婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

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私たちはホールを後にし、南へと続く回廊を歩み出す。春の柔らかな風が、開け放たれた窓から吹き込んできた。
背後から聞こえてくるのは大勢の令嬢たちの衣擦れの音と、控えめながらも浮き立った囁き声。

(……こんな風に、この学園でこれほど多くの期待を背負って歩いたことがあったかしら……)

重々しい扉を抜けた先では視界いっぱいに広がった眩い緑と青空がある。その眩しさに、私は静かに目を細めた。


庭園でのお茶会は誰もが熱に浮かされたような高揚感を抱きつつも、終始和やかな空気に包まれていた。
ドレスについて語り合うという名目のもとだけれど、全員が同時に話を聞くことは難しい。集まった令嬢たちは思い思いに芝生へクロスを敷き、簡素ながら場を整えてお茶を楽しんでいる。

「それではきっと、今から頼むのではデビュタントには間に合いませんわね」

「あら、でもデビュー後の社交界では機会もたくさんありましてよ」

「それではやはり近いうちにお訪ねしたいわ……」

そこかしこから、小鳥のさえずりを思わせる華やかで可愛らしい会話が聞こえてくる。
私はガゼボの奥に置かれた椅子に腰を下ろし、卓上に用意された茶を楽しみながら隣のソフィアと話を続けていた。

話題は店主のあり方に移っていた。退店の間際、店主から釘を刺されたように言われた言葉を伝えている。

「……そう、客を選ぶ店でもあるのね」

「ええ。……けれど、この学園に通う淑女の皆様であれば、きっと大丈夫かと」

ごく一部を除いて、という言葉は飲み込んでおく。だってこの場にいる皆様には、当てはまらない言葉だもの。
ソフィアはみなまでを聞くことはなかったが、どこか浮かない顔をして手元のティーカップを見つめていた。

「わたくしなどは、きっと入店も拒否をされてしまうわ」

その声に含まれた響きで、ソフィアが懺悔を望んでいるのだと察した。それも相手は私についてだろう。
余計な口を挟まず、ただ静かに彼女の言葉を待つこととする。

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