ピッチャーになりたい僕とピッチャーをやりたくない君のお話

樹原 光

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2章 初めての、夏。

背負うものと、背負うことのできないもの

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「16番!梅宮大輝!」
「はい!」

 1年生ながら、背番号をもらうことができた。中学時代とはまた違った嬉しさがある。単に人数が多いのもあると思うが、なんというか、二桁の番号でも責任みたいなものを感じられる。
 その嬉しさと同時に、先輩を差し置いてもらってよかったのかという気持ちがどんどん大きくなる。3年生にも何人か背番号をもらえなかった人がいる。

「20番!中田純也!」
 
 1年生で背番号を貰えたのは、俺とこの中田だけだった。というか1年生から2人も良かったのか、3年生は15人いる。その中で背番号を貰えたのは10人だ。
 2年生も多くの人がもらっていなかった。

 「この20人で夏の予選は戦う。背番号を貰えたものはその重み、責任を十分に理解し、チームの代表ということを忘れずにプレイすること。残念ながら貰えなかったものは、ここから大会の終わるまで、全力でサポートしてくれ。よろしく頼む。後3年生はこの後残ってくれ。
以上!」

 その後、1.2年生は部室の方へ戻って行く。そこでなんとなくいろいろ考えを巡らせていると、グラウンドの方から嗚咽を含む声ともいない、叫び声とも言えないものが聞こえてきた。
 そう、3年生がないているのだ。しかも、泣いてるのは5人だけではない。きっとみんなでベンチに入りたかったのだろう。2年半毎日あんな練習を一緒にこなしてきたのだから思いの重さは計り知れない。
 
 グラウンドの方を眺めながら呆然としていると2年生の先輩が寄ってきた。
「申し訳ないとか思うなよ!哀れな表情であの人たちを見るんじゃねーぞ!それこそ、あの人たちに対する侮辱になる。」
 2年生の上野さんだ。この人は去年から外野でレギュラーで、今年も2年生ながら、8番をもらっている。

「ちなみに、俺は去年申し訳なさなんて微塵も感じないで、『よっしゃ!やってやったぜ!』くらいに思ってた。でもな、その時の3年生から泣きながら『頼むぞ』って言われてな、なんか半端なことはできないなって思った。でも今年は違って、長く一緒にやってた先輩たちだから、正直みんなにもらって欲しかったし、どうして1年に2人も背番号渡すんだとか思ってもいる。だからな、当然他の2年や、もちろん3年生だってそう思ってる人はいる。だからな、まぁとりあえずその人を黙らせるくらい頑張ればいいんだよ!ま、俺はそんなにごちゃごちゃ考えたことないけどな(笑)」
 
 真剣なようで最後はおどけて見せる。この人なりに俺に気を使ってくれたんだと思う。

「まぁ、そんな考え過ぎないでいつも通りやればいいんだよ。その結果があの番号だ。うちの監督は基本的に3年生に1桁を渡す。だからお前は二桁だけど、多分俺らで二遊間、それに加えて上野がセンター。この3人でこのチームのセンターラインを守んなきゃならない。だからまぁ責任はあるけど、気負いすぎず頑張ろうな。」

 セカンドのレギュラーの瀬戸さんだ。上野さんとこの人が2年生で1桁貰っている。いわゆる守備のスペシャリストって感じの人で、とても尊敬している。


「はい。なんかありがとうございます。」

「いいってことよ(笑)」
そういうと部室に戻って行った。


「背番号もらいたかったけど、いざ貰うとなんかなー責任押し付けられた?みたいな感じがするだよな。」

言いたいことはわかる気がするけどなんでこいつらの前で言うんだよ。他の1年は貰ってないのに。こいつのたまに無神経なこういうところがイラっとする。

「貰ったからにはやるだけだろ」
イラっとしてつい言ってしまった。

「そうそう、貰った君達2人は、俺らの代表みたいなもんだからな。せいぜいがんばってくれたまえよ。」

北野の言葉は、なんとなく不穏な空気になっていたその場を収めてくれた。

「じゃあ帰るべ、梅宮行くぞ!今日も奇跡的にまた利奈ちゃんと帰り一緒になったりしないかな~」

「了解。」




 夏の大会1回戦の当日を迎えた。

 球場につき、前の試合の状況を見ながら個々で準備を始める。
 前の試合がいい加減なところまで進むとミーティングが始まった。
「俺は毎年、この夏の大会の1試合目の前は同じようなことをいうのだが、まずその話をしたい。
 皆知っての通り、我が校では1回戦は1年生が学年行事として応援に来てくれる。」
 自分たちのベンチ側のスタンドの方にはたくさんのうちの高校の制服が集まっている。
「それと同時に部活は引退して受験生となった3年生、さらに自分たちの部活もある2年生の有志も応援に来てくれる。これは他の部活ではあり得ないことで、とても感謝しなければいけない。」
 
 1年生がみんなきているから、部活の人数が少なすぎるというのもあり、部活ごと応援にきてるところもある。

「この応援に応えるためにはやはり、他の人たちよりも努力しなければならない。だから野球部が1番遅くまで練習したり、他の部活よりも休みが少ないというのは当然当たり前のことだと思う。やればいいというものではないけどな。」
 
 こういうことを言われると、なんとなく納得してしまう。中学時代も他の部活より多くの時間を部活にかけていたが、高校の野球部になると、それも桁が違うことをここ数ヶ月だけで思い知らされた。きっとの今後もそれは変わらないのだろう。

「だから、この大会は自分たちのためにやるはもちろん、応援に来てくれているクラスメイト、友達、それに加えて父母会の皆さん。この人達が応援してくているということを忘れずに力に変えて、今日は精一杯戦おう!以上!」

『はい!!!』

 うちの監督はどちらかといえば静かで、もちろん精神的なこともいうが、ほとんど技術的なことを中心に指導してくれる。そして1番の尊敬する点はほとんど無謀なこと、矛盾のあることを言うことのない。正論で指導してくれることだ。もちろん、何度も同じことを繰り返しミスをしていると感情的なことも言うが、何ごとにも筋が通っている。
 今後もこの監督ならやっていけると思う。


今日のオーダーも発表された。それぞれがいつもより気合の入った、緊張のまじった返事をした。

1番センター上野 2年 8
2番セカンド瀬戸 2年 4
3番サード鈴木 3年 6
4番ファースト加藤 3年 3
5番ライト谷 3年 5
6番キャッチャー増田 3年 2
7番ピッチャー石井 3年 1
8番ショート梅宮 1年 16
9番レフト佐藤 2年 11

1回戦のオーダーはこんな感じになった。
 
俺は8番ショート、オーダーも最近の練習試合と同じだ。

「頼むぞ!」試合直前、石井さんから声をかけられた。バッテイングは3年生の先輩達にかなわない、だから守備で貢献して見せる。そう言う気持ちを強く持ち、試合に臨んだ。
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