自称病弱いとこを優先させ続けた婚約者の末路

泉花ゆき

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ドアの内側で機をうかがっていれば、ヴィンセントはただ出まかせと虚偽を翳して無理やり事務官から変更をもぎとっているようだった。
彼が「もういいだろう」などと言って背を向けたらしいタイミングで、ドアを開ける。

ヴィンセントは既に小走りでホールの出口へ向かっていたのだけれど、そこへ私が声をかけると、その浮かれた足取りがぴたっと止まった。
……察するに、そのホールの外では彼の可愛らしいいとこ殿が待ち構えているのだろうと思う。

少し言葉で詰めてやると、途端にヴィンセントは返す言葉をなくしていた。

「……とにかく、私は控室の部屋の変更など承諾をしていないのだから……」

取り消されても、仕方ないわよね?
そう告げようとすると、私がみなまで言い終わらないうちにヴィンセントは悲鳴のような声を上げてその発言を遮った。

「違うんだ、エルアナ!」

いかにも悲劇の主人公だというように、私の前へと跪いて大きく片手を差し出している。

「君が……君が忙しいと思って!今から承諾を得に行くには遅いだろう?ほら、何せパーティーは明日だと言うのだから……!」

……御大層な表現力だった。
ヴィンセントが身振り手振りを大きくして話す姿も、私には慌ただしい男だ、という感想しか浮かばない。

(この大げさな言いようも、誰かなら俳優のようだと思ってうっとりと聞き入っているのかしら)

「そうね、決して暇というわけではなかったけれど……でも、今日はあなたとの食事のために時間を確保していたのだから」

だから、いつもよりは余裕があったのよ。

そんな意味を仄めかせて口元だけで薄く笑む。するとその食事の席を早い段階で切り上げて女性の元へ走っていったヴィンセントは、顔を青くして動きを止めた。
けれどもそれだけで話を終えられるのだと思っていたなら、間違いだと教えてあげなくてはならない。

「それにヴィンセント。私の承諾が得られるかどうかということと、あなたが部屋を必要な理由とは何ら関係がないと思うのだけど」

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