親同士の決め事でしょう?

泉花ゆき

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学園で見せてくれたのは、思慮深く誠実なアルフレッド様の姿。けれども目の前にいるのは、友人のあまりに無作法な振る舞いを苦笑いと弱いたしなめで片付けてしまうだけ。相対する、仮にも客人に向けて我慢を強いていることにすら気づかない、鈍感な男性でした。

「そうですね……アルフレッド様の誠実なところに惹かれました」

私は張り付けた微笑みを崩さないよう、なるべく注意を払いながら答えました。
けれど私の返事は彼女のお気には召さなかったようです。

「誠実って……アルがぁ?」

カレン様は納得がいかないというように、鼻を鳴らして笑いました。

「こいつ結構昔はひどかったんだよ?私がどれだけアルの尻拭いしてきたか教えてあげたいなぁ。ねえ、アル。覚えてるでしょ?ここの庭でもさ……」

カレン様はそう言って、親しげにアルフレッド様の太ももに手をおいて身を寄せました。

(……そのふるまいは正直に言って、たとえ恋人同士であっても人前で行うようなものではない距離感なのだと思うけれど……)

ドン引きしている私には何も気が付かず、アルフレッド様はといえば顔を赤くしているだけ。
それも、カレン様の手がどこにあるかなどとは気になっていない様子です。ただ内容に反応しているだけで、本当に楽しそうに笑っています。

「やめろよカレン、恥ずかしいじゃないか」

「……」

(恥ずかしいのはどう考えても、あなた方の態度です……)

目の前で人を置き去りにして、二人は思い出に浸っていました。対面に座る二人との合間に、深い溝を感じています。

「あっ、そろそろお茶来るんじゃない?私喉乾いちゃったな~~」

「喋りすぎなんだよ、カレンは……」

「何よ、その言い方っ」

「……」

私は何もかもをあきらめて、ただ表情に笑みを貼り付けるだけになってしまいました。
お茶の香りが漂ってくる頃には……私はすでに、この屋敷に一刻も早く別れを告げたいという衝動と戦い始めていました。

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