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3 酒場の歌姫
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ふたりの関係が変わったのは、とある事件があってからだ。
街の酒場で働いていたツィリアは、給仕の仕事をしながら時折ステージで歌を歌っていた。鳥獣人の血のおかげかツィリアの歌は上手い、癒されると評判で、ツィリアがステージに立つ日はいつもより客が入るし、貴族もお忍びで観に来ているのだとオーナーも喜んでいた。
だけど、ある時期から客のひとりに付き纏われるようになり、ツィリアは随分と消耗していた。
毎日のようにやってきては、店の隅でずっとツィリアをにやにやと見つめる男。何度断ってもデートに誘われて、給仕の際には身体に触れられる。オーナーや他の従業員が、それとなく男からツィリアを遠ざけようとしてくれてはいたものの、どうやら貴族である彼に誰もが強く出ることはできなかった。
そうこうしているうちに、なかなか靡かないツィリアに痺れを切らしたのか、ある晩仕事終わりに帰宅しようとしたところを路地裏に連れ込まれそうになったのだ。
何とか隙を見て逃げ出したものの、パニックのあまりツィリアは鳥の姿になってしまった。夜目のきかない身では暗い夜空で方向感覚を失い、うろうろと彷徨ったあげく力尽きて地面に落ちたところを、偶然通りかかったハロルドが家に連れ帰ってくれたらしい。
半獣人であるツィリアは鳥の姿を長く保つことができないため、意識を取り戻した時にはツィリアの身体は人間の姿に戻っていた。
目覚めたツィリアは、獣人の血を引くことがバレてしまったと蒼白になったけれど、ハロルドは穏やかに笑ってそれを受け入れてくれた。以前に獣人と接したことがあったらしく、助けた小鳥が突然成人女性に変わっていた事については驚いていたものの、秘密は守ると約束してくれた。
あらためて人間の姿で向き合っても、ハロルドは優しくて紳士的なとても素敵な人で、ツィリアはこの時二度目の恋に落ちた。
街の酒場で働いていたツィリアは、給仕の仕事をしながら時折ステージで歌を歌っていた。鳥獣人の血のおかげかツィリアの歌は上手い、癒されると評判で、ツィリアがステージに立つ日はいつもより客が入るし、貴族もお忍びで観に来ているのだとオーナーも喜んでいた。
だけど、ある時期から客のひとりに付き纏われるようになり、ツィリアは随分と消耗していた。
毎日のようにやってきては、店の隅でずっとツィリアをにやにやと見つめる男。何度断ってもデートに誘われて、給仕の際には身体に触れられる。オーナーや他の従業員が、それとなく男からツィリアを遠ざけようとしてくれてはいたものの、どうやら貴族である彼に誰もが強く出ることはできなかった。
そうこうしているうちに、なかなか靡かないツィリアに痺れを切らしたのか、ある晩仕事終わりに帰宅しようとしたところを路地裏に連れ込まれそうになったのだ。
何とか隙を見て逃げ出したものの、パニックのあまりツィリアは鳥の姿になってしまった。夜目のきかない身では暗い夜空で方向感覚を失い、うろうろと彷徨ったあげく力尽きて地面に落ちたところを、偶然通りかかったハロルドが家に連れ帰ってくれたらしい。
半獣人であるツィリアは鳥の姿を長く保つことができないため、意識を取り戻した時にはツィリアの身体は人間の姿に戻っていた。
目覚めたツィリアは、獣人の血を引くことがバレてしまったと蒼白になったけれど、ハロルドは穏やかに笑ってそれを受け入れてくれた。以前に獣人と接したことがあったらしく、助けた小鳥が突然成人女性に変わっていた事については驚いていたものの、秘密は守ると約束してくれた。
あらためて人間の姿で向き合っても、ハロルドは優しくて紳士的なとても素敵な人で、ツィリアはこの時二度目の恋に落ちた。
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