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甘い毒に溺れる小鳥
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「カイル、様」
金の髪に紫の瞳を持つ美しい男。この国では知らない人はいない、強い力を持つ魔法使いだ。ニーナの主人は王妃のレティシアだが、王の側近でもあるカイルとは、よく顔を合わせる仲だ。
そして、ニーナが淡い想いを抱く相手。
恋人に、などと大それたことを考えたことはない。
ただ、時折姿を見ることができて、そしてたまに言葉を交わすことができるだけで充分だった。
そんな彼がどうしてここに。ニーナを助けに来てくれたのだろうか。
戸惑うニーナにカイルは微笑みかけて、そばまでやってきた。
「手荒な真似をしてごめんね。でもニーナがいけないんだよ、俺の前であんなこと」
頭を撫でる手は優しいが、彼の言葉の意味が分からない。困ったように眉根を寄せるニーナに、カイルはにこりと笑った。
「騎士の男に言い寄られていただろう」
そう言われて思い出す。
仕事終わりに、近衛騎士の男にしつこく言い寄られていたのだ。立場上強く出ることができず、失礼のないようなるべく穏便に、言葉を選びながら断っていたのだが、壁際に追い詰められてしまった。唇を奪われそうになったところまでは記憶にあるが、その後の記憶がない。
ニーナの表情を見て、カイルはまた笑う。普段は無表情が常のこの人の、こんな晴れやかな笑顔を、初めて見たような気がする。
「思い出した?そう、あの騎士の男。ニーナは俺のものなのに、勝手に手を出そうとするから」
うしろから火魔法で焼いてやったよ、と笑うカイルに、ニーナは恐怖心を抱く。騎士は無事だったのだろうか。
ニーナの考えを読んだかのように、カイルの瞳がすうっと冷たくなる。ニーナは思わず息をのんだ。
「あんな男のこと、気にしなくていい。ニーナは俺のことだけ考えていて?」
カイルの手が頬を撫で、唇に触れる。
「どうして……」
何に対しての疑問なのか分からない。分からないことが多すぎる。ニーナは何故ここにいるのだろう。カイルは何が目的で、ニーナをここに連れてきて監禁するような真似をしているのだろう。足枷までつけて。
カイルはにこりと笑うと、ニーナの目元に口づける。その時、ニーナは自分が泣いていることに気がついた。
「泣き顔も可愛いね。もっと泣かせたくなる。ずっとニーナのこと、好きだったんだ。だけどニーナは可愛いからすぐに他の男に目をつけられるだろう?だから、誰の目にも触れない場所に隠してしまえばいいと、思いついたんだ」
名案だろう、と笑うカイルに、ニーナは首を振る。
「そんな、」
「大丈夫。もう皆、ニーナのことは覚えてないから」
さらりと告げられた言葉の意味が分からず、ニーナは目を瞬かせる。
「皆の記憶から、ニーナの存在を消したよ。ニーナのことを知っているのは、俺だけでいい」
事もなげに告げられる言葉。そんなこと不可能だと言いたいが、彼はニーナの知らない魔法を使える人だ。
カイルは、優しい手つきでニーナの髪を撫でた。
「ニーナ、これから先は、ずっと一緒だよ」
「……っ」
触れる手も、視線も言葉も。優しいはずなのに、ニーナは恐ろしくてたまらない。
金の髪に紫の瞳を持つ美しい男。この国では知らない人はいない、強い力を持つ魔法使いだ。ニーナの主人は王妃のレティシアだが、王の側近でもあるカイルとは、よく顔を合わせる仲だ。
そして、ニーナが淡い想いを抱く相手。
恋人に、などと大それたことを考えたことはない。
ただ、時折姿を見ることができて、そしてたまに言葉を交わすことができるだけで充分だった。
そんな彼がどうしてここに。ニーナを助けに来てくれたのだろうか。
戸惑うニーナにカイルは微笑みかけて、そばまでやってきた。
「手荒な真似をしてごめんね。でもニーナがいけないんだよ、俺の前であんなこと」
頭を撫でる手は優しいが、彼の言葉の意味が分からない。困ったように眉根を寄せるニーナに、カイルはにこりと笑った。
「騎士の男に言い寄られていただろう」
そう言われて思い出す。
仕事終わりに、近衛騎士の男にしつこく言い寄られていたのだ。立場上強く出ることができず、失礼のないようなるべく穏便に、言葉を選びながら断っていたのだが、壁際に追い詰められてしまった。唇を奪われそうになったところまでは記憶にあるが、その後の記憶がない。
ニーナの表情を見て、カイルはまた笑う。普段は無表情が常のこの人の、こんな晴れやかな笑顔を、初めて見たような気がする。
「思い出した?そう、あの騎士の男。ニーナは俺のものなのに、勝手に手を出そうとするから」
うしろから火魔法で焼いてやったよ、と笑うカイルに、ニーナは恐怖心を抱く。騎士は無事だったのだろうか。
ニーナの考えを読んだかのように、カイルの瞳がすうっと冷たくなる。ニーナは思わず息をのんだ。
「あんな男のこと、気にしなくていい。ニーナは俺のことだけ考えていて?」
カイルの手が頬を撫で、唇に触れる。
「どうして……」
何に対しての疑問なのか分からない。分からないことが多すぎる。ニーナは何故ここにいるのだろう。カイルは何が目的で、ニーナをここに連れてきて監禁するような真似をしているのだろう。足枷までつけて。
カイルはにこりと笑うと、ニーナの目元に口づける。その時、ニーナは自分が泣いていることに気がついた。
「泣き顔も可愛いね。もっと泣かせたくなる。ずっとニーナのこと、好きだったんだ。だけどニーナは可愛いからすぐに他の男に目をつけられるだろう?だから、誰の目にも触れない場所に隠してしまえばいいと、思いついたんだ」
名案だろう、と笑うカイルに、ニーナは首を振る。
「そんな、」
「大丈夫。もう皆、ニーナのことは覚えてないから」
さらりと告げられた言葉の意味が分からず、ニーナは目を瞬かせる。
「皆の記憶から、ニーナの存在を消したよ。ニーナのことを知っているのは、俺だけでいい」
事もなげに告げられる言葉。そんなこと不可能だと言いたいが、彼はニーナの知らない魔法を使える人だ。
カイルは、優しい手つきでニーナの髪を撫でた。
「ニーナ、これから先は、ずっと一緒だよ」
「……っ」
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