事だ。

「…………ハァ。」

僕は今の現状を思い浮かべ、大きなため息をついた。

道を歩けば常に周りの視線はルーカスに。
その視線は好意、好意、好意……と嫌というほど、ルーカスと懇意になりたいという想いがある。
その中には確かにルーカスに対し欲望を抱いているモノもあったが、心からルーカスを想ってくれているモノもあった。

これからルーカスが幸せな人生を歩むには、そういう人達を大事にしていかないといけない気がする……。

寂しくはなるが、僕にばかりくっついていては、ルーカスのためにならない。
それはずっと想っていて、モヤモヤしながらどうすれば1番いいのか考えてはいたが、行動に起こせずにいた。

「いっそ僕が間接的にお見合いをして、良さそうな人がいたらルーカスに会ってもらうとか……。それか三人でお茶をしたり……いや、これは女性からしたら嫌がられるか。」

「……そうですね、止めたほうがいいと想います。」

今日もリアムが僕にお茶を入れてくれながら、話し相手になってくれる。
八方塞がりな状態に困ってしまい、ついリアム相手に愚痴の様な事を言ってしまった。

「最近、ルーカスに対する周りの行動が活発になってきたね。
綺麗で優しい女性だって、素晴らしい意見を持った男性も沢山いる。
そんな中で、僕だけがルーカスの側にいるのが、実はとても違和感があるんだ。」

「そうですね。確かに人として素晴らしい方々も沢山おられますね。
そういう方々と仲良くされるのは、とても良い事だとは思います。」

リアンに自分の意見を肯定され、そうだよね……と、その必要性を再確認する。
そして、最近自分に向けられる好意的ではない視線についても思い出した。

結局、釣り合いって、お互い一緒にいてストレスがないために必要なモノかも。
ルーカスにとって、一体僕はどういった立ち位置にいれば幸せなんだろう……。

これはずっと考えている事で、モヤモヤモヤモヤと今日も悩んでいると、突然この部屋に近づいてくる足音が聞こえ、リアンと僕は反応する。
軽やかなヒールの音……ルーカスではない様だ。

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~

マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。 王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。 というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。 この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する

ユッキー
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。 そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。

「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された

あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると… 「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」 気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 初めましてです。お手柔らかにお願いします。 ムーンライトノベルズさんにも掲載しております

泥酔している間に愛人契約されていたんだが

暮田呉子
BL
泥酔していた夜、目を覚ましたら――【愛人契約書】にサインしていた。 黒髪の青年公爵レナード・フォン・ディアセント。 かつて嫡外子として疎まれ、戦場に送られた彼は、己の命を救った傭兵グレイを「女避けの盾」として雇う。 だが、片腕を失ったその男こそ、レナードの心を動かした唯一の存在だった。 元部下の冷徹な公爵と、酒に溺れる片腕の傭兵。 交わした契約の中で、二人の距離は少しずつ近づいていくが――。

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

BLゲームの主人公に憑依した弟×悪役令息兄

笹井凩
BL
「BLゲーの主人公に憑依したら、悪役令息の兄が不器用すぎてメロかった」……になる予定の第一話のようなものです。 復讐不向きな主人公×ツンツンクーデレな兄ちゃん 彼氏に遊ばれまくってきた主人公が彼氏の遊び相手に殺され、転生後、今度こそ性格が終わっている男共を粛清してやろうとするのに、情が湧いてなかなか上手くいかない。 そんな中、ゲームキャラで一番嫌いであったはずのゲスい悪役令息、今生では兄に当たる男ファルトの本性を知って愛情が芽生えてしまい——。 となるアレです。性癖。 何より、対人関係に恵まれなかったせいで歪んだ愛情を求め、与えてしまう二人が非常に好きなんですよね。 本当は義理の兄弟とかにしたほうが倫理観からすると良いのでしょうが、本能には抗えませんでした。 今日までの短編公募に間に合わなかったため供養。 プロットはあるので、ご好評でしたら続きも載せたいなと思っております。 性癖の近しい方に刺されば、非常に嬉しいです。 いいね、ご感想大変励みになります。ありがとうございます。

処理中です...