婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

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「お前っ……何だその口のきき方は、僕を何だと思ってる!?」

「もちろん存じ上げておりますわ、ジェラルド様。そしてこちらも……ご存じですよね?すべて、殿下のお仕事でございます」

殿下がバンッ、と力任せに閉じたファイルを、ゆっくりと私の方で開いてみせる。幼い子供に本を差し出すような仕草だ。

「わたくし、昨夜一晩かけて考えましたの。殿下がいつも仰る通り、私は少し出しゃばり過ぎていたのではないかと」

私は、昨日の裏庭での彼の言葉を思い出しながら紡ぐ。

「殿下は常々仰っていましたわね。お前は口うるさいとか……僕の能力を信用しろ、とか……」

「あ、ああ。そうだ。お前はいつも僕を子供扱いして……」 

「ですから、反省いたしました。殿下がしようとなさってることに先回りして手を出してしまうなんて、婚約者としてあるまじきことでしたわ」

私は一歩、彼に歩み寄る。

「ですので、今日からは全てお任せすることにいたしました。ご安心ください、余計な手出しは一切いたしません」

殿下は何度か口を開閉させた後、顔を赤くして反論した。

「ふ、ふざけるな!今更そんなことを言って、僕を困らせたいのか!?」 

「あら、お困りになりますか?」

「当たり前だ!僕は忙しいんだ!こんな雑用にかまけている暇はない!」

出た、忙しい。殿下がサボるときの常套句。
私は小さく首を傾げ、不思議そうに自分の頬へ手を添える。

「まあ……わたくし、殿下のスケジュールも把握しておりますが……今の時間も特に予定などなかったはずですけれど」 

「そ、それは……瞑想の時間だ!心の余裕がなければ、良い統治もできないだろ」 

「ええ、よく分かりますわ。皆さんのお読みになる雑誌などを読んで人々の娯楽を知ろうとなさっていたのでしょう?」

皮肉を込めてテーブルの上の雑誌に視線を落とす。城下町へ遊びに行く時の下見なんかが書いてあるらしく、殿下はバツが悪そうにそれを隠した。
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