自称病弱いとこを優先させ続けた婚約者の末路

泉花ゆき

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二人の絆を誇示するかのような彼の物言いを指摘してやると、彼は失言に気が付いたのか急に挙動不審な様子を見せて声をひっくり返した。

「えっ!?いやっ、今のはそういう意味じゃないよ!ただ僕のことを訪ねて来たというから!変な風に言わないでくれっ」

「声が上擦っているわよ、ヴィンセント」

「う……ご、ゴホッ……ほら、ここ乾燥してるだろ!?だから……」

(単にあなたが、喉も潤さないままでずっと怒鳴ったりしてるからじゃないの?)

私の婚約者であるはずの男が、私の用意した席で別の女性を傷つけられたと憤っている。
その滑稽さには、いっそ喜劇として披露したほうが彼のためにもなるのではないかとすら思わせられた。

ふっと小さなため息をつく。

「……そんなに心配なのだったら、ヴィンセント。自分で行って確かめてきたらどうかしら」

「えっ……!?」

私の言葉に、ヴィンセントは一瞬だけ表情を固めた。
けれどもその瞳にはすぐに、リリアンの元へ駆けつけられるという解放感が浮かんでくる。

ヴィンセントは、先ほどとは違った意味でそわそわとしだした。それは有り体にいうと、嬉しそうに、ということになる。

「あっ、ああ……そう?……そうか、君がそう言うのなら……分かってくれたんだね、エルアナ。やはり彼女を放っておくわけにはいかないものな」

「ええ。離れへ通されているということは、それなりの配慮が必要な状態なのでしょう」

ヴィンセントは個室のよく磨かれているガラスへと自分の身を映し、手早く髪型や上衣を直し始めた。
……それは病気のいとこに会いに行くとはとても思えないような身支度の仕草。

「ふんふん……こんなものか……よし」

あまつさえ彼は鼻歌交じりに、私の方へと向き直る。

「なんだなんだ、それならそうと早く言ってくれれば僕だってあんな真似はしなかったよ……全く、君も素直じゃないな」

あんな真似というのは、私を詰ったり責任者を問い詰めたりしたことの話だろう。
私はそれには答えず、ただ静かにそこへ控えていた男性へと告げる。

「案内してください。私も、彼女に一言お見舞いを申し上げたいわ」


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