婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

文字の大きさ
23 / 59

23

しおりを挟む
人気のない中庭のベンチに腰を下ろし、ミナは苛立ち紛れに爪を噛んだ。

(絶対おかしい。だってジェラルドルートは確定してたでしょ……?)

第二王子のジェラルド。

彼は攻略難易度が低く、いわゆるチョロいキャラだった。身分差が辛いとかヴィクトリア様が怖いとか上目遣いで訴えていれば、コロッと落ちた。

彼は典型的な俺様系かつ、承認欲求の塊だ。そこを刺激してあげれば、ミナの言いなりになるまで簡単だった。

だが、最近のジェラルドは役に立たない。
今日もそうだった。

(どれだけ忙しかったって、ヒロインとのイベントよ?私を優先するのが当たり前なはずなのに)

仕事が終わらないと言って、ミナとのランチデートをキャンセルしてきたのだ。ゲームの中のジェラルドだったら、ヒロインのために公務なんて放り投げて駆けつけてくれたのに。今の彼は、まるで何かに追われるように余裕がない。

(やっぱりあの女がバグってるのかしら)

ヴィクトリア侯爵令嬢。銀髪にアメジストの瞳を持つ、完璧超人にして冷徹な悪役令嬢。 

本来の彼女だったらミナへの嫉妬に狂って、教科書を破いたりドレスにワインをかけたりするわかりやすい悪役のはずだった。

ミナが虐げられれば虐げられるほど攻略対象たちのミナへの愛情度が上がり、最後にはヴィクトリアが断罪されてハッピーエンド。そういう展開のはずなのに。

(なんであんなに冷静なのよ……!)

彼女はミナをいじめない。無視するのだ。

仕事を淡々とこなしてミナを空気のように扱う。これでは可哀想なヒロインを演出できないし、イベント発生フラグが全然立たない。

だからいつも自分からいじめられて、などとでっち上げを吹き込んでいるのだけど……それも限界を感じている。

苛立ちが募る中でミナはふと、先ほどのジークフリートの冷たい瞳を思い出した。

(ジークフリート様……公爵家の跡取りで、文武両道。顔面偏差値だってぶっちぎりのSランク。初回は攻略対象にすることすら難しい難易度ハードだけど……)

黄金の瞳。冷徹で、他人を寄せ付けない氷の貴公子。特定の条件を満たさないとルートに入れない隠しキャラで、最強スペックの攻略対象。

(……ゾクッてしたわぁ)

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】幼馴染と恋人は別だと言われました

迦陵 れん
恋愛
「幼馴染みは良いぞ。あんなに便利で使いやすいものはない」  大好きだった幼馴染の彼が、友人にそう言っているのを聞いてしまった。  毎日一緒に通学して、お弁当も欠かさず作ってあげていたのに。  幼馴染と恋人は別なのだとも言っていた。  そして、ある日突然、私は全てを奪われた。  幼馴染としての役割まで奪われたら、私はどうしたらいいの?    サクッと終わる短編を目指しました。  内容的に薄い部分があるかもしれませんが、短く纏めることを重視したので、物足りなかったらすみませんm(_ _)m    

幼馴染の婚約者を馬鹿にした勘違い女の末路

今川幸乃
恋愛
ローラ・ケレットは幼馴染のクレアとパーティーに参加していた。 すると突然、厄介令嬢として名高いジュリーに絡まれ、ひたすら金持ち自慢をされる。 ローラは黙って堪えていたが、純粋なクレアはついぽろっとジュリーのドレスにケチをつけてしまう。 それを聞いたローラは顔を真っ赤にし、今度はクレアの婚約者を馬鹿にし始める。 そしてジュリー自身は貴公子と名高いアイザックという男と結ばれていると自慢を始めるが、騒ぎを聞きつけたアイザック本人が現れ…… ※短い……はず

婚約者が妹と婚約したいと言い出しましたが、わたしに妹はいないのですが?

柚木ゆず
恋愛
婚約者であるアスユト子爵家の嫡男マティウス様が、わたしとの関係を解消して妹のルナと婚約をしたいと言い出しました。 わたしには、妹なんていないのに。  

両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。 一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。 更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。

妹から私の旦那様と結ばれたと手紙が来ましたが、人違いだったようです

今川幸乃
恋愛
ハワード公爵家の長女クララは半年ほど前にガイラー公爵家の長男アドルフと結婚した。 が、優しく穏やかな性格で領主としての才能もあるアドルフは女性から大人気でクララの妹レイチェルも彼と結ばれたクララをしきりにうらやんでいた。 アドルフが領地に次期当主としての勉強をしに帰ったとき、突然クララにレイチェルから「アドルフと結ばれた」と手紙が来る。 だが、レイチェルは知らなかった。 ガイラー公爵家には冷酷非道で女癖が悪く勘当された、アドルフと瓜二つの長男がいたことを。 ※短め。

【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ

水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。 ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。 なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。 アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。 ※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います ☆HOTランキング20位(2021.6.21) 感謝です*.* HOTランキング5位(2021.6.22)

その令嬢は、実家との縁を切ってもらいたい

キョウキョウ
恋愛
シャルダン公爵家の令嬢アメリは、学園の卒業記念パーティーの最中にバルトロメ王子から一方的に婚約破棄を宣告される。 妹のアーレラをイジメたと、覚えのない罪を着せられて。 そして、婚約破棄だけでなく公爵家からも追放されてしまう。 だけどそれは、彼女の求めた展開だった。

【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません

かずきりり
恋愛
今日も約束を反故される。 ……約束の時間を過ぎてから。 侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。 貴族の結婚なんて、所詮は政略で。 家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。 なのに…… 何もかも義姉優先。 挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。 挙句の果て、侯爵家なのだから。 そっちは子爵家なのだからと見下される始末。 そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。 更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!? 流石にそこはお断りしますけど!? もう、付き合いきれない。 けれど、婚約白紙を今更出来ない…… なら、新たに契約を結びましょうか。 義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。 ----------------------- ※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。

処理中です...