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第二王子ヴェインは荒れていた。愛しいルコットがエリスに虐げられていると知った彼はある計画を立てていた。
貴族の令嬢は暴漢に少し暴力を振るわれただけでも傷物になる。たとえ純潔を失っていなくともだ。
だから、エリスを襲わせて、少し怪我を負わせるつもりだった。だが、失敗した。連れの騎士が全て処理してしまったのだという。
滅多に学園から出ないエリスがやっと外出したというのに、折角の機会を無駄にしてしまった。
「そもそも、何故エリス一人に何人もの騎士が同伴していたのだ!」
ヴェインは椅子を蹴飛ばす。ここは寮の最上階、ヴェイン以外の入居者はいない。下も全部屋空室なので安心して大声と大きな音を出せる。
「もう伝手が無い……糞っ」
今回は第二王子が唯一持つ裏社会との繋がりを利用して、エリスを襲わせた。しかし、実行した者が全員死んだことで、もう依頼は受けないと告げられた。
上手くいけばエリスと婚約破棄できて、ルコットを婚約者にできたというのに、これでは手詰まりだった。
頭を掻きむしっていると、扉がノックされた。
「誰だ!」
「俺だよ~、兄上」
入って来たのは弟のリオス。
「何だ! どうした!」
「兄上さあ、今回の件指示したって?」
「何故それを!」
「この階来たら聞こえたよ」
「しまった……!」
許可なくこの階には上がれないがリオスは別だった。この計画は漏洩しないように側近にもリオスにも知られたくなかった。
「兄上さあ、こういうのは抱え込まずに俺に相談してよ。兄弟だろ」
「しかし……! 漏洩したら……」
「漏洩っていうなら、依頼した所からの方がやばいよ。今回十人も死んだでしょ? それに対して補償はした?」
「何だそれは、そんなのしていない!」
リオスはわざとらしく大変だと青褪める。
「それは不味い、ああいう連中は金が全てだ。損失を補填する為に、兄上が依頼したって情報を何処かに売る可能性がある」
「なっ、だが……もう連絡する手段が……」
これ以上接触してこないようとにヴェインの連絡手段は向こうから断たれていた。
「じゃあ兄上、知りうる限りの情報と証拠を纏めて、俺に渡して。俺がどうにかする。いざとなれば兄上じゃなくて俺が依頼したことにもできる」
「いいのか!? しかし、お前のせいになど……」
「いいんだ、兄上が王になって民に尽くしてくれるなら、俺は罪人になっても構わない」
「リオス……!」
感極まったヴェインが涙ぐむ。
「ああ、後、ルコット嬢と結婚したいのなら、こんなことしなくてもどうにかなると思うよ」
「何!」
「普通に婚約破棄したいって父上に言ってみると良いよ。あっさりエリスチャンとの婚約破棄を許可してくれると思う」
王は王太子指名争いはを静観している。どちらに決めても文句が出るので、さっさとどちらかが失脚してほしいとさえ望んでいる。侯爵令嬢と婚約破棄して男爵令嬢と婚約するなどと言いだせば喜々として許可するだろう。
「そうなのか!? 確かに、流石の父上も人を虐げるような人間が王妃になるのは相応しく無いと思うか……しかし、クライス侯爵が……」
「第二王子派閥は大きくなったから、もうクライス侯爵家がいなくても大丈夫」
嘘だが、派閥について詳しく把握してないヴェインは鵜呑みにする。
「婚約破棄はギリギリまでクライス侯爵に黙って置けばいいし、全部エリスチャンの態度のせいにしたらエリスチャンを嫌ってる侯爵はそっちに怒りを向けるよ」
「そうか、お前がそういうのであればそうなのだろう。ありがとう、リオス!」
「いいってことよ~、あー婚約破棄のタイミングは兄上が卒業する直前が良いと思うよ」
「わかった!」
リオスは微笑みながら、心の中で「面白くなるぞ~」とわくわくしていた。
□
「よし、これでいつでも好きなタイミングで兄上を失脚させられるな。第一王子派閥に恩を売れるし、何か上手くいきすぎて逆に怖えわ」
リオスはヴェインが依頼した組織を特定し取引をした。というより、一方的に言うことを聞いてもらった。現在はラースィ家を使って、その組織を監視下に置いている。
ラースィ家は元々あまり公言できない仕事を請け負うこともある貴族だった。先代からその役目を他に譲り、細々領地を運営するのみのとなっていたが、未だに裏との繋がりはあった。第二王子派閥がラースィ家を潰して、自分たちに都合の悪い諸々の証拠隠滅を図ろうとした時に、待ったを掛けたのがリオスであった。
「やっと殿下のお役に立つことができた……」
ディランはほんの少しでも恩が返せたと心の荷が軽くなったようすだった。
「いや、いつも俺の身の回りの世話してくれて助かってるぞ~」
そう言いつつも、こういう時の為にラースィ家を助けたリオスである。
「今すぐに、第二王子殿下を始末しないのですか?」
「始末ってお前、言い方~。まあ、もう少し泳がせておこうと思って」
婚約者を襲撃させたという事実があれば、これ以上は必要ない筈だった。ディランがあまり納得のいかない顔を浮かべる。こういうことは他に先を越されないよう、早く行動した方が良い。
「何つーか、もっと面白いことしてくれそうじゃん」
とにかく楽しいことが好きなリオスは兄とルコットが愉快に踊るのを望んでいる。
「そういう所は悪い癖ですよ。殿下が良いというまでは何としても情報漏洩を防止しますが……」
「よろしく~」
貴族の令嬢は暴漢に少し暴力を振るわれただけでも傷物になる。たとえ純潔を失っていなくともだ。
だから、エリスを襲わせて、少し怪我を負わせるつもりだった。だが、失敗した。連れの騎士が全て処理してしまったのだという。
滅多に学園から出ないエリスがやっと外出したというのに、折角の機会を無駄にしてしまった。
「そもそも、何故エリス一人に何人もの騎士が同伴していたのだ!」
ヴェインは椅子を蹴飛ばす。ここは寮の最上階、ヴェイン以外の入居者はいない。下も全部屋空室なので安心して大声と大きな音を出せる。
「もう伝手が無い……糞っ」
今回は第二王子が唯一持つ裏社会との繋がりを利用して、エリスを襲わせた。しかし、実行した者が全員死んだことで、もう依頼は受けないと告げられた。
上手くいけばエリスと婚約破棄できて、ルコットを婚約者にできたというのに、これでは手詰まりだった。
頭を掻きむしっていると、扉がノックされた。
「誰だ!」
「俺だよ~、兄上」
入って来たのは弟のリオス。
「何だ! どうした!」
「兄上さあ、今回の件指示したって?」
「何故それを!」
「この階来たら聞こえたよ」
「しまった……!」
許可なくこの階には上がれないがリオスは別だった。この計画は漏洩しないように側近にもリオスにも知られたくなかった。
「兄上さあ、こういうのは抱え込まずに俺に相談してよ。兄弟だろ」
「しかし……! 漏洩したら……」
「漏洩っていうなら、依頼した所からの方がやばいよ。今回十人も死んだでしょ? それに対して補償はした?」
「何だそれは、そんなのしていない!」
リオスはわざとらしく大変だと青褪める。
「それは不味い、ああいう連中は金が全てだ。損失を補填する為に、兄上が依頼したって情報を何処かに売る可能性がある」
「なっ、だが……もう連絡する手段が……」
これ以上接触してこないようとにヴェインの連絡手段は向こうから断たれていた。
「じゃあ兄上、知りうる限りの情報と証拠を纏めて、俺に渡して。俺がどうにかする。いざとなれば兄上じゃなくて俺が依頼したことにもできる」
「いいのか!? しかし、お前のせいになど……」
「いいんだ、兄上が王になって民に尽くしてくれるなら、俺は罪人になっても構わない」
「リオス……!」
感極まったヴェインが涙ぐむ。
「ああ、後、ルコット嬢と結婚したいのなら、こんなことしなくてもどうにかなると思うよ」
「何!」
「普通に婚約破棄したいって父上に言ってみると良いよ。あっさりエリスチャンとの婚約破棄を許可してくれると思う」
王は王太子指名争いはを静観している。どちらに決めても文句が出るので、さっさとどちらかが失脚してほしいとさえ望んでいる。侯爵令嬢と婚約破棄して男爵令嬢と婚約するなどと言いだせば喜々として許可するだろう。
「そうなのか!? 確かに、流石の父上も人を虐げるような人間が王妃になるのは相応しく無いと思うか……しかし、クライス侯爵が……」
「第二王子派閥は大きくなったから、もうクライス侯爵家がいなくても大丈夫」
嘘だが、派閥について詳しく把握してないヴェインは鵜呑みにする。
「婚約破棄はギリギリまでクライス侯爵に黙って置けばいいし、全部エリスチャンの態度のせいにしたらエリスチャンを嫌ってる侯爵はそっちに怒りを向けるよ」
「そうか、お前がそういうのであればそうなのだろう。ありがとう、リオス!」
「いいってことよ~、あー婚約破棄のタイミングは兄上が卒業する直前が良いと思うよ」
「わかった!」
リオスは微笑みながら、心の中で「面白くなるぞ~」とわくわくしていた。
□
「よし、これでいつでも好きなタイミングで兄上を失脚させられるな。第一王子派閥に恩を売れるし、何か上手くいきすぎて逆に怖えわ」
リオスはヴェインが依頼した組織を特定し取引をした。というより、一方的に言うことを聞いてもらった。現在はラースィ家を使って、その組織を監視下に置いている。
ラースィ家は元々あまり公言できない仕事を請け負うこともある貴族だった。先代からその役目を他に譲り、細々領地を運営するのみのとなっていたが、未だに裏との繋がりはあった。第二王子派閥がラースィ家を潰して、自分たちに都合の悪い諸々の証拠隠滅を図ろうとした時に、待ったを掛けたのがリオスであった。
「やっと殿下のお役に立つことができた……」
ディランはほんの少しでも恩が返せたと心の荷が軽くなったようすだった。
「いや、いつも俺の身の回りの世話してくれて助かってるぞ~」
そう言いつつも、こういう時の為にラースィ家を助けたリオスである。
「今すぐに、第二王子殿下を始末しないのですか?」
「始末ってお前、言い方~。まあ、もう少し泳がせておこうと思って」
婚約者を襲撃させたという事実があれば、これ以上は必要ない筈だった。ディランがあまり納得のいかない顔を浮かべる。こういうことは他に先を越されないよう、早く行動した方が良い。
「何つーか、もっと面白いことしてくれそうじゃん」
とにかく楽しいことが好きなリオスは兄とルコットが愉快に踊るのを望んでいる。
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「よろしく~」
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