親同士の決め事でしょう?

泉花ゆき

文字の大きさ
62 / 105

62

馬車を降りると、そこには私を案じて待っていた家令が控えていました。エリオットは私をエントランスまで導くと、足を止めることなく家令へと話し掛けます。

「すぐに門番と使用人全員を集めてくれ。早急に徹底させなければならないことがある」

エリオットのただならぬ気配を感じ取ったのでしょう。家令は深く一礼し、すぐさま行動に移りました。

私たちは応接室ではなく、より落ち着ける私室へと向かいます。
しばらくして家中の主な使用人たちが揃ったところで、エリオットは淡々と命じました。
その声には一切の拒絶が許されない色が含まれています。

「今後、侯爵令息アルフレッド様およびカレン様と名乗る女性の来訪は、いかなる理由があろうとも門前で断ること。たとえ謝罪のためだと言い募っても、決して敷地内に入れてはならない」

使用人たちの間にわずかな動揺が走りましたが、エリオットの言葉は止まりません。

今日私がどこへ出掛けたというのは、当然に家令や使用人へ共有されている情報です。
その出掛けた先で何らかのトラブルが起こったと、そう伝えていることに他ならないのですから……

「これは父上の名代みょうだいとしての命令だ。もし強引に入り込もうとするならば、力尽くで排除して構わない。責任はすべて僕が取ろう。この地に彼らの声を聞かせること自体、我が家に対する侮辱だと心得てくれ」

エリオットは言葉を切り、全員の顔を見渡しました。

「特に門番には伝えておくように。侯爵家の馬車が見えた時点で門を閉ざし、対話に応じる必要はないと」

「承知いたしました。エリオット様、リリアーナ様。不届き者にこのやしきの土を踏ませるような真似は、決してさせぬよう万全を期します」

家令の返答は力強く、ようやく私の心に安らぎが戻ってきました。エリオットは満足そうに頷くと、私の方を向きます。

「これで少しは落ち着けるでしょう。姉様は部屋で休んでいてください。先程の話通り、お茶を届けさせます」

あなたにおすすめの小説

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

比べないでください

わらびもち
恋愛
「ビクトリアはこうだった」 「ビクトリアならそんなことは言わない」  前の婚約者、ビクトリア様と比べて私のことを否定する王太子殿下。  もう、うんざりです。  そんなにビクトリア様がいいなら私と婚約解消なさってください――――……  

[完結]本当にバカね

シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。 この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。 貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。 入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。 私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。