親同士の決め事でしょう?

泉花ゆき

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「こんなことだと?」

震えながら見る父親の靴はより無機質に感じられた。頭から浴びせられた冷水は絶え間なく肌を冷やしていき、芯からの凍えを呼んでいる。

「愚息の行いを正すのも親の務めだろう」

侯爵の低い声には、一抹の慈悲もなかった。彼は濡れ鼠となった息子が床を汚しているのを、不潔なものを見る目で見下ろしている。

「幼少の折からお前がやたらと気に入っていたからと多めに見ていたが……」

侯爵は先ほど強制的に排除されたカレンのことを指して言う。思い出すのも忌々しげにしながら言葉を続けた。

「所詮は遊び相手だと静観していた。……が、自分の居場所も弁えぬあの娘をこの屋敷に引き入れ、あまつさえ婚約者として連れてきた霊場の面前で醜態を晒すとは……」

話を聞きながら、夫人が控えていた使用人へと目配せをした。用意された乾いた大きなタオルが、アルフレッドの震える肩に掛けられる。

「う、うぅ……」

乾いた柔らかな布によって多少抑えられたものの、氷のような水の冷たさが消えるわけではない。水分の含まれたシャツは生地も上等なだけに重たく、ずっしりとした不快な重みがアルフレッドの身体にのしかかった。

「お前の分別のなさは、最早見過ごせる段階を超えている」

侯爵は、夫人のそのささやかな配慮を止めることはしなかった。けれども同時に、濡れ透けた衣服を着替えさせるような猶予を与えるつもりもなかった。

「……いいか、お前に必要な縁はリリアーナ嬢の方だ」

侯爵はアルフレッドの前に片膝をつき、その濡れた顎を強引に掴み上げた。

「お前が学園で見初め、自ら求めて繋いだ縁だろう。それを、あのような身なりもわきまえぬ娘のために台無しにするというのか」

「……しかし……リリアーナの方こそが、僕のことを……必要として……」

アルフレッドはなおも、青くなった唇を震わせて反論を試みる。
冷水によって酔いは冷めたものの、彼の頭の中では未だに浸かり切っている考えがあった。

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