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1章 そこに立つ者は輝いて見える。
エース
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部活終わり、今日はこの時期には珍しく綺麗な夕焼けが見える日だったが、もうそれも見えない。
夏の大会の予選が1ヶ月後に控え、練習は日に日に緊張感が増している。特に今日みたいな、この季節にはありがたい晴れの日には、限界までグラウンドを使って練習をする。
どんどん周りの生徒たちは下校していき、グラウンドの反対側のソフト部もいなくなり、校舎から聞こえる吹奏楽部の演奏の音も聞こえなくなると、あとはほとんど野球部しか残っていない。
練習最後のお決まりであるベースランニングを終え、グラウンド挨拶して練習が終わると、みんな一度部室に戻って行く。と言っても1年生にはまだ部室はなく、部室近くにまとめて荷物を置いている。どこの部活もだいたい2学年分しか荷物を置けないのだが、この時期になるとどんどん3年生は引退して行くので、部室の外に置いているのは野球部と、あとは勝ち残っている部活くらいだ。
全体練習終了後も2.3年は素振りやシャドーなど自主練を始める。もう19時半を過ぎている。これに加え朝練、昼練もやっている正直尊敬している。もちろん1年生にはそんな体力が残ってないので、重い身体をなんとか動かして着替えを始める。
「梅宮いるー?」
キャプテンの鈴木先輩だ。自分が入るまでショートを守っていたが、自分がショートに入るようになってからはずっとサードを守っている。
「はい!います!」
「明日の朝練でセカンドの瀬戸とかピッチャー陣とかと牽制の練習したいんだけど来れる?あ、あと一応中田も来て欲しいんだけど。」
「大丈夫です!」
「行けます!」
正直、高校野球の3年生はとても怖い印象があった。高校入学前に上級生の暴力とかニュースでいろいろ聞くようになって、ますます身構えていた。
「キャプテン優しいよな、話し方とか雰囲気とか、なんかもっと怖い気がしてたよ。あと、キャプテンだけじゃなくて他の先輩達も比較的優しいよな!」
北野の言う通りだ。
入学当初は2年生も3年生も威圧感の塊だった。1.2歳しか変わらないのにこんなに変わるかと思った。でも練習で関わっていくと、いい先輩達だと感じた。分からないことがあると丁寧に教えてくれるし、プレーについても
「そこはこう入った方がいいんじゃない?」
と、アドバイスをくれたり、
「それどんな風にやってるの?」
と、逆にアドバイスを求めてきたりもする。
「そうなのー?俺まだ先輩達怖いよ」
1年の中島だ、あと他のメンバーも結構そうみたいだ。
「まぁ、俺らそんなに関わってないしなー」
「梅宮と中田と、あと原と北野以外はそんなに試合とかもでないしな。俺らは2年生は多少あるけど、3年生はほとんど関わりないや。」
最近こういうちょっとした話とかで、1年生の中での壁を感じる。
俺はショート、中田はたまにリリーフ、原は打撃を買われて代打でたまに使われている。あと北野はキャッチャーなのでブルペンとかで投手、捕手の人達と関わっている。
中学でもこんな感じで壁が生まれた。どうしてもこういう団体みたいなの所属していると人間関係がめんどくさい。1年生から試合に出てると、3年生はもちろん、2年生からの見られ方が気になる。
3年生はともかく2年生とは長く付き合っていくことになるからあんまり変な感じにはなりたくない。自分は人と関係は作って行くのが苦手だからどうしてもチームに何人か変な感じになるやつが出てくる。
(何とかならんなぁ~)
帰り道にこういうことで悩むのが毎日の日課になっている。
「おはようございます!」
「おー、ありがとな!来てくれて。」
翌朝、約束通り牽制の練習をした、ピッチャー、キャッチャー、セカンド、ショートをやることのある人間が揃うから結構な人数になる。
走者側と守備側を交代して時間一杯までやった。やっぱり1番上手いのはエースの石井さんだ。タイミングもそうだが、1番タッチしやすい所に捕球しやすい球を投げ込んでくる。思いやりの塊みたいな人だ。
試合中もピッチャーなのに人一倍声を出して、ワンプレーワンプレーに声をかけてくれる。だから先輩達もみんなあの人がいくら打たれても、何の不満も漏らさない。
「ナイスプレー!サンキュッ!」
「惜しい惜しい!次も打たせるぞ!」
こんなピッチャーは今まで見たことがなかったから新鮮だった。ピッチャーはだいたいエゴイストばっかり、よく言えばしっかり自分を持ってる奴らばっかだからだ。でも先輩みたいな投手のほうが、後ろにいて守りたいと思うし、自分がピッチャーならこういう風になりたいと思う。
投手の能力的には高校野球にしてはそんなに高くない。この前の招待試合でも7回で6失点、その試合の最終結果は10対9でギリギリ。
いつもこういう試合になる。
でも、この人以外にこのチームの先発で投げる人はいないとさえ思う。
いつもの自分なら
(俺が投げたい)
という思いが、守りながらよぎる。けれど、この人の投げてる時はそんな思いは全く出てこない。
「梅宮~、タイミングとかいい感じに覚えてきたなー。サインの出し方もあんな感じでよろしくたのむ。ただあんまり牽制好きじゃないから、勝手に偽投したりするかも知んないけど勘弁してな?(笑)あとはそんなに牽制のサイン多く出さないでね!」
「はい!分かりました!」
この人のために今は精一杯ショートを頑張ろう……。
夏の大会の予選が1ヶ月後に控え、練習は日に日に緊張感が増している。特に今日みたいな、この季節にはありがたい晴れの日には、限界までグラウンドを使って練習をする。
どんどん周りの生徒たちは下校していき、グラウンドの反対側のソフト部もいなくなり、校舎から聞こえる吹奏楽部の演奏の音も聞こえなくなると、あとはほとんど野球部しか残っていない。
練習最後のお決まりであるベースランニングを終え、グラウンド挨拶して練習が終わると、みんな一度部室に戻って行く。と言っても1年生にはまだ部室はなく、部室近くにまとめて荷物を置いている。どこの部活もだいたい2学年分しか荷物を置けないのだが、この時期になるとどんどん3年生は引退して行くので、部室の外に置いているのは野球部と、あとは勝ち残っている部活くらいだ。
全体練習終了後も2.3年は素振りやシャドーなど自主練を始める。もう19時半を過ぎている。これに加え朝練、昼練もやっている正直尊敬している。もちろん1年生にはそんな体力が残ってないので、重い身体をなんとか動かして着替えを始める。
「梅宮いるー?」
キャプテンの鈴木先輩だ。自分が入るまでショートを守っていたが、自分がショートに入るようになってからはずっとサードを守っている。
「はい!います!」
「明日の朝練でセカンドの瀬戸とかピッチャー陣とかと牽制の練習したいんだけど来れる?あ、あと一応中田も来て欲しいんだけど。」
「大丈夫です!」
「行けます!」
正直、高校野球の3年生はとても怖い印象があった。高校入学前に上級生の暴力とかニュースでいろいろ聞くようになって、ますます身構えていた。
「キャプテン優しいよな、話し方とか雰囲気とか、なんかもっと怖い気がしてたよ。あと、キャプテンだけじゃなくて他の先輩達も比較的優しいよな!」
北野の言う通りだ。
入学当初は2年生も3年生も威圧感の塊だった。1.2歳しか変わらないのにこんなに変わるかと思った。でも練習で関わっていくと、いい先輩達だと感じた。分からないことがあると丁寧に教えてくれるし、プレーについても
「そこはこう入った方がいいんじゃない?」
と、アドバイスをくれたり、
「それどんな風にやってるの?」
と、逆にアドバイスを求めてきたりもする。
「そうなのー?俺まだ先輩達怖いよ」
1年の中島だ、あと他のメンバーも結構そうみたいだ。
「まぁ、俺らそんなに関わってないしなー」
「梅宮と中田と、あと原と北野以外はそんなに試合とかもでないしな。俺らは2年生は多少あるけど、3年生はほとんど関わりないや。」
最近こういうちょっとした話とかで、1年生の中での壁を感じる。
俺はショート、中田はたまにリリーフ、原は打撃を買われて代打でたまに使われている。あと北野はキャッチャーなのでブルペンとかで投手、捕手の人達と関わっている。
中学でもこんな感じで壁が生まれた。どうしてもこういう団体みたいなの所属していると人間関係がめんどくさい。1年生から試合に出てると、3年生はもちろん、2年生からの見られ方が気になる。
3年生はともかく2年生とは長く付き合っていくことになるからあんまり変な感じにはなりたくない。自分は人と関係は作って行くのが苦手だからどうしてもチームに何人か変な感じになるやつが出てくる。
(何とかならんなぁ~)
帰り道にこういうことで悩むのが毎日の日課になっている。
「おはようございます!」
「おー、ありがとな!来てくれて。」
翌朝、約束通り牽制の練習をした、ピッチャー、キャッチャー、セカンド、ショートをやることのある人間が揃うから結構な人数になる。
走者側と守備側を交代して時間一杯までやった。やっぱり1番上手いのはエースの石井さんだ。タイミングもそうだが、1番タッチしやすい所に捕球しやすい球を投げ込んでくる。思いやりの塊みたいな人だ。
試合中もピッチャーなのに人一倍声を出して、ワンプレーワンプレーに声をかけてくれる。だから先輩達もみんなあの人がいくら打たれても、何の不満も漏らさない。
「ナイスプレー!サンキュッ!」
「惜しい惜しい!次も打たせるぞ!」
こんなピッチャーは今まで見たことがなかったから新鮮だった。ピッチャーはだいたいエゴイストばっかり、よく言えばしっかり自分を持ってる奴らばっかだからだ。でも先輩みたいな投手のほうが、後ろにいて守りたいと思うし、自分がピッチャーならこういう風になりたいと思う。
投手の能力的には高校野球にしてはそんなに高くない。この前の招待試合でも7回で6失点、その試合の最終結果は10対9でギリギリ。
いつもこういう試合になる。
でも、この人以外にこのチームの先発で投げる人はいないとさえ思う。
いつもの自分なら
(俺が投げたい)
という思いが、守りながらよぎる。けれど、この人の投げてる時はそんな思いは全く出てこない。
「梅宮~、タイミングとかいい感じに覚えてきたなー。サインの出し方もあんな感じでよろしくたのむ。ただあんまり牽制好きじゃないから、勝手に偽投したりするかも知んないけど勘弁してな?(笑)あとはそんなに牽制のサイン多く出さないでね!」
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