婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

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歯ぎしりせんばかりのミナの横を、散らされた令嬢たちが楽しそうに横切っていく。

「聞きまして?この後急遽お茶会が開かれるんですって」

「ヴィクトリア様がドレスのことをお話してくださるんでしょ?絶対に参加しなくっちゃ」

弾んだ声が、残酷な現実となってミナの耳に突き刺さる。今しがた横切った中にも、ステージに集っていた中にも……その顔触れにはほんの数日前までミナ寄りであった子たちが何人も混ざっていた。

ヴィクトリアを陰で恐れ遠巻きにしていた者たちが、今は手の平を返したように彼女を慕っている。
ミナだけが覚めた目で壇上を眺めていた。

(あっそぉ……ハブられてばっかりだったっていうのにぃ……?)

間違いなく孤立させていたはずだった憎むべき女が、今やこの場所の中で敬われるものとして君臨している。その計算違いはミナの胸の中をどす黒い感情で満たしていった。

(ジェラルドも何かじろじろ見続けてるし……何なのよ……)

何より耐えがたいのは、隣に立つジェラルドの様子だった。
彼は腕に絡みつくミナのことなど忘れたかのように、ただ一点、ステージの上で光を浴びるヴィクトリアを凝視している。

その瞳に宿るのは憤りだけではない。今まで見たこともないほど凛とした婚約者の姿に、言葉を奪われたままだ。そしてどこか深いところから惹きつけられているかのような、危うい熱が混じっていた。

「……ジェラルド様。ねぇってば……いい加減に……じゃなくて、そろそろ行きましょうよぉ」

ミナは焦りに突き動かされ、ジェラルドの腕に自身の体を強く押し当てた。豊かな胸を腕にこすりつけ、指先で彼の袖を弄るように這わせる。
それは彼女が殿下の独占欲を煽る手立て。意識を強引に自分へ引き戻す時に使う、最も得意な手段だった。

「あんな風に注目浴びるヴィクトリア様を見ていると、なんだか怖いっていうかぁ……あんな風に贅沢なことしてるなんて、殿下をないがしろにして準備してったていう証拠じゃない……?」

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