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「あ、念のため言っておくけど、あたしに敵意を持った時点でその印は呪いに変わるから」
さらりと告げた言葉に、男は不快そうに眉を寄せた。
「んな物騒なものつけるなよ」
「まぁ、お兄さんにはその心配なさそうだし?一応ね、契約時には伝えておかなきゃならない決まりなの」
下腹部の印を撫でた男は、小さくため息をつくとアンバーの手を掴んだ。そのままぐいっと強く引き寄せられて、男の腕の中に抱き込まれる。
「え、ちょっ……」
驚いて声をあげようとした瞬間、首筋にちくりとした痛みを感じて思わず動きを止める。
「……俺にも印をつけさせろ」
「わー、独占欲」
首筋に刻まれた赤い痕を撫でて、アンバーは笑う。
「それがあれば、他の男を相手にはし辛いだろう」
勝ち誇ったような表情に、アンバーは笑って男に抱きついた。
「かわいー、嫉妬かな。今のところ、お兄さんしか相手にする気ないから安心して?」
「ふん、どうだかな。信用できん」
拗ねたような口調にくすくすと笑いながら、アンバーは立ち上がると服を身につけ始める。
「そろそろ行こっか。見張りが目を覚ます前に脱出しよ」
「……そうだな」
うなずいた男と手を繋いで、アンバーは部屋の外に出た。先程精気を奪った男はまだ意識を失ったままだけど、もうじき目を覚ますだろう。
2人は目を合わせて笑うと、白み始めた空の下、ゆっくりと歩き出した。
「じゃあまた、明日」
裏路地を出る前に、足を止めてアンバーは囁く。男は名残惜しそうにアンバーの手を離すと、首筋の痕に触れた。
「忘れるなよ」
「ちゃんと行くってば。とりあえずゆっくり休んで、しっかりご飯も食べてね。美味しくない精気だったら許さないから」
「ふん、明日こそは、その生意気な口がきけなくしてやる」
勝ち気な宣戦布告に、アンバーは笑ってうなずいた。
「あと、名前教えろ」
「んー、それはまた、おいおいね」
はぐらかして笑うと、アンバーは手を振って男から離れた。明日の約束があるからか、男も深追いするつもりもないようで黙って引き下がる。
サキュバスの契約において、お互いの名前を刻むことは、生涯を共にすることを意味する。
男のことは気に入っているけれど、彼もアンバーへの執着を感じるけれど、それが今後も続くかどうかは分からない。
長い時を生きるアンバーとは違って、人間は儚く、気持ちの変化も多いから。
だけど、彼とは長い付き合いになりそうな予感を感じつつ、アンバーは心なしか弾んだ足取りで自宅へと向かった。
近い将来、彼とは正式な契約を結ぶかもしれない、と思いながら。
さらりと告げた言葉に、男は不快そうに眉を寄せた。
「んな物騒なものつけるなよ」
「まぁ、お兄さんにはその心配なさそうだし?一応ね、契約時には伝えておかなきゃならない決まりなの」
下腹部の印を撫でた男は、小さくため息をつくとアンバーの手を掴んだ。そのままぐいっと強く引き寄せられて、男の腕の中に抱き込まれる。
「え、ちょっ……」
驚いて声をあげようとした瞬間、首筋にちくりとした痛みを感じて思わず動きを止める。
「……俺にも印をつけさせろ」
「わー、独占欲」
首筋に刻まれた赤い痕を撫でて、アンバーは笑う。
「それがあれば、他の男を相手にはし辛いだろう」
勝ち誇ったような表情に、アンバーは笑って男に抱きついた。
「かわいー、嫉妬かな。今のところ、お兄さんしか相手にする気ないから安心して?」
「ふん、どうだかな。信用できん」
拗ねたような口調にくすくすと笑いながら、アンバーは立ち上がると服を身につけ始める。
「そろそろ行こっか。見張りが目を覚ます前に脱出しよ」
「……そうだな」
うなずいた男と手を繋いで、アンバーは部屋の外に出た。先程精気を奪った男はまだ意識を失ったままだけど、もうじき目を覚ますだろう。
2人は目を合わせて笑うと、白み始めた空の下、ゆっくりと歩き出した。
「じゃあまた、明日」
裏路地を出る前に、足を止めてアンバーは囁く。男は名残惜しそうにアンバーの手を離すと、首筋の痕に触れた。
「忘れるなよ」
「ちゃんと行くってば。とりあえずゆっくり休んで、しっかりご飯も食べてね。美味しくない精気だったら許さないから」
「ふん、明日こそは、その生意気な口がきけなくしてやる」
勝ち気な宣戦布告に、アンバーは笑ってうなずいた。
「あと、名前教えろ」
「んー、それはまた、おいおいね」
はぐらかして笑うと、アンバーは手を振って男から離れた。明日の約束があるからか、男も深追いするつもりもないようで黙って引き下がる。
サキュバスの契約において、お互いの名前を刻むことは、生涯を共にすることを意味する。
男のことは気に入っているけれど、彼もアンバーへの執着を感じるけれど、それが今後も続くかどうかは分からない。
長い時を生きるアンバーとは違って、人間は儚く、気持ちの変化も多いから。
だけど、彼とは長い付き合いになりそうな予感を感じつつ、アンバーは心なしか弾んだ足取りで自宅へと向かった。
近い将来、彼とは正式な契約を結ぶかもしれない、と思いながら。
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うおおおお!!
めっちゃツボです。好きです。
つ、続きはないのですかっ?
ぱさーさん、ありがとうございます!
ツボに入ったとのこと、とても嬉しいです!
続きは特に考えていなかったのですが、恐らくヒーローが次こそは勝つ!泣かせてやる!と毎回挑むものの、あっさり返り討ちにされる日々が続くと思われます…(笑)
ヒロインも案外ヒーローのことを気に入っているので、なんだかんだで仲良くやっていきそうな気がします。
読んでいただき、ありがとうございました♡
女性上位のお話大好き(*'▽'*)♪
((*´艸`))
凄く楽しかったです✨
綺麗に、まとまっていて。
読みやすくて良い!
(´。✪ω✪。`)
そしてエロいとは!!
ご褒美のような気分にさせられました〜✨
りんさん、ありがとうございます♡
案外女性上位の話を書くのも楽しいなぁと思いましたw
めっちゃ褒めてもらって嬉しいです!
ありがとうございます(*´꒳`*)