【R18】甘い毒に溺れる小鳥

夕月

文字の大きさ
2 / 19
甘い毒に溺れる小鳥

2

「カイル、様」
 金の髪に紫の瞳を持つ美しい男。この国では知らない人はいない、強い力を持つ魔法使いだ。ニーナの主人は王妃のレティシアだが、王の側近でもあるカイルとは、よく顔を合わせる仲だ。
 そして、ニーナが淡い想いを抱く相手。
 恋人に、などと大それたことを考えたことはない。
 ただ、時折姿を見ることができて、そしてたまに言葉を交わすことができるだけで充分だった。

 そんな彼がどうしてここに。ニーナを助けに来てくれたのだろうか。
 戸惑うニーナにカイルは微笑みかけて、そばまでやってきた。

「手荒な真似をしてごめんね。でもニーナがいけないんだよ、俺の前であんなこと」
 頭を撫でる手は優しいが、彼の言葉の意味が分からない。困ったように眉根を寄せるニーナに、カイルはにこりと笑った。

「騎士の男に言い寄られていただろう」
 そう言われて思い出す。
 仕事終わりに、近衛騎士の男にしつこく言い寄られていたのだ。立場上強く出ることができず、失礼のないようなるべく穏便に、言葉を選びながら断っていたのだが、壁際に追い詰められてしまった。唇を奪われそうになったところまでは記憶にあるが、その後の記憶がない。
 ニーナの表情を見て、カイルはまた笑う。普段は無表情が常のこの人の、こんな晴れやかな笑顔を、初めて見たような気がする。

「思い出した?そう、あの騎士の男。ニーナは俺のものなのに、勝手に手を出そうとするから」
 うしろから火魔法で焼いてやったよ、と笑うカイルに、ニーナは恐怖心を抱く。騎士は無事だったのだろうか。
 ニーナの考えを読んだかのように、カイルの瞳がすうっと冷たくなる。ニーナは思わず息をのんだ。

「あんな男のこと、気にしなくていい。ニーナは俺のことだけ考えていて?」
 カイルの手が頬を撫で、唇に触れる。
「どうして……」
 何に対しての疑問なのか分からない。分からないことが多すぎる。ニーナは何故ここにいるのだろう。カイルは何が目的で、ニーナをここに連れてきて監禁するような真似をしているのだろう。足枷までつけて。

 カイルはにこりと笑うと、ニーナの目元に口づける。その時、ニーナは自分が泣いていることに気がついた。
「泣き顔も可愛いね。もっと泣かせたくなる。ずっとニーナのこと、好きだったんだ。だけどニーナは可愛いからすぐに他の男に目をつけられるだろう?だから、誰の目にも触れない場所に隠してしまえばいいと、思いついたんだ」
 名案だろう、と笑うカイルに、ニーナは首を振る。
「そんな、」
「大丈夫。もう皆、ニーナのことは覚えてないから」
 さらりと告げられた言葉の意味が分からず、ニーナは目を瞬かせる。
「皆の記憶から、ニーナの存在を消したよ。ニーナのことを知っているのは、俺だけでいい」
 事もなげに告げられる言葉。そんなこと不可能だと言いたいが、彼はニーナの知らない魔法を使える人だ。
 カイルは、優しい手つきでニーナの髪を撫でた。
「ニーナ、これから先は、ずっと一緒だよ」
「……っ」
 触れる手も、視線も言葉も。優しいはずなのに、ニーナは恐ろしくてたまらない。
感想 0

あなたにおすすめの小説

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした

こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】 伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。 しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。 そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。 運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた―― けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった―― ※「小説家になろう」にも投稿しています。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。